滝藤賢一、義昭は「きっとお坊さんのままがよかったのかな」大河ドラマ『麒麟がくる』
「義昭は室町幕府の“将軍”ですが、貧しい人たちのために生きていたお坊さん・覚慶(かくけい)から描かれているので、その思いを大切にしながら芝居してきました。義昭の最初の思いは、“戦をなくしたい”だったと思うんです。でもそこは戦国時代です。この時代を生きるには、義昭は優しすぎたのかな、きっとお坊さんのままがよかったのかなと思ってしまいます」
将軍となった義昭は、信長(染谷将太)と対立。
「父から受け継いだ「麒麟が来る世の中」を目指そうとしますが、れっきとした武士だった父、そして兄・義輝(向井理)とは違うので、自分ができることは何なのかとすごく悩んだと思うんです。結局、進むべき方向性が定まらず、いろいろな人たちを権力で押さえ込むようなことになってしまいました。そういった背景から、義昭は弱い人なんだとも考えられますね」。
第35回では、幕府の執務を取り仕切る摂津晴門(片岡鶴太郎)を除外するという場面も。
「摂津がいないと幕府は回らないというのも、義昭は分かっていたと思います。ですが、信長が好き放題に戦を仕掛けているあの局面で、何を言ってもかわされ、周りも摂津の言うことにしか動かない。そうやって摂津に心を壊されていき、追い込まれるようなかたちになり、結局は光秀(長谷川博己)の言うとおりに幕府の古い体制を一掃、つまりは摂津を除外するしかなくなったんですよね。そうなってしまうと、義昭を守ってくれる人は三淵藤英(谷原章介)のみ。それはかなりの恐怖だったと思います」
門脇麦演じる駒の目の前で、自分の首を絞めながら「己が口惜しい」と吐露するシーンも。滝藤は、駒は「同じ考えをもって、同じ世を目指した唯一の理解者だと思いますし、同士だった」と考える。
「駒だけが義昭のことを分かってくれていて、心は完全に通じ合っているけど、義昭がその道からだんだん外れたんでしょうね。戦をなくしたいというのが義昭の最初の思いでしたが、信長を倒すことに猪突猛進になり、信長を討たないと麒麟は来ないと思っていたと思います。戦国時代ですから、大名同士仲良くして、話し合いで収めてほしいと言っても、誰も言うことを聞かない。そういう中で、義昭の考えは理想でしかなかった。初めは訴え続けていたけど、いざ幕府に入ってみたら全くダメだった。義昭はいろんな人間に挟まれていじめられつづけますし、とても苦しかったんだろうなと思います」
13日放送の第36回「訣別」では、光秀はは、伊呂波太夫(尾野真千子)を通じて三条西実澄(石橋蓮司)を通じて、帝(坂東玉三郎)と会う。義昭ら幕府は信長を前面に押し出して、大和の松永(吉田鋼太郎)を鎮圧しようとしていた。美濃が手薄になったところで、義昭は朝倉たちに美濃を攻めさせるつもりだといい……。
『麒麟がくる』は、毎週日曜、総合で午後8時、BSプレミアムで午後6時、BS4Kで午前9時。再放送もある。