アジアのアクション映画にこの人あり!『るろうに剣心』シリーズの“アクション・マスター”が香港の大スターとタッグ!
ドニー・イェンが、特殊メイクで体重120キロに! ©2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.
一流のアクション俳優の鉄則は「フィジカルに逃げない」
日本映画界のみならず香港映画界からもその手腕を高く評価されている谷垣監督。アクション映画との出会いとは。
「最初はジャッキー・チェンです。小学5年生くらいのころに、テレビでジャッキーの『スネーキーモンキー 蛇拳』を見たのが始まりでした。あのころってテレビを見た次の日の学校でみんなでマネしたりするじゃないですか。僕だけ、その香港アクション熱が今も続いているんです(笑)」
倉田アクションクラブを経て1993年、単身香港へ。現地のスタントマン協会に入ってキャリアをスタートさせ2001年に香港映画『金魚のしずく』でアクション映画監督デビュー。以来、香港映画界とも深い絆を培ってきた。
「僕は香港映画に憧れて彼らのようになりたくて香港に行ったわけなので、そういう熱ってやはりあちらの人にも伝わるんですよね。あと、約束の時間に遅れないとか言ったことは守るとか、日本人からしたら当たり前のことなんですけど、そんなところも珍しかったんじゃないでしょうか(笑)。何より、僕は何でも一生懸命にやっていたのでみんながいろいろ教えてくれて、それが仕事の幅を広げ人とのつながりも増やすことができた。昔、一緒に仕事をした人たちがそれなりに偉くなって僕を使ってくれるんです(笑)」
“昔、一緒に仕事をした人”の中には、ドニーをはじめアジアの代表的アクション俳優や監督の名前がずらり。
「トニー・ジャーがまだスタントマンだったころ、『モータルコンバット2』で一緒にスタントをやったことがあるんです。ものすごいやつがいる、と思いました。すぐに主役の吹き替えもやるようになっていましたね。その後、またタイで別作品のロケをしたときに彼の姿がなかったので、どうしているのか現地のスタントマンに聞いたら、映画会社と契約して主演作を撮っている、と。それが『マッハ!!!!!!!!』だったんです。他にも、あのころのスタントマン仲間で監督やプロデューサーとして活躍している人はたくさんいますね」
今や香港映画界を代表するスターとなり、ハリウッドにも進出したドニーもその一人。
「ドニーがすごいなと思うのは、作品にかけるエネルギーやモチベーションの高さがまったく衰えず、新しいことにチャレンジし続けること。ドニーって経験値で映画を撮らないんです。毎回、初めて映画を作るときのような気持ちで作品に向き合う。トライ・アンド・エラーをいとわないんです。ときに、素人か?と思うようなことに夢中になって試行錯誤したりするし(笑)。僕が知るなかだと、そういう人はドニーとウォン・カーウァイの2人くらいですね(笑)」
トライ・アンド・エラーがどれだけできるか、その突き詰める姿勢を持ち続けたいと谷垣監督。
「どうしたら作品がより面白くなるのか、それが一番大事ですから。僕も今回、当初考えていたエンディングをガラッと変えてしまったんです。最初は、世界武術大会みたいなところでフクロンがいろんな武術家と戦う、混戦状態のようなクライマックスを考えていたんです。その武術家たちの役に香港でも人気のあるジャッキーちゃんを呼んだりしてね(笑)。でもやっぱりアクションをしっかり見せたかったし、せっかく東京が舞台なら東京らしい舞台を用意したかった。それで、東京タワーで最強の敵と一対一の勝負に変えたんです。実は近年、香港アクションでも一対一のバトルがラストになる形が少なくなっているんです。それもあって、クライマックスはラスボスにタイマン勝負で挑むという香港映画のセオリーにのっとりたかったんです。同時に、香港映画ファンでなくともエンターテインメントとしてのアクションがてんこ盛りになっていて、純粋に楽しめる作品になったと思います」
近年、日本でも本格アクション大作が次々と生まれ、アクションに意欲を見せる若い俳優も多い。そんな彼らに谷垣監督から伝えたいことは。
「芝居をちゃんとできる人は、アクションも上手くなるんですよ。たとえアクション俳優と呼ばれる人であってもそもそも“俳優”なんです。アクション映画といっても、アクションを撮ることだけが目的ではなく、映画を撮ることが目的なんです。演技に行き詰っているとフィジカルに逃げる傾向もありますが、そうではなく、俳優として演技にフィジカルな要素を取り込める人は、良いアクション俳優にもなれると思います。僕の経験的にも、そういう俳優さんはアクションをやらせても上手いんですよね。佐藤健なんてまさにそう。彼はもともと運動神経もいいんですが、彼が得意なアクションをやればいいのであれば、ブレイクダンスの動きばかりにすればいい。でもそれは“剣心”ではない。僕が考えたアクションを彼はまず、それは剣心の動きかどうかを見る。そこから自分に落とし込んでいく。剣心ならこう動く、というしっかりした芝居が彼の中にあるんですね。僕もまさにそういうアクションを手掛けたいと思っているので、すごく楽しい。以前に大友啓史監督から“トレーナーというよりカウンセラーだね”と言われました。その役者さんに必要なものを汲み取って、一緒に、そのキャラとして動けるようにトレーニングしていく。それが僕がやりたいアクション指導の形です。ドニーなんて、本作の演技にもアクションにも、『イップ・マン』の影なんてみじんもないですからね(笑)」
アクション愛の根幹にあるのは深い映画愛。笑いと興奮満載のお正月ムービーにぴったりの1本。お正月太りで蓄えた脂肪も燃やしてくれるかも!
(本紙・秋吉布由子)
日本映画界のみならず香港映画界からもその手腕を高く評価されている谷垣監督。アクション映画との出会いとは。
「最初はジャッキー・チェンです。小学5年生くらいのころに、テレビでジャッキーの『スネーキーモンキー 蛇拳』を見たのが始まりでした。あのころってテレビを見た次の日の学校でみんなでマネしたりするじゃないですか。僕だけ、その香港アクション熱が今も続いているんです(笑)」
倉田アクションクラブを経て1993年、単身香港へ。現地のスタントマン協会に入ってキャリアをスタートさせ2001年に香港映画『金魚のしずく』でアクション映画監督デビュー。以来、香港映画界とも深い絆を培ってきた。
「僕は香港映画に憧れて彼らのようになりたくて香港に行ったわけなので、そういう熱ってやはりあちらの人にも伝わるんですよね。あと、約束の時間に遅れないとか言ったことは守るとか、日本人からしたら当たり前のことなんですけど、そんなところも珍しかったんじゃないでしょうか(笑)。何より、僕は何でも一生懸命にやっていたのでみんながいろいろ教えてくれて、それが仕事の幅を広げ人とのつながりも増やすことができた。昔、一緒に仕事をした人たちがそれなりに偉くなって僕を使ってくれるんです(笑)」
“昔、一緒に仕事をした人”の中には、ドニーをはじめアジアの代表的アクション俳優や監督の名前がずらり。
「トニー・ジャーがまだスタントマンだったころ、『モータルコンバット2』で一緒にスタントをやったことがあるんです。ものすごいやつがいる、と思いました。すぐに主役の吹き替えもやるようになっていましたね。その後、またタイで別作品のロケをしたときに彼の姿がなかったので、どうしているのか現地のスタントマンに聞いたら、映画会社と契約して主演作を撮っている、と。それが『マッハ!!!!!!!!』だったんです。他にも、あのころのスタントマン仲間で監督やプロデューサーとして活躍している人はたくさんいますね」
今や香港映画界を代表するスターとなり、ハリウッドにも進出したドニーもその一人。
「ドニーがすごいなと思うのは、作品にかけるエネルギーやモチベーションの高さがまったく衰えず、新しいことにチャレンジし続けること。ドニーって経験値で映画を撮らないんです。毎回、初めて映画を作るときのような気持ちで作品に向き合う。トライ・アンド・エラーをいとわないんです。ときに、素人か?と思うようなことに夢中になって試行錯誤したりするし(笑)。僕が知るなかだと、そういう人はドニーとウォン・カーウァイの2人くらいですね(笑)」
トライ・アンド・エラーがどれだけできるか、その突き詰める姿勢を持ち続けたいと谷垣監督。
「どうしたら作品がより面白くなるのか、それが一番大事ですから。僕も今回、当初考えていたエンディングをガラッと変えてしまったんです。最初は、世界武術大会みたいなところでフクロンがいろんな武術家と戦う、混戦状態のようなクライマックスを考えていたんです。その武術家たちの役に香港でも人気のあるジャッキーちゃんを呼んだりしてね(笑)。でもやっぱりアクションをしっかり見せたかったし、せっかく東京が舞台なら東京らしい舞台を用意したかった。それで、東京タワーで最強の敵と一対一の勝負に変えたんです。実は近年、香港アクションでも一対一のバトルがラストになる形が少なくなっているんです。それもあって、クライマックスはラスボスにタイマン勝負で挑むという香港映画のセオリーにのっとりたかったんです。同時に、香港映画ファンでなくともエンターテインメントとしてのアクションがてんこ盛りになっていて、純粋に楽しめる作品になったと思います」
近年、日本でも本格アクション大作が次々と生まれ、アクションに意欲を見せる若い俳優も多い。そんな彼らに谷垣監督から伝えたいことは。
「芝居をちゃんとできる人は、アクションも上手くなるんですよ。たとえアクション俳優と呼ばれる人であってもそもそも“俳優”なんです。アクション映画といっても、アクションを撮ることだけが目的ではなく、映画を撮ることが目的なんです。演技に行き詰っているとフィジカルに逃げる傾向もありますが、そうではなく、俳優として演技にフィジカルな要素を取り込める人は、良いアクション俳優にもなれると思います。僕の経験的にも、そういう俳優さんはアクションをやらせても上手いんですよね。佐藤健なんてまさにそう。彼はもともと運動神経もいいんですが、彼が得意なアクションをやればいいのであれば、ブレイクダンスの動きばかりにすればいい。でもそれは“剣心”ではない。僕が考えたアクションを彼はまず、それは剣心の動きかどうかを見る。そこから自分に落とし込んでいく。剣心ならこう動く、というしっかりした芝居が彼の中にあるんですね。僕もまさにそういうアクションを手掛けたいと思っているので、すごく楽しい。以前に大友啓史監督から“トレーナーというよりカウンセラーだね”と言われました。その役者さんに必要なものを汲み取って、一緒に、そのキャラとして動けるようにトレーニングしていく。それが僕がやりたいアクション指導の形です。ドニーなんて、本作の演技にもアクションにも、『イップ・マン』の影なんてみじんもないですからね(笑)」
アクション愛の根幹にあるのは深い映画愛。笑いと興奮満載のお正月ムービーにぴったりの1本。お正月太りで蓄えた脂肪も燃やしてくれるかも!
(本紙・秋吉布由子)