福島原発で深刻な放射能漏れ 情報入り乱れる

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 11日に起こった東日本大震災で被害を受けた福島県大熊町の福島第1原子力発電所の放射能漏れが深刻な事態となっている。

 宮城・岩手の両県を襲った巨大津波に耳目が集まるなか、12日午後3時半すぎ、冷却機能が失われ「炉心溶解」が発生していた第1原発1号機建屋で水素爆発が起こり建屋を損傷した。夜には放射能漏れの危険性が高まったことから、原子炉の容器内に海水とホウ酸の注入を始め炉心を冷却する作業を実施した。

 13日には3号機も冷却機能が失われ炉心溶融の可能性が出てきた。蒸気を外部に放出し、炉心に海水を注入したが14日に水素爆発が起き、原子炉建屋を損傷した。15日に付近で毎時400ミリシーベルトの高い放射線量を観測。また16日には水蒸気とみられる白煙が上がり続けた。使用済み核燃料貯蔵プールの水の蒸発が原因とみられ、燃料が露出する危険性が高まった。

 14日深夜には2号機で約4メートルの高さの燃料棒が水面から完全に露出し、原子炉が冷却できない状態になった。同日夜にも全面露出し、緊急の海水注入で、いったんは燃料棒の下から3.1メートルほどまで水位は回復したが、深夜になって再び水位が急激に低下。15日には格納容器の圧力抑制室近くで爆発音。メルトダウン(全炉心溶融)が否定できない状況となった。

 東電は同日午後9時37分に福島第1原発の正門付近で3130マイクロシーベルトとこれまでで最高の3倍の放射線を計測したことを明らかにした。

 15日午前6時ごろには、地震発生時は定期検査中で停止していた4号機の建屋で爆発が起きる。建屋5階にある使用済み核燃料貯蔵プールの水位が低下、燃料が露出し水素が発生して爆発したようだ。燃料が損傷すると、外部に放射性物質が漏出する恐れがあるとあって、列島に緊張が走った。同10時半ごろに、第1原発3号機付近で1時間当たり400ミリシーベルトの放射線を計測。人体に影響を与える年間限度量の約400倍で、14日に計測した最高値の3130マイクロシーベルト(約3ミリシーベルト)から桁違いに上昇した。

 東京都内で大気中からヨウ素やセシウムの放射性物質が検出されたほか、茨城県東海村で通常の100倍程度の5マイクロシーベルトを計測するなど各地で通常よりも上昇したが、人体に影響を与える数値ではない。

 17日には炉心を冷やすためヘリコプターで上空から水の注入を始めた。

 4号機の放射能漏れを経て、15日午前11時には菅直人首相が「国民へのメッセージ」を発表。福島第1原発から半径20〜30キロ以内の住民に屋内退避を指示した上で「これ以上の放射線漏洩の拡大を防ぐように全力を挙げて取り組んでいる」と強調した。