一人の政治家を追った一冊の本『政治家 中山泰秀』著者・杉浦美香氏が語る中山泰秀氏

著者の杉浦美香氏

 ではなぜネット上などでああいうふうに言われているんだろうと思いました?

「私は兵庫出身なんですが、大阪だと笑いを取ってなんぼや、というところがあります。笑いというか雰囲気を和ませる。サービス精神旺盛なので、そういう部分がついつい出てしまう。それはあまりよく知らない人からすると、軽いと思われたり、マイナス面に判断されたりして、揚げ足を取られることもあると思います。なので“人となり”がうまく伝わってないなと思いました。いろいろなタイプの政治家がいる中で一本筋が通っている政治家だとは思います。それゆえに誤解されやすいところがあると思います。

 ご自身は“戦略的な政治家だ”とおっしゃるんですが、票を取るための戦略として考えるなら、言わないほうがいいなということを中山さんは言っちゃうんです。思ったことを曲げないで言ってしまう。これってそのへんの“風”で通った“○○チルドレン”といわれるような議員とは決定的に違うところです。今回の総裁選でも自分が選挙で当選するためには誰が総裁だったら都合がいいかといったことを考えて行動している議員さんが多いように見えます。国のためではなく自分のため。もちろん選挙で勝たないと始まらないのは分かりますが。そういう点でいうと中山さんは腹は座っている。選挙のためではなく、自分の信条をベースに動いている。そういう先生はそんなにたくさんはいらっしゃらないです。よくいわれる“政治屋”とは一線を画している“政治家”だと思いました。実際、最初の選挙では落選しているのですが、その時はお父様の正暉さんが現役でしたから看板はあるが地盤は引き継いでいない。看板がある分、大阪ではまっさらな新人より有利ではありますが、そこらの世襲議員とは色合いが違うということは言えると思います」

 政策面から中山氏について思うところはありますか?

「中山さんがかねてから掲げているものとして“国連の本部機能を日本に持ってきたい”というものがあるんです。それは広島や長崎といった原爆の被害を受けたところは、被害を受けたということで世界に知られている。それは大きな犠牲を払ったブランド力である。そこに国連本部機能を持った施設を作りたい、というものなのですが、普通、大阪選出の議員だったら“大阪に作りたい”といってもおかしくないのに“平和ということで広島なんだ”と言う。広島にあれば大阪や九州に広がりやすいという面もあるんですが、単に“大阪選挙区だから大阪に”という我田引水的には動いていない。これは政策的にも面白いし、すごいなと思いました。

 また『子ども未来国連』という活動にもボードメンバーとして参加しているんですが、子供を持った親はこれからの世の中はどうなるのか不安に思っている。そういうところをなんとかしたいという思いからのものですよね。アイデアマンならではだなと思うのが、望めば誰でも留学できるという『徴学制』という政策です。徴兵制と言葉は似ていますが、義務を負うのは国で、国が航空費用と学費を含めた費用を負担するというものです。現在、留学しようと思ったら裕福な家庭でないとちょっと難しい。でも留学したいと思う子供たちにそういう機会を平等に保障してあげたいというものです。またこれは子供たちばかりでなく、大人にも資格を広げている。大人も今は大企業だったり官僚にならないとなかなか留学なんてできない。そういった不平等をなくしたいということを政策のひとつに挙げています。そういうものが実現したら面白いなと思いますね」

『政治家 中山泰秀』
【著者】杉浦美香
【発行】青林堂
【定価】1650円(税込)
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