2018年アジア競技大会『過酷な闘い』【アフロスポーツ プロの瞬撮】
スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。
撮影/文章:西村尚己(2018年9月2日 第18回アジア競技大会 閉会式/ジャカルタ)
スポーツフォトグラファーに転職して丸4年。
一番過酷だった撮影は何か?と問われたら、私は迷わず“夏のアジア大会”と答えるだろう。
アジア大会は、オリンピックをはじめとする総合競技大会の一つで4年に1度開催されるアジア版のオリンピックだ。
私のアジア大会デビューは入社3年目、2018年夏にインドネシアで行われたジャカルタ・パレンバン大会であった。
大会が近づいてくると、オリンピックなどの撮影経験豊富な先輩フォトグラファーが笑みを浮かべながら私のところに来てこう言った。
「アジア大会は一番過酷だから。覚悟した方がいいよ」
ちなみに2018年アジア大会は16日間で41競技465種目が行われ、参加した日本代表選手は762人。
これを2016年のリオデジャネイロオリンピックと比較すると、大会日数はほぼ同じだが、競技・種目数は約1.5倍、日本代表選手の数は2倍以上にもなる。
会社から派遣されたフォトグラファーは私を含めて4人。全員が協力して日本代表選手をカバーしなければならない。
ある一日のスケジュールはこんな感じだ。
6:30 起床
7:00 宿舎発
8:00 会場入り
9:00-10:50 武術太極拳
11:00-13:00 ウェイトリフティング男子
13:30-15:50 体操女子
16:00-16:50 ブリッジ
17:00-19:00 ウェイトリフティング女子
20:00-23:30 メインプレスセンター(食事と写真送信。他のフォトグラファーと合流し、翌日の撮影スケジュールを決定)
24:00 宿舎着
24:00-27:00 シャワー・写真整理・翌日の撮影準備
27:00 就寝
こんな日が真夏に約2週間毎日続く。
撮影自体は全く苦にならないが、辛いのは食事と睡眠だ。
まず食事。
会場周辺には美味しそうな飲食店が多数あるのだが、撮影と移動に追われて食べる時間がない。
やむを得ずメインプレスセンターでサービスされるブッフェスタイルの軽食が中心となる。
しかし一日に提供される回数が決まっており、肉料理など人気メニューの争奪戦は激しく、タイミングを逸すると何も残っていない。
最後の切り札となるのはプレスセンターに常備されているカップラーメンだ。
大会期間中、私はこのカップラーメンに何度救われたことだろうか。
そして睡眠。
大会前半は何とか気合で乗り越えられるが、後半になると睡眠不足が深刻化する。
ニュース性のある速報写真は競技会場やプレスセンターから優先的に送るが、すべての写真は送り切れない。
このため宿舎に帰った後、その日撮影した数千枚の写真から追加でセレクトして送らなければならない。
深夜に行うこの作業がとても辛い。
パソコンに向かった途端睡魔に襲われ、幾度となく寝落ちして額をパソコンにぶつけたり、座った姿勢のまま真横に転倒したり。
かくして私のアジア大会デビューは先輩の言葉どおり、本当に“過酷な闘い”となった。
そして幸い体調を崩すことなく迎えた大会最終日の閉会式。
アスリートたちの健闘、そして本大会の成功を祝福するかのようにメインスタジアム全体が色鮮やかな花火と照明に包まれた。
解放感と充実感に満たされながらシャッターを切ったあの時の光景は今でも忘れられない。
■カメラマンプロフィル
撮影:西村尚己
1969年、兵庫県生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。
人間味あふれるアスリートの姿に魅せられ、学生時代にスポーツ写真の世界と出会う。
大学卒業後は、国土交通省に勤務しながらアマチュアカメラマンとして活動するも、どうしてもプロの世界で挑
戦したいという想いが募り、2016年にアフロスポーツに転職。
現在は国内外のスポーツを精力的に撮影し、人間の情熱や鼓動、匂いなど五感で感じとれる作品づくりに励む。
2007年 APAアワード写真作品部門 奨励賞
2013年、2015年 写真新世紀 佳作 ほか
一番過酷だった撮影は何か?と問われたら、私は迷わず“夏のアジア大会”と答えるだろう。
アジア大会は、オリンピックをはじめとする総合競技大会の一つで4年に1度開催されるアジア版のオリンピックだ。
私のアジア大会デビューは入社3年目、2018年夏にインドネシアで行われたジャカルタ・パレンバン大会であった。
大会が近づいてくると、オリンピックなどの撮影経験豊富な先輩フォトグラファーが笑みを浮かべながら私のところに来てこう言った。
「アジア大会は一番過酷だから。覚悟した方がいいよ」
ちなみに2018年アジア大会は16日間で41競技465種目が行われ、参加した日本代表選手は762人。
これを2016年のリオデジャネイロオリンピックと比較すると、大会日数はほぼ同じだが、競技・種目数は約1.5倍、日本代表選手の数は2倍以上にもなる。
会社から派遣されたフォトグラファーは私を含めて4人。全員が協力して日本代表選手をカバーしなければならない。
ある一日のスケジュールはこんな感じだ。
6:30 起床
7:00 宿舎発
8:00 会場入り
9:00-10:50 武術太極拳
11:00-13:00 ウェイトリフティング男子
13:30-15:50 体操女子
16:00-16:50 ブリッジ
17:00-19:00 ウェイトリフティング女子
20:00-23:30 メインプレスセンター(食事と写真送信。他のフォトグラファーと合流し、翌日の撮影スケジュールを決定)
24:00 宿舎着
24:00-27:00 シャワー・写真整理・翌日の撮影準備
27:00 就寝
こんな日が真夏に約2週間毎日続く。
撮影自体は全く苦にならないが、辛いのは食事と睡眠だ。
まず食事。
会場周辺には美味しそうな飲食店が多数あるのだが、撮影と移動に追われて食べる時間がない。
やむを得ずメインプレスセンターでサービスされるブッフェスタイルの軽食が中心となる。
しかし一日に提供される回数が決まっており、肉料理など人気メニューの争奪戦は激しく、タイミングを逸すると何も残っていない。
最後の切り札となるのはプレスセンターに常備されているカップラーメンだ。
大会期間中、私はこのカップラーメンに何度救われたことだろうか。
そして睡眠。
大会前半は何とか気合で乗り越えられるが、後半になると睡眠不足が深刻化する。
ニュース性のある速報写真は競技会場やプレスセンターから優先的に送るが、すべての写真は送り切れない。
このため宿舎に帰った後、その日撮影した数千枚の写真から追加でセレクトして送らなければならない。
深夜に行うこの作業がとても辛い。
パソコンに向かった途端睡魔に襲われ、幾度となく寝落ちして額をパソコンにぶつけたり、座った姿勢のまま真横に転倒したり。
かくして私のアジア大会デビューは先輩の言葉どおり、本当に“過酷な闘い”となった。
そして幸い体調を崩すことなく迎えた大会最終日の閉会式。
アスリートたちの健闘、そして本大会の成功を祝福するかのようにメインスタジアム全体が色鮮やかな花火と照明に包まれた。
解放感と充実感に満たされながらシャッターを切ったあの時の光景は今でも忘れられない。
■カメラマンプロフィル
撮影:西村尚己
1969年、兵庫県生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。
人間味あふれるアスリートの姿に魅せられ、学生時代にスポーツ写真の世界と出会う。
大学卒業後は、国土交通省に勤務しながらアマチュアカメラマンとして活動するも、どうしてもプロの世界で挑
戦したいという想いが募り、2016年にアフロスポーツに転職。
現在は国内外のスポーツを精力的に撮影し、人間の情熱や鼓動、匂いなど五感で感じとれる作品づくりに励む。
2007年 APAアワード写真作品部門 奨励賞
2013年、2015年 写真新世紀 佳作 ほか
アフロスポーツ
1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。
■アフロスポーツHP
https://sport.aflo.com
https://www.aflo.com
■Facebook
https://www.facebook.com/aflosport
■Instagram
https://www.instagram.com/aflosport
■Twitter
https://twitter.com/aflosport
1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。
■アフロスポーツHP
https://sport.aflo.com
https://www.aflo.com
https://www.facebook.com/aflosport
https://www.instagram.com/aflosport
https://twitter.com/aflosport