映画「花束みたいな恋をした」は“2010年代の恋愛解体新書”だ!!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。
 3月24日初日の舞台『白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます』の演出を担当させていただきます。
 キャストも発表になるなど情報も続々と解禁されまして、ワクワクする反面、時節柄、またまた緊張感のある毎日を過ごしております。
 初日の頃には世間も含めて、もう少し緩やかな気持ちでエンタメを楽しめるようになっていればいいのですが…。
 そろそろ稽古も始まりますが、稽古場から徹底したコロナ対策をして皆様をお迎えします。
 さて、今週も始めましょう。
黒田勇樹
 恋愛映画は「ノッティングヒルの恋人」と「ララランド」しか許さない、あ、「怪盗ルビィ」とか「めぐり逢い」とか「カサブランカ」とか「ローマの休日」とか、最近だと「愛がなんだ」とかは大好きだけど、そういうの以外は絶対に許せない、アダルトビデオすら「男の人が出てくるのがイヤ」と「レズモノ」ばかり観ているほどの「男女交際映画アンチ」の僕なのですが、「観ないアンチ」も許せないので「やっぱり嫌いだ」ということを確認しに、今期いちばんキラキラしている恋愛映画「花束みたいな恋をした」を観てきました。

 菅田将暉と有村架純が恋愛するって…その時点で夢のまた夢、現実ではありえない!そりゃ、さぞかし絵になるだろうし、沢山のドラマが生まれるでしょうねぇ!俺に共感できる要素なんかあるはずがない!とメチャメチャ前かがみ&ハスに構えてたのですが…。

「既に別れている」と提示されたうえで、その2人の過去5年間の「花束みたいな恋愛」が描かれて行くストーリー。主人公は菅田・有村が演じる「サブカルこじらせ系男女」が奇跡的に出会い、持ち物や趣味が一緒で、惹かれ合い付き合うという「そんなに上手くいかねぇよ」と言いたくなる導入なのに…超リアル!

 サブカル好きみたいな設定にすると、お互い奥手だったり恋愛経験がなかったり、いわゆるステレオタイプのオタク像で描かれがちなんですが、この2人はちゃんと酒も飲むし、セックスもする。

 そうそうこの時代の恋愛ってまさにこう!と2010代は20代後半から30代中盤で過ごしギリギリ恋愛現役世代だった筆者(今年39才)に刺さりまくる、生々しい時代と恋愛にまつわるリアルが、実に「省略はされているんだけど“写実的”」に描かれていました。

 出てくるカルチャーも作家、作品名など全て実在のもので「俺はわかるけど、世代違ったらチンプンカンプンよ!?」ってぐらいコア。

 一言でいうなら2010年代の恋愛のドリル、ハウトゥ、教科書、いや設定資料集、大百科…解体新書!
 大人たちには“現代”の、未来の若者たちには“過去”の恋愛をリアルに感じてもらえるであろう作品。

 さすが「カルテット」の脚本監督コンビの最新作と手放しに称賛したいのですが、一個だけ。
 特に脚本「東京ラブストーリー」や「セカチュー」などの恋愛ヒットメーカー坂元さんには恩があるのでこんなこと言いたくないですが…このお2人、53才と56才…

 絶対20代の愛人がいるだろ!そうじゃなかったら、どんな取材力してんだ!? 天才なのか!?
 別れのシーンなんか、今関係がある女の子、全員と別れたくなるぐらい素敵で泣けましたよ!
 タイトルにある「花束」も「こんなシーンで出すんだ?」と中盤で思わせてからの、ラスト!
 悔しい! 嫉妬! 俺も愛人、もしくはその才能が欲しい! 恋愛がしたい! 素敵な映画が作りたい!

 黒田の恋愛映画史を塗り替える、超超超大傑作でした。
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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
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