100人に2900万円ばらまいた河井前法相夫妻を買収罪で起訴

 昨年7月の参院選広島選挙区をめぐり、地元議員ら100人に現金約2900万円を配ったとして、東京地検特捜部は7月8日、公選法違反罪で前法相で衆院議員、河井克行容疑者(57)=広島3区=と、妻で参院議員、案里容疑者(46)=広島選挙区=を起訴した。特捜部は逮捕容疑に加えて、新たに300万円超の買収を認定。関係者によると、克行被告は現金配布の大半を認めた上で「買収の意図はない」と話し、案里被告も否認を続けている。
昨年9月、第4次安倍第2次改造内閣で法務大臣に就任した河井克行被告(写真:AP/アフロ)

 検察当局は、克行被告を選挙運動全体を取り仕切った「総括主宰者」と認定し、参院選の「候補者」本人である案里被告とともに、東京地裁で「百日裁判」として迅速に審理される見通し。案里被告の弁護人は同日、東京地裁に保釈請求した。
 夫妻は罰金以上の刑が確定すると公民権が停止され失職する。案里被告が無罪になった場合でも、克行被告の罰金以上の刑が確定すれば連座制が適用され案里被告の当選も無効になる。

 お金を受け取った被買収者100人について検察当局は全員の処分を保留しているのだが、大半は不起訴(起訴猶予)処分になる見通し。元広島県議会議長の奥原信也県議(77)が200万円を受け取るなど過去の類似事件に比べ、受領額が高額という問題はあるが、検察当局は克行被告が無理やり現金を渡そうとしたことなどを考慮したもよう。

 河井夫妻は6月17日に自民党を離党し、18日に揃って逮捕。今回の買収事件では、当時夫妻が所属していた自民党本部から1億5000万円が入金されたことが問題視されている。このうち1億2000万円は税金を原資とする政党交付金という。また一部には「安倍さんから」と安倍晋三首相の名前を出したうえで現金を渡されたという証言もある。

 安倍首相は8日夜、河井克行、案里両被告が起訴されたことについて「かつて法相に任命した者として責任を痛感する。国民におわび申し上げる」と首相官邸で記者団に述べた。