相武紗季インタビュー「“頑張ったやんけ”みたいに思ってもらえるように」

舞台『PRESS〜プレス〜』 2月17日から上演開始

主演・明石家さんま×脚本・出演・生瀬勝久×演出・水田伸生による舞台企画第5弾となる『PRESS〜プレス〜』が2月17日からシアターコクーンで上演が始まる。今回ヒロインを務めるのは2回目の舞台出演となる女優・相武紗季。

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撮影:蔦野裕

 物語の舞台は高度成長期、大阪に本社を置くスポーツ新聞「堂島スポーツ」。さんまをはじめとした新聞記者やその編集部に出入りするさまざまな人間たちが熱い爆笑ドラマを繰り広げる。相武が演じるのはスキャンダルの現場写真を撮られた売り出し中の若手売れっ子女優。職種的には重なる部分もある?脚本を読んで率直な感想は?

「今の自分と重ねる部分はなかったんですけど、当時のスポーツ新聞がこんなに激しく芸能人に執着していたりとか、裏側を知りたいという気持ちが凄く強いということに驚きました。出て来る人がみんな凄く熱意を持って仕事をしていて、“そんな熱い時代があったんだな”って思いました」

 昔から高校野球が好きだった。スポーツ新聞を読む機会も多かったのでは?

「スポーツ新聞は読んでいなかったんです。高校野球の情報は特集している雑誌から。スポーツ新聞って電車の中で、おじさんが真ん中のちょっと危ないページを読んでいるイメージしかなくて、子どもにとっては読んではいけないというか、手に入れてはいけないものというイメージがずっとありました」

 生瀬の脚本はうまく当時のスポーツ新聞の特徴をつかんだものになっている。

「私はこの時代には生まれていないし、昭和を感じて生活してきたことはなくて、知らないことだらけだったので最初は戸惑うかなって思っていたんですけど、知れば知るほど面白い時代だったんだなって思いました。なので若い世代の方がこの舞台を見たら、今まで見たことのない日本とか生活感とか、そういうものを感じられて面白いんじゃないかと思います」

 劇中繰り広げられる会話は1960年代後半のもの。

「凄く懐かしい話を掘り起こしてきてネタにしているので、知っている人はより面白いですけど、知らなくても、“なにそれ?”って興味を持てると思います。例えば私たちの時代ではプロレスのテレビ中継が減っていて昔ほど見る機会が多くないと思うんですが、いろいろな人の名前がポンポン出て来ることによって、見終わった後に、“プロレスってなんだ?”みたいな気持ちになったりするんじゃないかと思います。私自身家に帰ってから調べたくなったりしましたし、そういうところからいろいろな興味が広がる作品になっているのかなって思います。演じている側としても毎回、さんまさんとかその世代の方たちが言ってくださる言葉が知らないことだらけで面白いんですよ」

 さんまとは世代が3回りくらい違う。お父さんと同じくらい?

「父と同い年なんですよね。でも全然年を感じないというか、やっぱりさんまさんは“さんまさん”という存在。いつもパワフルでエネルギーをもらっている感じがします」

 ふだんからテレビで見るようなパワフルさ?

「飛ばしてます。稽古が終わって、すぐ帰るのかなと思ったら、その後毎日1時間くらい喋って帰られるんです。その雑談のなかから、お芝居のやりとりのヒントが生まれて、“じゃあ明日これでやってみようか”というふうになっていったりしています。ずっとやってこられてきた皆さんは会話の中からアイデアが出てきたりするので、それは聞いてて面白いですね」

 隠しマイクで聞いてみたいような贅沢な時間。

「ほぼ下ネタですけどね。8割下ネタ、2割が真面目かな?って感じです。結構時間が時間なんで、“もうお酒を飲んでるのかなこれは?”っていうくらいのディープな下ネタ。まあお昼から始まっても同じような感じなんですけど」

 喋っていく中で打ち解けて、芝居の中の雰囲気も作られる。

「そうですね。作品の登場人物みたいに、みなさんあうんの呼吸で仲がよくて、連帯感が凄くあるんです。そこで居心地のいい環境を作っていただけていて、楽しめている気がします」

 今回で舞台は2本目。やはり映像での芝居とは違う舞台の芝居に戸惑う毎日。

「全然動けていないですね。空間を使うことに慣れていなかったりとか。やっぱりテレビの中では動きが規制されていたり、全部手に届く位置にものがあるはずなんですが、舞台ではそれが端から端までになったりするんです。いつもの感情ではここまでしか歩けないんだけど、舞台ではその3倍歩かなきゃいけないとか、そういうことにまだ対応できていないので、なるべく遠くへ遠くへ歩くんだ、という感じではやっています」

 映像とはちょっと違った相武紗季がみられそうだ。

「どうなんでしょう。下手くそだと思うんですよ。いま自分がやっていても“全然できてないな、下手くそだな”って思うんですけど、それでも挑戦させてもらっているので、ファンの方には下手くそなりに、慣れないなりに頑張っている姿が伝わればいいかなって今は思っています。そして初日の幕が上がってからも千秋楽まで、もっともっと完成度を上げていきたいと思っています。初日を見てがっかりした人には千秋楽を見てもらって、“頑張ったやんけ”みたいに思ってもらえるような。こんなこと言ったら怒られちゃいますかね(笑)」

(本紙・本吉英人)

『PRESS〜プレス〜』

【日時】2月17日(金)〜3月4日(日) 【会場】Bunkamura シアターコクーン(渋谷) 【料金】S9500円、A8000円、コクーンシート6000円 【問い合わせ】キューブ(TEL:03-5485-8886=平日12〜18時) 【脚本】生瀬勝久 【演出】水田伸生 【出演】明石家さんま、生瀬勝久、相武紗季、中尾明慶、丸山智己、音尾琢真、山西惇、温水洋一、八十田勇一、新谷真弓、小松利昌、大河内浩