川上未映子、手紙は「言葉になっていない思いに気づくことができる」
芥川賞作家が語る手紙の重要性
作家の川上未映子が、大手町三井ホールにて行われた「日本郵便 2021年度 手紙 新コミュニケーション発表会」に女優の芦田愛菜、料理家の和田明日香とともに登壇した。
羽のような模様が描かれたロングワンピースで登場した川上。冒頭、今年のキャッチフレーズ「誰かを想う日がやってくる。」について「今現在のことでもあるし、未来からくるようでもある“やってくる”という言葉に惹かれました。かき立てられるような、ワクワクするような、何かを始めたい気持ちになるすごくいい言葉だと思います。シンプルなんだけれど、日々が迫ってくるというか、明るい気持ちになる」と、独特の感性で感想を述べた。
その後、芦田とOKAMOTO’Sのハマ・オカモトが共演したCM「手紙の部屋 母の日」編が披露されると「リアルタイムで手紙を書くことで、今ここで文字が、気持ちが生まれることが伝わってきて、やっぱり手紙っていいなとしみじみ思いました」と、手紙で思いを伝える重要性について言及。
CMにちなんで母親との思い出を聞かれた川上は、自身の体験を交えて「朝から晩まで子どもたちのために働く母親で、私が守ってあげなきゃとずっと思っていた。でも、自分が出産して親になって分かったのは、親というのは基本的に子どもには何も求めていないこと。元気に笑って、その子が人生を楽しんでいてくれればそれだけでいい。自分が親になって、初めて母親の子どもになれたような気がします」と語り、高校生の芦田が「私はまだ子どもなので……。母親になったり、歳を重ねないと分からないこともあるんだなと思いました」と思わず感じ入るひと幕も。
イベント後半は今の時代における手紙の意味を問うトークセッションに。川上にとっての手紙は「いつまでも見て、触れることのできる心そのもの」といい、その理由を「人の気持ちというのは目には見えないし、触れることができなくて時にもどかしかったり、保存しておくこともできない変わっていくものだったり。けれども、手紙というのは一人ひとり文字が違っていて、声のようなものだと思うんです。いつも手元にあって、取り出して触れることや見ることができる気持ちや心が物質化したもの」と語りかけた。
最後に川上は「改めて手紙で家族や大事な人に贈りたい言葉を考えることで、自分の中のまだ言葉になっていない思いに気づくことができると思います。手紙に書かれた言葉はその人だけのもので、それを受け取った方へのかけがえのない贈り物になる」と手紙を書くことの大切さをアピールした。