徳井健太の菩薩目線 第109回 KAT-TUN 上田くんのような嘘をつかない人間の海外ロケが見てみたい
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第109回目は、『食宝ゲッットゥーーン』出演時の印象について、独自の梵鐘を鳴らす――。
『徳井の考察』内で、KAT-TUN&食宝ゲッットゥーーンについてお話させていただいた。中丸くんのバラエティ能力、亀梨くんの所さん感、上田くんの戦国武将感――。
驚いたのは、3人ともテレビ的な要素(例えばカメラなど)を意識しているようには感じなかった点だった。普段は、芸人がいない収録だという。一体、どうやって回しているんだろうというくらい気負いがない。その自然な感じに、とても好感を抱いた。
とりわけ気になったのが、上田くんだ。彼からは、一切人から好かれようという感じがしない。話し方、椅子の座り方、どれをとっても好かれようなんて思っていない、たたずまい。心の中に優しさを持っていたとしても、その優しさを伝える努力をしたくない――、努力を伝えるための努力をしないという雰囲気を、勝手に感じた。会ったことはないけど、勝新太郎さんをはじめとした昭和の名優って、こんな感じだったんだろうなと、時空を飛び越えてしまった。
男女問わず、「ファンのおかげです」なんて明らかに嘘と見破られるような上っ面の言葉を並べるだけのアイドルが少なくない。俺もいろいろなアイドルと共演させていただいてきたけど、不愛想でも嘘をついてないほうがよっぽどいいと思っている。
彼ら彼女らは、自分たちがファンに支えられているということを痛いくらいにわかっている。おそらく、ファンも自分たちが支えているという強固な自覚があるはずだ。だから、そもそもお互いが大事に思っていないと、アイドルとファンの関係なんて成り立たない。そんな当たり前のことをわざわざ口にする必要なんてあるの? あえて伝えないという人だっているに違いない。逆張りのロックだ。
久々に芸能界で嘘をついてない人を見たなと思った。ここにいたのかって。 芸歴10年くらいだったら、まだわかる。でも、長い人生の中で自分のキャリアと向き合わなきゃいけなくなってくる15年、20年ともなれば、話は変わってくる。ずっとブレないってのは、ものすごく鍛錬が必要なことだ。
上田くんは、『イッテ Q 』のような海外ロケが、とても似合うと思う。嘘をつかないから、ものすごく説得力が生まれると思う。海外の文化に触れたとき、飯がまずかったらまずいって顔をするだろうし、純粋に感動したら涙を流すだろうし。 『ハイパーハードボイルドグルメリポート』のようなハードなロケも見てみたい。嘘くさくないから、『炎の体育会TV』 にハマってるのも納得だ。
そんな気持ちの一部を『徳井の考察』で述べたわけだけど、ありがたいことに動画の中では再生数しかり好評のようだ。が――、反響って本当に難しいなと痛感している。
振り返ると、 『徳井の考察』内で反響が高かった動画は、オリラジ中田のあっちゃんとコラボしたものや、東野さんやハライチについて話した回が、それなりに再生数が高い。そんな中、意外にも再生数が高いのがバッドボーイズ佐田さんの『佐田ビルダーズ』を考察した回だ。佐田さんが登場するわけではないのに、どういうわけか6万回ほど再生されている。『特攻の拓』ファンが大勢視聴したのだとしても、THE YELLOW MONKEYについて考察した回よりもダブルスコアで再生されるなんてどうかしている。何が反響につながるのか「!?」なんだ。
加えて、再生回数が高いからと言って、チャンネル登録者が増えるわけでもない。それどころか回を重ねるごとに、ジリジリと登録者数が減っている。もう「!?」としか言いようがない。
おそらく、多くの人がお笑いの分析を望んでいるんだと思う。とは言え、あまりニッチなところをチョイスしても再生回数は回らないし、ビッグネームを扱うにしても、語るまでもないからビッグネームになりえたわけで、語るに落ちる。
端的に言うと、壁にぶち当たっている。
『フリースタイルティーチャー』を扱ったものの、目も当てられない再生数を弾き出してしまった光景などは、壁によって圧死したと思ってもらって構わない。
過去にも、「賭博deハッピーちゃんねる」なる回をお届けしてみたけど、誰も受け取ってくれなかった。「見ず知らずの他人に、勝った金で酒を奢りたいです。20万円が目標です。応援よろしくお願いします!」と謳ってみたけど、敷居さえまたがせてくれずに門前払いだった。サブチャンネルでやれよ、って話だったのかもしれない。
まったく何が伸びるのか読めない。それがYouTubeの面白さなのかもしれない。一方で、結果を出したあっちゃんやカジサックのすごさを思い知る。結局、俺自身が興味のあることをやり続けるのが、一番ストレスにもならないし、良いことなんだろうなと思う。一周回っていない原点回帰は、ずっとスタート地点にいるだけのような気もするけど、俺も嘘をついてまで何かをやりたいとは思わない。
※「徳井健太の菩薩目線 」は、毎月10・20・30日に更新予定
1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集めている。デイリー新潮でも「逆転満塁バラエティ」を連載中。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw