五感に訴えかけてくるドキュメント映画「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュース公演「ウィルス・ブルース」のオーディションの締め切りが本日(10月7日)までとなりました。

 もうあとちょっとで締め切りというタイミングでこの文章を読む方もおられるかもしれませんが、いろいろな方と出会いたいと思っているので、あえて書いてみました。
 
 もし締め切り後にこの文章を読まれた方は、ぜひ次の機会でお会いできればと思います。

 では始めましょう。今週は鑑賞記です。毎度のことながら、人生相談も引き続き募集中です。
黒田勇樹
 岩手県一関市にある“ジャズ喫茶”と、そのマスターを追ったドキュメンタリー映画「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」を観てきました。

 音響設備にこだわり、皆で酒や煙草をくゆらせながら、音楽の世界を楽しむ。

 そして、何時しかそのこだわりが評判になり、世界中のジャズファンが、ここにレコードを聴きに来るようになったという伝説と言っていいお店の物語。

 面白かった! 作中で「ジャズ喫茶は音楽の図書館」という言葉が出てくるんですが、この映画自体が「オーディオを楽しむための文献」だと思える誠実な作り方をされている。

 オーディオって、一部のマニアの人にとっては凄く神聖なもので、それ以外の人からすると“オカルト”に近い感覚のものじゃないですか。

「え? 別に100均のイヤホンでも音は一緒でしょ?」みたいな。

 この映画観たら、そんなこと絶対に言えなくなる。

「幽霊はいる!」とか「地球は丸い!」レベルで「音楽は機材だ!」と訴えかけてくる。

 秀逸だったのが、オープニングとラスト。

 レコード(しかも音楽じゃなくて、機関車の走る音!)を聞きながら、煙草をくゆらせコーヒーを淹れるシーンから始まるんですが、

 音(聴覚)!煙(視覚)!煙草とコーヒーの匂い・味・温度(嗅覚・味覚・触覚)!と、誰もが経験したことのある感覚で、五感を開かせてから、“音”に没入していく世界を描いていく。

 映像って本当は、視覚と聴覚にしか訴えかけれないメディアだからこういう“記憶”に訴えてそれ以上の感覚に干渉するのは、とても巧みで、それをドキュメンタリーでやってくるとは!

 1杯ひっかけながら音楽について語り合うシーンでは、ロレツが回ってない人とかいて「コレ、現代ではちょっと音楽の印象悪くなんない?(笑)」と心配になりましたが、

 この映画ばっかりはホームシアターでも持っていない限り、上映期間中に、映画館の素敵な音響設備と大画面で観て欲しいな、と思う大傑作でした。
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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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