出版界の6次産業! 誌面の内容を体験化する シニア女性誌「ハルメク」、飛躍の理由

ハルトモ座談会の様子。読者の本当の声を引き出す
ハルメクが行っているのは、言うなれば6次産業だ。6次産業とは、1次産業である農林漁業に、2次産業としての製造業、そして3次産業としての小売業や観光業などを組み合わせた取り組みのこと。1+2+3(1×2×3とも)で6。シンクタンクやハルトモで得た鮮度抜群の情報を、誌面として魅力的に加工し、製品または体験としても提供する。自社だけで一気通貫するからこそのクオリティと読者への寄り添い方だ。

「「いきいき」時代の初代編集長が、ものすごくアクティブな方だったそうです(笑)。読者の方から編集長宛に、「自分のところで美味しい野菜が取れたので、お裾分けしたい」というお便りが届くと、そこまで足を運んでいたようです。それをきっかけに通販という発想が生まれ、出版社にもかかわらず、多岐にわたる事業を生み出す形になったと聞きます」

ハブ機能としてのメディアの在り方



一時期、連動性が失われ出版部は下降線を辿るようになったが、山岡さんが着任するや急成長。中興の祖とはこのことだ。

「60代、70代の方は紙媒体や雑誌に対して親しみがある世代。「an・an」や「non-no」が創刊された1970年代前半に青春を過ごされた世代ですね。女性誌の市場とともに人生を送ってきた方々ですから、雑誌を購入することに抵抗がないことも大きい」

 そう謙遜するが、ハルメクの試みは非常に示唆に富んでいる。たしかに、ハルメクの出自が、他出版社に比べると特異であることは間違いないだろう。今から出版社がイベント事業部や通販事業部を立ち上げるのは難しいに違いない。創刊当初に0から1を作っていたハルメクだからこそ可能な展開だ。

 一方で、メディアの役割を考えたとき、ハルメクから学ぶことは極めて多いように思う。“読者が求めているもの、面白いと思えるものとどれだけ向き合えるか”、“紙の役割をどう位置づけるか”、“発信する側と受け取る側の距離感”、“どうマネタイズしていくか”など――。