IT出身都議が東京都の画期的コロナ対策サイトに見た可能性「災害時や他の社会課題にも」

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトのトップページ
― 一方で、コロナ関連の情報が正しく伝わっていない例や、都がコロナウイルスのPCR検査を拒否しているのではといった、公開情報に対する不信の声が上がっているのも事実。

「まずは公開されている情報を正しく把握することが大切だと思います。例えば現在、PCR検査の対象となるには基準が設けられています。サイトでは、どういう条件に当てはまるとPCR検査の対象となるか、また、どういう状態の人がどこに相談するべきかなど、フローチャート形式で明記されていて、かなり分かりやすいと思いました(「新型コロナウイルス感染症が心配なときに」のページ)。また先日、東京都の陽性者数が100人を超えたという報道がありましたが、グラフを見ればすでに退院した人は30人いることも分かります(3月18日時点)。

 検査実施数は85件、累計では3103件となっていますね(3月17日時点の集計)。この数字が多いか少ないかは難しい部分ですが、都が実際に把握している数字であることは間違いないので、こういったデータをもとに、いろいろなことを議論したり意見したりできると思います。

 台湾ではタン氏が作ったマスクの在庫管理システムを通じて在庫数を見た市民が、必要な機関に優先して送ってほしいという声をあげるといった行動も生まれています。実際のデータを判断材料として公表することで都民の皆さんからご意見を頂き、それに応えて行政も対応していくという形を作ることが重要だと思います」

― より幅広い人がPCR検査を受けられるようになれば安心する人も増えるかもしれないが…。

「重要なことは、専門的な判断のもと医療崩壊につながらないようにすることだと思います。ただ、PCR検査の増加について都でも補正予算を成立させて、検査可能数100~120件だったところを、民間の検査機能も含めて3倍近く増やしていますので、今後の状況の変化によっては、検査実施数がさらに伸びる可能性はあると思います」

― 情報を知り“正しく恐れる”ことが大切。

「われわれが都知事に提出した要望書の中でも、安全安心の確保につながるよう個人情報に配慮した適切な情報の発信をと要望しており、これは引き続き求めているところです。私も必要な情報はどんどん出していくべきと思っていますが、それによって都民の生活に混乱が生じてしまっては意味がないので、そこに留意しながら、今後も情報の発信を促していきたいと思っています。

 経済面での影響も深刻な状況です。都でも、中小企業への融資やフリーランスの方の相談窓口など、緊急のサポートを増やしており、その情報もサイトから確認できるので(「企業の皆様・はたらく皆様へ」)、これももっと広めていくべきだと思っています。

 東京都は基本計画として2030年へ向けた『未来の東京』戦略ビジョンを掲げているのですが、その中で、デジタルを活用した行政サービスや民間企業などとの連携、時代や状況の変化への弾力的な対応、全国自治体との連携という目標が記されており、今回のサイトはまさにそれを先駆けて行った事例といえるでしょう。今後も、さまざまな形で活用されることを期待します」
藤井あきら:東京都議会議員/府中市。京都大学を卒業。日本マイクロソフト株式会社に勤務。ITベンチャー(Fintech)の役員
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