パラトライアスロン・谷真海「引退も考えた私が、東京2020大会を目指すわけ」<TOKYO 2020 COUNTDOWN>

応援してもらえる存在になる


 アテネ大会で日本人女子初の義足選手としてパラリンピックに出場後、北京、ロンドンと3大会連続出場を果たした谷。長年の競技生活の中で、パラリンピックのその後へも思いを馳せる。

「パラリンピックは大会の成功も大事ですが、私は招致活動の時からその先につながるものに重きを置いています。パラリンピックに関しては、もしかしたら1年延期されたことで認知や普及の活動を継続できるなど、プラスな面もあったかもしれません。ただリアルにコミュニケーションを取れるイベントや大会がなくなったことでメディア発信が減ってしまっている点は少し残念に思いますね。IPC(国際パラリンピック委員会)の掲げる“インクルーシブ・ソサイエティ”は障害ある無しだけでなく、国籍、人種、ジェンダー、いろいろな違いを尊重し合える世の中を作っていくことです。言葉よりも競技を通して伝えられるものがパラリンピックにはあると思っています」

 そのために選手自身にも必要なことがあるのではと谷。

「選手個々の努力も必要かなと思います。このままずっと予算や企業のサポートが付くとは限らないので、会社や社会の中でも価値や存在感を高めていくことが必要かなと思います。それは競技の結果だけでなく、多くの人とコミュニケーションを取って、応援してもらえる存在になることや、世界を目指すアスリートだからこそ体験できることや見える景色を外に発信する存在になることです。その点、今はさまざまな選手がメディアに登場して活躍されているので、素晴らしいことだなと思います」

 長年応援され続ける存在となった谷は今、自身の力で、競技生活にしっかりと句読点を打ちたいのだという。
「やはり2020大会でのブルーカーペットを思い描いています。そこを走り切って、自分の道を完結させることですね。まずは出場権を得て、力を出し切りたいと思います。そのことで、パラリンピックが残してくれる価値をその後に浸透するよう、ずっと伝え続けていきたいです」

 万感の思いを込めた夢舞台は目前だ。(TOKYO HEADLINE・丸山裕理)
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