トヨタがグローバルビジョン発表 1000万台に再挑戦

 トヨタ自動車は9日、中期的な経営指針「グローバルビジョン」を発表した。「新興国」と「環境車」を事業の柱に位置付け、新興国での販売比率を平成27年までに22年実績の40%から50%に高めることや、営業利益1兆円の早期達成を盛り込んだ。グループの世界販売台数で前人未到の1000万台超えを見込み、リーマン・ショックと大規模リコールの試練を乗り越え反転攻勢に打って出る姿勢を鮮明にした。

 トヨタには急拡大路線が業績悪化と品質問題の一因となった苦い経験がある。販売世界一を狙う独フォルクスワーゲンや破綻から再生した米ゼネラル・モーターズ(GM)のほか、台頭する新興国メーカーとの競争もかつてより激しさを増しており、完全復活への道程は厳しい。

「どんな状況でも利益を出せ、雇用を守れる会社にしたい」

 都内で記者会見した豊田章男社長は、規模よりも収益重視を強調した。

 20年3月期に過去最高の2兆2703億円の営業利益を稼ぎ出したトヨタだが、あえて厳しい経営環境を設定し1兆円の利益を出せることを目標に掲げた。

 環境車戦略では、主軸と位置付けるハイブリッド車(HV)の新型車を約10車種投入する一方、電気自動車(EV)や燃料電池車の開発を進め、“全方位”で展開する構えだ。

 豊田社長は「当然1000万台を超える水準になる」と再挑戦に言及した。

 世界のどのメーカーも達成したことがない1000万台はトヨタにとっても「鬼門」(幹部)だ。19年に937万台を記録し、21年に1040万台を目指す計画を掲げ、拡大路線を突き進んだが、“兵站(へいたん)”が伸びきったところにリーマン・ショックが直撃。過剰設備を抱え、21年3月期に4369億円もの巨額の最終赤字に転落し、21年の販売は781万台まで激減した。

 一連のリコールも拡大で品質管理の目が行き届かなくなったことが一因との見方は多い。過去の失敗を教訓に経営の“カイゼン”を加速できるかが、反転攻勢のカギを握る。