三方よしの時代から「四方よし」へ。そのビジネスはアフリカのバナナペーパーにあった。【寺尾聖一郎の「SDGsなライフシフト」】
こんにちは、前回のコラムではプラスチックについて書かせていただきました。今回はプラスチックと対照的な紙についてSDGsな視点でレポート致します。
■令和商人は「四方よし」
三方よしとは「自分良し」、「相手良し」、「世間良し」の三方を満足させる言葉で江戸時代中期の近江商人の思想・哲学として有名な言葉ですね。持続可能な社会を目指すためには、この三方に加えて「地球良し」が重要な商いのキーワードと言えるでしょう。それを実現している素敵なビジネスを紹介させていただきます。
■90年の老舗企業が取り組む本気のSDGsビジネス
今回取材した企業は山櫻さん。1931年の創業当初より名刺・はがき・封筒などオフィス向け紙製品の製造販売をされている90年の老舗企業。1990年に業界で初めて再生紙を使用した名刺を発売するなど、環境ビジネスの最先端を走ってきました。昔からのご縁あって公私ともにお世話になっている市瀬豊和社長に取材をさていただき「紙×SDGs」の最先端ビジネスについてレポートします。
■日本の紙生産量は世界第3位
日本の紙生産量は、中国・米国についで世界第3位。国民一人当たりの消費量も、年間201kgと世界平均56kgを大きく上回ります。日本では使い終わった紙の回収、再利用に取り組み、古紙回収率は約80%、古紙利用率も65%を超え、まさに世界トップクラスにあります。
■紙製品ビジネスはSDGsの17目標項目の全てに当てはまる。
取材で分かったことは、山櫻社は紙の製造から加工、印刷まで統合的なペーパーカンパニーで、自然の素材を使って製造する紙事業にとって環境との関りは非常に深い関係です。SDGsを一早く企業戦略に掲げ、持続可能な社会へ貢献するための製品作りの姿勢は、まだ知名度の低かったSDGsが始まるずっと前から環境事業に努めていました。
■ザンビアのバナナとの出会い、そして決意。
市瀬社長が自らアフリカのザンビアを訪ねて見たものは、バナナの収穫ビジネス。電気、ガスもない生活を送っている小さな村は、貧困のため教育を受けることがなく、生きるための肉体労働だけを繰り返す日々を送っていて、そのための密漁や森林伐採もやむなく行っている地域でした。バナナは現在世界約125ヵ国で栽培と言われていますが、収穫の際、大量の茎が廃棄されています。実はその茎から紙を作るバナナペーパーの技術が生まれたことで、バナナと茎が村の収益になる仕組みが生まれたのです。のちにこのビジネスによって、40人以上のオーガニックバナナ農家が潤い、数多くの女性と男性の雇用が発生し、150人以上の子どもの教育環境が整い、500人以上の最貧困層が普通の生活に近い環境を得ています。それにより、貧困で苦しむ人々が行う違法の森林伐採や野生動物の密猟を防ぎ、人と森と絶滅危惧種を守るフェアトレードビジネスがバナナペーパーによって解決しているのです。
*ワンプラネット・ペーパー®協議会HPより。
■バナナから名刺、そしてハンガーを製造販売
廃棄しない茎をつかって生成された紙を使って、名刺やハンガーなどの日用品が誕生しています。山櫻さんでは、バナナペーパーから作られたエシカルハンガーや、名刺などを販売する「rik skog(リークスクーグ)」というオリジナルサイトを立ち上げてスタート。リークスクーグとはスウェーデン語で豊かな森を意味します。また、2017年より産学連携の一環として青山学院大学経営学部公認学生団体「学生リーダーズ(SBSL)」と開始したバナナプロジェクトに参画し、協議会の一員としてバナナペーパー各種の製品の生産を担当されています。
*rik skog(リーク スクーグ) https://rik-skog.shop/about
*ワンプラネット・ペーパー®協議会 https://paper.oneplanetcafe.com/
■豊さってなんだろう?
私たちが日常に使っている紙製品は沢山あります。でもその製造原料がどこからきているかを意識している人は多くはないでしょう。元来、紙の原料は木材なので、自然との関係が最も近い商品とも言えます。その紙の原料元を探ると、森林伐採、貧困、教育、衛生、絶滅動物などSDGsが掲げる17の項目すべてに当てはまることがわかりました。紙を制するものはSDGを制する。といっても過言ではありません。話はもどって近江商人の「三方よし」は令和時代では、「自分良し」、「相手良し」、「世間良し」+「地球良し」の「四方よし」の時代ではないかと思いました。今回、取材させていただいた山櫻さんのセカンドブランド(rik skog)のホームページから素敵なメッセージを見つけたので紹介いたします。
豊かな森がなければ 私たちの営みは成り立たない。
豊かな森の恩恵を受けて製品をつくり続けてきた山櫻が
豊かさって何だろう?
サステナブルって何だろう?
と考えながらものづくりの会社ならではのエシカルな製品を提案するブランド
それが rik skog。
■取材を終えて
こうしたSDGsの取り組みは経営者自らリーダーシップをとって進めることが大切ですが
山櫻さんは現場の企画、販売など社員の方に任せていて、さまざまなサービスや商品のアイデアが誕生しています。社員の方一人一人が環境推進カンパニーを自覚して働いていらっしゃる雰囲気をとても強く感じました。私も何か関わりたいと思ったので、早速名刺をバナナペーパーで作ることにしました。ぜひお勧めします。
そういえば市瀬豊和社長の名前も「豊」、「和」が名前に入っている素敵なお名前ですね。大学ラグビーのヒーローこと故・平尾誠二さん率いる同支社と大学全国一を争った元ラガーマンとしてラグビーの支援もされている、会社のトレードカラーのピンクのネクタイがとっても似合う素敵な経営者が印象です。
■企業山櫻についてHPより。
株式会社山櫻は、環境省が進める「環境省ローカルSDGs 地域循環共生圏づくりプラットフォーム」事業の企業等登録制度に、45番目として登録されました。この制度は、環境省が提供する「地域循環共生圏」の構築の理念に賛同した企業の登録制度です。「地域循環共生圏」とは、各地域が足もとにある地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方であり、地域でのSDGsの実践(ローカルSDGs)を目指すものです。引き続き、環境省が目指す「地域循環共生圏(ローカルSDGs)」の実現に貢献できるよう事業を実践して参ります。
https://www.yamazakura.co.jp/csv/community/bananapaper
*山櫻HP https://www.yamazakura.co.jp/
寺尾聖一郎(てらおせいいちろう)ソーシャルコンテンツプロデューサー
1964年 東京都生まれ。(株)リレーションズ代表取締役
エンタテインメント&コンテンツビジネスを中心に31年間勤務した大手広告代理店を2020年に早期退職。自らパーソナルトランスフォーメーション(PX)を志し、人生100年時代のセカンドライフを実践挑戦中。”アイデアで世界を繋ぐ”をコンセプトにしたソーシャルクリエーティブ&㏚会社(株)リレーションズを設立。東京浜松町に2020年8月に開業したダイアログミュージアム”対話の森”や、ダイアログインザダーク,ダイアログサイレンスのPR&企画プロデュースなどを手掛けている。趣味は料理(調理師)、テニス、防災キャンプ。
資格:障がい者スポーツ指導員、准認定ファンドレイザー行政書士、宅建、調理士
NPO法人LWC理事「クイズに答えてお米を寄付するサイトハッピーライスの運営」
https://happyrice.org/https://happyrice.org/
公式サイト:relationsholdings.com
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