コロナブランク【アフロスポーツ プロの瞬撮】

スポーツカメラマンをやっていると、かなりの確率で質問されることがある。
「撮影はどの競技が大変？」
そして私の答えも用意できている。バドミントン、卓球、体操、バレーボール、、こんな感じだ。

これらに共通するのは、アスリートの動きが不規則かつ速いのはもちろん、カメラポジションがコートに近いということ。
至近距離で動かれてはカメラのふり幅は大きくなる。それに加えて不規則に動く。フェイントもある。バレーボールでは私もよくフェイントに引っかかっている。
我々カメラマンをだませないようでは相手選手に効かないよな、と毎回悔しいような、当たり前のような、なんとも言えない感情になる。

さて、今回の写真は卓球。
2019年6月に札幌で開催されたライオンジャパンオープンでのひとコマ。

一枚で卓球アスリートを表現するお決まりの絵。 この写真が良い悪いではなく、撮るのが難しいカットだということだけ認識してほしい。
卓球にしてもパドミントンにしても正面から玉やシャトルをいれて撮るならそんなに難しいことはないが、インパクトの瞬間を真横から狙うとなると、ラケット競技は至難の技に思える。
体格ががっちりとした中国選手でフォアハンドのスマッシュは、とんでもないスイングスピードである。

2019ライオンジャパンオープンで三冠を勝ち取ったXu Xin選手(中国)の放つフォアスマッシュは他を寄せ付けないスイングスピードだった。

球がラケットにあたる瞬間を狙ってシャッターボタンが押す。 連写したところで撮れるものではない。 目と指の調子にも左右される。 集中力も必要だが、狙い通りか偶然かは時の運のようになる。瞬間を捉える最大の要素は「慣れ」かもしれない。

この写真は卓球だけを撮り続けて4日目のものだ。
私の調子どうこうではなく、これだけ連続で撮り続ければ慣れを超えてインパクトの瞬間は体にしみ込み始めていた。


スポーツイベントを撮影しなくなって数か月。向こう数か月も撮影機会は少ないだろう。
スポーツ撮影に大切な要素として考えている、慣れ。

情報が入ってくる目の慣れ。
分析する頭の慣れ。
カメラを操作する指の慣れ。

競泳選手は1日練習をしないと、取り戻すのに必要なのは3日といわれている。
スポーツカメラマンのそれはどうなるのだろう。

■カメラマンプロフィル
撮影：松尾憲二郎
1985年　東京生まれ
都立工芸高校デザイン科卒業
バックカントリースキーの撮影にあけくれ雪山を登ってきた。
2014年より「アフロスポーツ」に所属。現在は様々なスポーツを撮影している。
日本スポーツプレス協会 (AJPS) 会員
国際スポーツプレス協会 (AIPS) 会員


【取材歴】
2015　冬季ユニバーシアード（スペイン/グラナダ）、EAFF 東アジアカップ（中国/武漢）、柔道・世界選手権
（カザフスタン/アスタナ）
2016　スキー遠征（モンゴル/アルタイ山脈）、リオデジャネイロパラリンピック

2017　冬季ユニバーシアード（カザフスタン/アルマティ）、冬季アジア大会（札幌）、夏季ユニバーシアード
（台湾/台北）、フィギュアGPシリーズ（ロシア/モスクワ）
2018　冬季オリンピック(韓国/平昌)、夏季アジア大会(インドネシア/ジャカルタ)、体操・世界選手権(カター
ル/ドーハ)
2019　陸上・世界選手権(カタール/ドーハ)

【個展】
2011　冷やしボブ（ボブ東京）
2014　YMK_展（EATME GALLERY 南青山）、YMK_展（UP LAND 札幌）
2016　SKIING MONGOLIA（代官山ヒルサイドテラス）、season（NIKON 新宿フォト・プロムナード）

【グループ展】
2018　AJPS報道展 『鼓動』