乃木坂46早川聖来「この1年で考えていることを持ち寄って素晴らしい舞台にしたい」
昨年3月から4月にかけて、1万枚ものチケットを早々に完売させた舞台『スマホを落としただけなのに』が上演された。しかし残念ながら、新型コロナウイルスの影響で千秋楽まで走ることが叶わなかった。それでも、多くのファンの熱い要望に応え、2021年6月4日(金)から大阪の松下IMPホールにて、6月9日(水)から東京の日本青年館ホールにてアンコール上演の幕が上がる。原作は志駕晃のデビュー小説。シリーズ累計発行部数97万部を突破、2018年に公開された映画も大ヒットを記録している。今作は初演と同様、第36回岸田國士戯曲賞を受賞した稀代の劇作・演出家の横内謙介の書き下ろしで、『スマホを落としただけなのに』とシリーズの続編『囚われの殺人鬼』を掛け合わせた物語となる。出演者も初演から引き続き実力派が続投。サイバー犯罪の事件解決に奮闘する若手刑事・加賀谷学役を辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、ハッキングを繰り返す連続殺人鬼・浦野善治役を浜中文一、恋人が落としたスマホをきっかけに事件に巻き込まれるヒロイン・稲葉麻美役を早川聖来(乃木坂46)、その恋人・富田誠役を佐藤永典、加賀谷の先輩捜査官・後藤武史役を原田龍二が演じる。本作が舞台単独初ヒロインだった早川に、初演で抱いた悔しい想いや再演にかける意気込みを聞いた。
――舞台『スマホを落としただけなのに』の初演は、コロナウイルスの影響で、公演の途中で中止を余儀なくされました。
複雑な心境でした。たくさん稽古をしていくうちに作品に対して愛情が芽生え、本番で回を重ねるごとに最後まで駆け抜けたい気持ちが強くなっていきました。それでも、コロナウイルスの影響で、私たち以上に医療従事者の方やコロナに罹った方が苦労されているわけですから、最後までやり遂げたかったと素直に言えないもどかしさもあって……とにかく悔しかったです。
それでも、今回、優しくて信頼のおける皆さんと再び集まって本作を上演できるのは楽しみです。
――改めて稲葉麻美はどんな役だと思いますか。
一見すると精神的に強い女性ですが、本番で演じてみると、実際はか弱い女性だと感じました。初演は強い女性に見せようと必死に演じましたが、本当は影のある女性で、自分を強く見せようと取り繕って生きていたんだなって。彼女は自分の過去を隠し、深い闇を抱えています。再演では、弱い女性が強く装っていることに重点を置いて演じたいです。強くなければ生きていけなかった女性の姿をお客様に観ていただきたいです。
――ご自身はこの1年でどのように変化されましたか。
取材で緊張せずに喋れるようになったことかな(笑)。初演から1年の間に、個人のお仕事も増えたし、乃木坂46の4期生としてラジオやテレビの歌番組、コント番組で多くのことを経験したおかげで、自分の引き出しが増えて成長することができました。
――舞台に活かされることも増えそうですね。
そう思います。ドラマのお仕事で「ゼロか100の演技ではなくて、その間の感情を表現して人間味を出してほしい」と言われたんです。嬉しいとか悲しい想いに振り切れるだけでなく、その間の繊細な感情を使って人間味のあるお芝居ができることを学びました。たとえ、舞台の客席から観えない細かい感情表現だって、板の上のキャストのみんなに伝われば、私たちの表現力が上がるし、それがお客様に伝わって、もっと感動していただけると思います。私だけでなく、他のキャストの方も演出の横内(謙介)さんも、この1年で考えていることがあると思うので、それらを持ち寄って素晴らしい舞台にしたいです。
――ここまで様々な舞台の経験をされてきましたが、舞台の魅力に気づいたりしますか。
昨年出演した即興ミュージカル『あなたと作る〜etude The 美4』は、配信だったので不思議な感覚になりました。やっぱり、舞台は目の前にお客様がいることが大切だなって。私は誰にも話せない秘密を共有することができる舞台が大好きです。毎公演、少しずつ違うお芝居になるし、台詞の間やアドリブも違います。同じ舞台はひとつもないので、その日いらっしゃったお客様にしか私たちの特別な想いを届けられないことが演劇の魅力だと思います。
――それではお客様にメッセージをお願いいたします。
前回よりも良い作品にしないといけない使命感はありますが、こういった状況だからこそ、舞台を上演できる感謝の気持ちを大切にしながら、絶対に熱い作品にするので楽しみにしてください。大好きな地元の大阪から幕が開くので、良いスタートダッシュを切って、東京で無事に千秋楽を迎えられるようにみんなで頑張りたいと思います。ぜひ観に来てください。
(文・竹下力)