風評被害に負けないものづくり。【故郷の誇り胸に、福島が歩んだ10年】

オリジナルブランド「SIOME」のハンドタオル。里山の風景を連想させるアースカラーは、京都の工房で草木染めで染色している

 グローバル企業との取引も背中を押した。プロジェクトの理念に賛同した米アウトドアブランド「パタゴニア」や英ナチュラルコスメブランド「LUSH」などが福島のコットンを使って製品化。おしゃれなデザイン性や店舗限定の希少性などから、若い人を中心に人気を集めている。「これからのことを考えると、やっぱり若い人に響く事業でないといけないんです」。酒井さんの覚悟だった。


 2019年、株式会社起点を創業。福島で有機栽培された綿花の生産や買い取り、そして、それらを原料としたオリジナルブランドの製品企画から販売まで、オーガニックコットンのすべてを担う。「作る人も使う人も互いに幸せなものづくり」をモットーに、自社生産や各地の職人とのコラボレーションを行うのが特徴だ。そんな酒井さんは今、オーガニックコットンの国際認証を目指している。国内には綿花の認証制度がないことから、国産の綿花は公式にオーガニックコットンをうたうことができない。認証されれば日本初となる試みだ。海外の基準は厳しく、やり取りも容易ではないが、コットンを扱う企業として責任を全うしたいのだという。復興から自立、そして日本初へ。福島発のオーガニックコットンが、これからの10年を作っていくかもしれない。


(TOKYO HEDLINE・丸山裕理)



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