「みんな、覚悟はできているのか?」豊田利晃&窪塚洋介が『全員切腹』で問いかける、生き方の美学〈前編〉

『全員切腹』津雲段兵衛役の渋川清彦(©︎豊田組)

窪塚「俺、やっぱすごい興奮してたんですよね。死んじゃったんで」

窪塚「あと、隊長(飯田団紅・切腹ピストルズ総隊長/紅吉役)から聞いたのかな? 地元の方が、“神社で切腹がある。昔もそうだった”みたいなことを言っていたって」

 隊長曰く、あの神社で戊辰戦争の頃に行われた実際の切腹の時に村人が集まってきたのと同じように、切腹シーンの撮影に村人が集まってきた、と……。

窪塚「ただならぬ空気感が、あの電波の届かない山にはありましたね。絶妙な撮影地でした」

豊田「Wi-Fiが届かないっていうのが最高です」

窪塚「そう。電波がなくなっちゃうんで、もう、否が応にも集中するじゃないですか。俺らって基本的にスマホ持って生きてるんで、それがなくなった時の自由さだったり、集中力というものがここまで変わるのかと。本当に張り詰めた空気の中で芝居させてもらえました。監督はすごく研ぎ澄まされた掛け声を下さる方なので、その力も相まって。腹を切るまで、3テイクくらい通しでやって、腹を切ったのはワンチャン、1回だけ。18時までの撮影予定が、16時くらいには終わっていて。で、俺やっぱすごい興奮してたんですよね、死んじゃったんで」

豊田「(笑)」

窪塚「予定があったので、“ちょっと早く出ます”と言って、22時頃までにはもう大阪の自宅に帰っていたんですけど、寝れないんですよ、全然。それで監督は何やってるんだろうと思って連絡したら、隊長の家で飲んでて。KEEくんもいた。“誘ってくださいよ!”って。ズルイなあと思った。“俺、もうアドレナリン出ちゃって寝れねーよ!”ってなってて」

豊田「いや、誘おうと思ってたら“帰っちゃったの?”って」

窪塚「みんなが感じた空気を3人(監督、飯田、渋川)は共有しているんですけど、俺だけ家で飲んでて。インスタライブしちゃいそうになって(笑)」

豊田「(笑)」

 それだけの気迫であのシーンを描くにあたって、「切腹」という儀式についてはそれぞれ、どのような想いを抱いていたのでしょうか。

豊田「今回、司馬遼太郎を読み直して、窪塚には武市半平太の“三文字切腹”を再現してもらたんだけど……、幕末の人って結構切腹しているんだよね。100人単位で切腹したとか、“え?”って思いません?だって幕末ってそう遠くないじゃないですか、100年ちょっとくらい。司馬遼太郎の文章がうまいというのもあるかもしれないけれど、そういう人たちの姿が文学として残っていることに、思うところはありますよね。自分にできるのか?とか、なんのために切腹をするのか?とか……」

窪塚「うんうん」

豊田「映像では残っていないわけだし」