福島原発工程表改訂も具体策は「検討」ばかり

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 福島第1原発事故で政府と東京電力は19日、事故収束に向けた工程表で示したこれまでの3カ月間の取り組み(ステップ1)を総括するとともに、今後の工程表(ステップ2以後)を改訂した。放射性物質(放射能)の放出量が事故直後に比べて200万分の1に減少したことなどから、ステップ1は「達成できた」と評価。来年1月までのステップ2で、原子炉を冷温停止させるという目標は据え置き、「3年程度」の中期的課題として、燃料貯蔵プールからの燃料取り出しなどを新たに盛り込んだ。

 改訂された工程表のステップ2の目標となる「原子炉の冷温停止」は、避難民の帰宅を左右する重要課題だ。また「3年程度」の期限を明示した中期的課題では、燃料貯蔵プールからの燃料取り出しや、汚染水の海への流出を防ぐ遮水壁の設置などが盛り込まれた。しかし、実現の手法については「検討」とされた項目が多い。政府の原子力政策が迷走を続けるなか、具体的な「裏付け」がない工程表が、どこまで国民の信頼を得られるのか、疑問符がつきまとう。

 3〜6カ月後のステップ2の目標となる原子炉の冷温停止状態の実現は、半径20キロ圏内で立ち入りが禁じられた「警戒区域」の見直しの前提となる。細野豪志原発事故担当相は会見で「(避難民が)何年後に帰れるかは、ステップ2が終わった時点で結果を出せる」と強調した。

 現在、1〜3号機の原子炉圧力容器の温度は100〜150度程度で、汚染水を浄化して再利用する循環注水で冷却されている。今回の改訂では、循環注水を継続して冷温停止に持ち込む方針が示された。ただ、カギを握る汚染水の浄化システムはトラブル続きで、稼働率が上がらない原因も突き止められていない。汚染水の処理にはさらに高濃度の放射性廃棄物が出る弊害もある。

 処理で発生した汚泥はこれまでに150立方メートルを超えたが「処分のルールも技術もない」(原子力安全・保安院)状態だ。工程表でも中期的課題として「処理の研究」と記しただけで具体的な方策は示されず、当面は保管するしかない。

 また、今回の改訂では、中期的課題として、3年後までに「燃料貯蔵プールからの燃料取り出し開始」という取り組みが初めて盛り込まれた。

 ところが、燃料の処分問題は先送りされたまま。細野担当相は「福島県が最終処分場所にならない方法を模索しなければならない」とするが、他に受け入れる自治体が現れる確証はない。

 今回の改訂にあたっては、諸課題の実現に向けて「政府が責任を持つ」(細野担当相)としたが、現状で政府発表が国民に信頼されているとは言い難い。

 菅直人首相の「脱原発」発言や、突然のストレステスト(耐性検査)など、政府の原子力政策は迷走している。ステップ2が達成でき、「安全に帰宅できる」と政府が主張できたとしても、住民の「安心」につながらない状況で、工程表が具体策を欠いていては、国民の不信感は増幅しかねない。