「外界から守られた部屋にいる子どもみたい」-齊藤工、安藤裕子にズバリ言い当てられ驚愕
齊藤工監督の最新短編映画『ATEOTD』が9月25日より公開される。この作品の制作のきっかけは、安藤裕子が実に4年半ぶりにリリースした最新アルバム「Barometz」の楽曲「一日の終わりに」のミュージックビデオの監督を、齊藤工に依頼したことからだった。齊藤はいかに映像を通じて安藤の楽曲に応えたのだろうか。映画の公開を前に2人の対談が行われた。
齊藤工(左)と安藤裕子(撮影・朝岡英輔)
孤独から生まれた新作短編映画『ATEOTD』9月25日公開
『ATEOTD』は今から100年後の2120年を舞台に、新型細菌ウィルスにより滅びゆく世界の片隅で生きる意味を見失いながらも日々孤独に暮らす女(門脇麦)と男(宮沢氷魚)を描いた作品。
齊藤「歌詞に込められた本質的に大事なこと、つまり“人に会いたい”という気持ちや、“誰かを想う”ことがコロナ禍でよりプラトニックさを帯びていて、僕が自粛期間に感じていたことが線になったような、必然的な物語が生まれました」
安藤「自分のミニマルな心の内を描いていたものが、齊藤さんを通して、より“人類が欲するもの”になっていきましたね」
齊藤「行方知れずの未来を見つめて自粛期間を過ごすというのは、家族とともにいる大変さも大いにあると思うし、僕のように独りでいると孤独が深さを増します。一日の終わりをどう過ごすかは人それぞれですが、僕は明日への救いや希望があるからこそ、その日を終えることができると思ったんです。そして、それが自分の描くべきものだと」
安藤「自粛期間は世界中の人に訪れたけど、そのときみんなが必要としたのが、人の肌や声、そして実際に会うということ。一方でそれはどんどん失われつつあるという危惧もある。そういう体感のなかで、テーマ自体が大きく育っていきましたね」
齊藤「孤独が起点になっています。パブリックな場所での自分も嘘ではないんですけど、その後ひとりきりになった瞬間の自分の表情ってまた違いますよね。そうやって両輪でバランスをとっていたものが自粛期間中は片方だけになってしまって、すごく危うさを感じました。だから自分の孤独を恐れるがゆえにリモートで作品を制作したという自覚があって(※)。本作も、このスピードで公開まで至ったことが今年ならではのエンターテインメントのあり方だと思っています。満ち足りた豊かな時間を過ごしていたら、率先して前進しようとはしなかったでしょうね」
(※)齊藤は、緊急事態宣言下にリモート映画制作プロジェクト「TOKYO TELEWORK FILM」(TTF)を立ち上げ、6月までに6作品を発表している。