東京パラリンピックが閉幕。「コロナ禍で見せる最高の大会」として歴史刻む
東京2020パラリンピック競技大会が9月5日、12日間の熱戦を終え、閉幕した。史上最多の参加人数や、日本勢のメダルラッシュ、国内外から高い評価を受けた開閉会式など、「コロナ禍でできる最高のパラリンピック」として、パラリンピック史に新たな歴史を刻んだ。
今大会では、2回目のパラリンピック参加となる難民選手団や、新たにブータン、グレナダ、モルディブ共和国、パラグアイ、セントビンセント及びグレナディーン諸島の初参加5カ国を含む、162カ国が出場。前回リオ大会の159カ国から3カ国増え、世界各国から史上最多となる約4400名のアスリートが集った。
舞台はエアポート。旅のはじまり
開会式のコンセプトは「WE HAVE WINGS」。誰しもが人生で経験する逆境の中、どんな風が吹いても勇気を出して「翼」を広げることで、思わぬ場所に到達できる、というメッセージが込められている。世界中のパラリンピアンが集い、着陸することをイメージした「パラ・エアポート」を舞台に、勇気や希望の「風」を起こすためのさまざまなパフォーマンスが繰り広げられた。選手入場では、フィールド上のアシスタントキャストが頭にプロペラを着けた姿で登場して、選手たちに風を送ったり、軽快なステップで歓迎したりするなど、旅の始まりを盛り上げた。
車いすに乗った少女が演じた「片翼の小さな飛行機」では、空を飛ぶことが怖かった少女が、片足や小さい身体、目の見えない飛行機など、さまざまな登場人物たちに出会うことで、自ら滑走路を目指すという、勇気や挑戦を体現する航空ショーも繰り広げた。
2度目の難民選手団、アフガン選手団も出場
難民選手団からは女子1名、男子5名の計6名が出場。女性初の難民パラアスリートでありパラリンピック選手団の最年少代表、アリア・イッサ(ギリシャ/シリア難民)は、パラ陸上(こん棒投げ)に出場。「難民女性のロールモデルになりたい」と、初舞台で力強い姿を見せた。命を懸けて参加した選手たちもいる。8月15日、事実上の政権崩壊で一時来日を断念したアフガニスタン選手団からは、テコンドーのザキア・クダダディと陸上競技100mのホセイン・ラスーリの2名が出場した。2人はアフガニスタンからパリに1週間避難した後、来日。東京で夢の舞台に立つことが叶い、会場からは惜しみない拍手が送られた。
日本勢メダルラッシュ
日本勢の活躍も大会を盛り上げた。日本は金メダル13個、銀メダル15個、銅メダル23個の合わせて51個のメダルを獲得。金メダルなしに終わった前回リオ大会の24個から2倍以上増やし、2004年のアテネ大会に次ぐ多さとなった。陸上の佐藤友祈や道下美里、競泳の木村敬一、車いすテニスの国枝慎吾など、日本のエースが悲願の金メダルを獲得したほか、トライアスロンと車いすバスケットボール男子は初めてのメダル獲得でファンを沸かせた。今大会ではテレビの放映時間も過去最長となったことから、SNSのトレンドランキングではパラ競技が1位を獲得するなど、視聴者の関心も高まった。
違いが輝く街
大会を締め括る閉会式のテーマは「すべての違いが輝く街」。多様な身体、ユニークなテクノロジー、さまざまな素材、それぞれが混ざり合い “「らしさ」を発揮した状態でカラフルに合わさる”ことを表現した。終盤には性別や年齢、障害を超えた多様なパフォーマーが登場して、1台のカメラで撮影し続ける「ワンカメショー」を披露。大会コンセプトの「多様性と調和」を体現した式典は、国内外のメディアから高い評価を受けた。
「コロナ禍でできる最高のパラリンピック」として、未来を示した東京パラリンピック。正念場はこれからだ。競技の普及や人気を絶やさないために、多くの人を巻き込んだ取り組みが求められる。