スマホアプリで心のバリアフリー。「出かける勇気と楽しさ」感じて

視覚障害を持つ女性のリアルな意見も…
白杖の女性「電車に乗ると大体痴漢に遭う」

 配慮者を、店舗や施設などの事業者に限定したのには、わけがあった。ある視覚障害の女性にヒアリングをしたところ、雑談の中で彼女は、「白杖を持って電車に乗っていると、大体痴漢に遭うんですよね」と言葉を漏らした。それまで、誰でも気軽に使えるアプリを目指してきた友枝さんにとって、その一言は衝撃だったという。「美しいものだけ出しても成り立たないんですね。一部には、そういう悪質な人がいる。メンバーもみんな顔面蒼白でした」。彼女の言葉がきっかけで、アプリの安全性を再考し、利用対象を「合理的配慮義務を負った事業者」へ。店舗や施設で働く人が、お客様をサポートするという方向に舵を切った。当事者のリアルな声が、アプリの質を高めた。

 また、開発にあたって、体験会や実証実験から見えてきたのは「三大・心のバリア」だ。要配慮者は、手助してくれそうな人を探すのが厄介、頼んでいいか躊躇してしまう、逐一の説明や依頼が辛い、といった心情を抱えていた一方、配慮者は、そもそも要配慮者に気付かない、手助けが必要か分からない、対応の仕方が分からない、といった思いを抱き、それぞれに遠慮や躊躇、戸惑いがあったという。こうした心のバリアを溶かすために、「アプリを通して、ほっこり触れ合い、成功体験を積んでほしい」と、友枝さんは互いに触れ合うことの大切さを語る。