【インタビュー】木乃江祐希「殺される!高飛びしなきゃ」からの留学体験をそのまま作品化

 ナイロン100℃の女優・木乃江祐希が主宰する劇団「コノエノ!」の第2回公演『スタディー・イン・ニュージーランド』が9月23日(土)から下北沢のシアター711で始まる。旗揚げ公演では「ほぼ実話」の作品を上演し物議をかもした木乃江なのだが、今回もそこからつながる「ほぼ実話」な作品という。

撮影・神谷渚

◆実話そのままの『エリコ・オブ・ザ・デッド』

 木乃江は昨年7月から約1年間、ニュージーランドに留学していた。「史上初の留学促進音楽劇」とうたうように、今回はその体験がベースとなった話なのだが、そもそもなぜニュージーランドに?

「知り合いにニュージーランド出身の俳優がいるんですが、その友達が『Study in NEW ZEALAND』という留学雑誌で、留学体験をしてコラムを書いて、顔を出してもいいという女性を探していたんです。そこで私が女優をやっていて脚本も書いていると言ったら、“君だ! ニュージーランドに留学しない?”って言うので“あ、行きます”って即決でした。その時は劇団を立ち上げて第1回公演を控えた時期。ひどい芝居を書いていて…。『エリコ・オブ・ザ・デッド』という作品なんですが、あれは私の親友の好きな男性を寝取った実話をそのまま書いたものなんです。エリコという名前も実名。私、書いてしまってから“殺される”と思って本番が終わったら高飛びしないといけないなって思っていたんです。それに旗揚げ公演でしたので公演自体がどうなるかも分からないしすごく不安でした。そういうときだったので“7月から行けます。公演が終わったらすぐに行きます”って」

 その後エリコとは?

「今回の話は、その実話をやってしまったことによってエリコに絶縁される話です。パート2です」

 物語は主人公が鍾乳洞で遭難したところから始まる。

「それも本当の話。とある劇団の脚本家が親友の実話を書いてしまって、親友に殺される前にニュージーランドに行って楽しく過ごしていたんですが、帰国の1週間前に鍾乳洞に入ったら遭難しちゃった。その鍾乳洞の中で、ニュージーランドの楽しい思い出とエリコが怒って殺しに来るという2つの想像が交互にやってくる。そして最後には……というお話です」

 最初は違う内容の話を書こうと思っていたとか。

「最初はフィクションを書いていたんですが、これがちっとも面白くない。それで帰国してからエリコと再会したんですが、ひと悶着あったこともあって、“あっ、やっぱり宿命”と思って全部エリコの芝居に書き直したんです。2日で書きあがりました。エリコ? 怒ってました。殺される、と思った(笑)」

撮影・神谷渚

■体験型の演劇があってもいい

 なにやら本物の羊毛で羊の着ぐるみを作るとか。やはりそこはニュージーランドに行っていたゆえのこだわり?

「そんなこだわりは1ミリもなかったんですが、着ぐるみも作るとなると結構いいお金がかかるんです。どうしようかと思っているときに、たまたまある牧場の公式ツイッターで“羊毛が余っています”ってつぶやかれていたんですが、そんな偶然あると思います? 私、運だけは異常にいいんです。前回公演の時も芝居中にマジックをやりたいなって思っていた時に知らない人の誕生会に行ったら隣に座っていた人がマジシャンだった。今回も“これは運命だから”って那須まで取りに行って。15キロの羊毛をいただいてきました」

 木乃江の作品には演劇以外にもマジックと音楽という要素が含まれる。

「マジックも音楽も大好きなんです。それに演劇を18年やっているんですが、演劇に限界を感じているところもあります。私たちのようなケータイ世代はケータイを見ないで2時間ただ座らされるというのはつらいと思うんです。私はこれから芸術がどう進化していくかと思った時に体験型というものがあってもいいんじゃないかと思っています。それは人狼ゲームの舞台を見たときに思ったんですが、あれって芝居としては大して面白いものではないんですけど、誰が狼か当てなきゃいけないというのは面白いじゃないですか。演劇自体も映画と比べると体験の要素は強いんですが、それをもっと推し進めてみようかと。演劇ではあるんですがショーに近い感じ。だから前回も飲食OKにしたし、血のりもいっぱい使ったしマジックもやった。見世物小屋の感覚です。
私は演劇の緻密な物語を見るのも大好きです。でも私は見たことがないものを見たい。だからそういうショー的なものをやりたいという一方で、本当にやりたいものももちろんあります。例えば私が書きたいものは女子の友情もの。でも、それをそのままやっても誰も見てくれないだろうなって思うので、目くらましにいろんな事をやるんですが、最後に香りだけは感じて帰ってもらいたいし、なんなら能動的に探してほしい」

 今回は7%竹というユニットとの合同公演。幕間に7%のコントが入る。

「7%竹の武藤心平さんとはもう13年のつきあいで、私は7%竹の大ファンなんです。でも6年前に活動を休止しちゃった。前回、公演をやることになった時に“武藤さんがやらないから私がやり始めるからね”って言ったら、“俺も出してよ”って言うので出てもらったんです。それで今回の合同公演につながりました」

 羊毛はただで手に入れたが、これを着ぐるみにするのはお金がかかる。マジックの道具も。前回公演では大量の血のりを使ったことで、衣装もセーラー服を100枚用意した。やることがいちいち規格外なのでどうしてもお金がかかってしまう。ということで前回同様、今回もクラウドファンディングを行っている。

「ここで制作費がかかりすぎたら第3回公演が遅くなるので、なんとかうまく収まるようにはしたいんですけど、ダメだったらキャバクラで自らお金を稼ぎます(笑)」

 演劇は多様性のあるジャンルなのだが、それでもその枠では収まらない作品になりそう。日替わりゲストには意外な大物の名前もあり、よそではあまり見ることができない作品ということは間違いない。

(本紙・本吉英人)

劇団コノエノ!と7%竹『スタディー・イン・ニュージーランド』

【日時】9月23日(土・祝)〜10月1日(日)(開演は19時。24・25・27・29・30日は14時の回あり。※1日は14時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】シアター711(下北沢)
【料金】前売3700円、当日3900円
【問い合わせ】J-Stage Navi(TEL:03-5912-0840=平日11〜18時)
[公式Twitter]コノエノ! (@konoeno
【作】木乃江祐希
【演出】コノエノ!と7%竹
【演出協力】須貝英
【幕間担当】武藤心平
【出演】小園茉奈(NYLON100℃)、木乃江祐希(NYLON100℃)、武藤心平(7%竹)、吉田電話(クロムモリブデン)、吉田英成(InnocentSphere)、福田高徳、宮本愛美、青木絵璃、常住真菜、田辺啓太/YAFUMI(LAID BACK OCEAN )、長田奈麻(NYLON100℃)、ブルー&スカイ
【日替わりゲスト】園子温(10月1日昼) 、松田大輔(東京ダイナマイト)(9月25日夜、27日昼、夜)、岩崎う大(かもめんたる)(9月25日昼、29日昼)、菅良太郎(パンサー)(9月24日夜、26日夜、28日夜) 他 
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