東京五輪 空手 喜友名諒 『感謝』【アフロスポーツ プロの瞬撮】

 スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。

撮影/文章:西村尚己(2021年8月6日 東京オリンピック)

喜友名諒(きゆな りょう)とダミアン・キンテロ(スペイン)。

二人のライバル対決となった東京オリンピックの空手・男子形の決勝。
会場は日本武道の聖地、日本武道館だ。

気魄の演武を終えた両雄が審判を挟んでコート後方に並び、判定結果を待つ。
会場に緊張が走ったその瞬間、審判は左手(喜友名側)を高らかに上げた。
金メダリスト喜友名諒が誕生した瞬間だ。
喜友名は表情ひとつ変えず静かに一礼。
そして二人は握手を交わし、互いに健闘を称えた。

コート前方でカメラを構えていた私は、その一部始終を撮影するや否や、コート後方に急いだ。
なぜなら喜友名がコート後方からそのまま降壇し、待ち構えるチーム関係者に挨拶すると予想したからだ。
ところが私の予想は見事に外れた。

おもむろにコート前方へ歩き出した喜友名。
コート中央、すなわち日本武道館の真ん中で立ち止まると静かに正座。
しばし瞑目。
そして深々とお辞儀をしたのだ。

意表を突かれた私は、慌ててコート前方に戻ろうとするがもう間に合わない。
辛うじてコート側方からその光景を数枚、カメラに収めることができた。

その後、優勝インタビューで金メダル獲得の心境を問われた喜友名。
その第一声は“感謝”という言葉だった。
「まずは、この舞台に立てていることに感謝をしたいと思います」
「自分一人ではこの舞台には立つことはできなかったので。本当に今は、・・・すべてに感謝しかないです」

この日見た美しい光景。
私自身の心に深く刻んでおこう。

■カメラマンプロフィル
撮影:西村尚己
1969年、兵庫県生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。
人間味あふれるアスリートの姿に魅せられ、学生時代にスポーツ写真の世界と出会う。
大学卒業後は、国土交通省に勤務しながらアマチュアカメラマンとして活動するも、どうしてもプロの世界で挑
戦したいという想いが募り、2016年にアフロスポーツに転職。
現在は国内外のスポーツを精力的に撮影し、人間の情熱や鼓動、匂いなど五感で感じとれる作品づくりに励む。
2007年 APAアワード写真作品部門 奨励賞
2013年、2015年 写真新世紀 佳作 ほか

★インスタグラム★
https://www.instagram.com/naoki_nishimura.aflosport/

アフロスポーツ

1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。

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写真展「夏季オリンピック 報道の世界 Photo by アフロスポーツ」を開催中
【開催日程】2021年7月2日(金)~2021年8月25日(水)
【開館時間】10時00分~17時30分
【休館日】日曜日・祝日[夏季休業:8月8日(日)~8月15日(日)]
【開催会場】キヤノンギャラリー S(住所:東京都港区港南 2-16-6 キヤノンSタワー1階)
【交通案内】JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行品川駅より徒歩約10分
【入場料】無料
【URL】https://sport.aflo.com/exhibition2021/
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