劇団鹿殺し 菜月チョビと丸尾丸一郎が語る
劇団鹿殺し 菜月チョビと丸尾丸一郎が語る
4月20~29日の10日間、渋谷のCBGKシブゲキ!!で『PLAY PARK 2012~日本短編舞台フェス~』が開催される。演劇、ダンス、音楽、パフォーマンス、お笑いなどジャンルを問わず50組以上のアーティストが参加する。同フェスで実行委員会の一員として舞台裏を支えながらも演者としても参加する、劇団鹿殺しの菜月チョビと丸尾丸一郎にフェス開催の経緯、楽しみ方などを聞いた。
丸尾丸一郎(左)と菜月チョビ(撮影・蔦野裕)
『PLAY PARK 2012』は1プログラムにつき5~6組のアーティストがそれぞれ15~30分の短編作品を上演する。
菜月(以下、菜)「かつて大阪ショートプレイフェスティバル(OSPF)という、ひとつの舞台を使って1日にいくつもの団体が出るというイベントがあったんです。2005年に出していただいたんですが、それがとても楽しかったので、そういった形のものを東京でもやってみたいと実行委員長のウォーリー木下さんに相談しまして、今回実現に至りました」
このイベント、もともとは昨年3月18~20日に開催される予定だったが、東日本大震災により中止を余儀なくされた。
菜「2010年から企画は進行していたので、私たちにとっては3年越しですね。なんとか今回を成功させて、毎年続けられるイベントに育てていけたらいいなと思っています」
今回のフェスのコンセプトは!?
菜「フェスって、何かしらのテーマがあると思うんですが、今回は、さほど知らなくてもとにかく面白そうなものをこだわりなく集めました。OSPFもわりとそういう感じでした。私たちが維新派をちゃんと見たのもOSPFが初めて。そのとき私たちはダッチワイフを使ったパフォーマンスをしていたんですが、松本さんから“いいねいいね、あれどこで買ったの?”とか言っていただいたり、その後公演の推薦文を書いていただいたりということもありました。OSPFはとても刺激を与えてくれましたし、知り合った人たちのその後の活動も意識するようになって、劇団同士の成長にもつながったと思うので、今回もそういう場にもなればいいかなと思ってます」
こだわりがないというのがコンセプト?
菜「いま生で見るステージ、ダンスとか演劇が一番なんですけど、劇場に来てくれるお客さんがどんどん減っている。だけど各団体の頑張れることって、自分たちのお客さんに宣伝することしかないという頭打ちの状態なので、みんなで協力してシーンを盛り上げないとやばいぞって思うんです。なので今回参加していただいたみなさんというのは“みんなで集まって全体を盛り上げる”という主旨に賛同していただいた方々なんですね」
丸尾丸(以下、丸)「若い人たちにしたら、ベテランの方と同じ楽屋で出会えるということも凄く刺激になると思うんです」
このフェスの見方、楽しみ方を!
菜「何回か見に行こうとして、3回頭に浮かんだんだけど結局1回も見ていないみたいな、名前だけはずっと聞いたことがあるといった劇団をこの機会にお試しで見てみるというのがいいんじゃないでしょうか」
丸「好きな劇団とそういう劇団が一緒になっている日は絶対来るべきですよね。そして好きな人が散らばっていたら…全部見に来る(笑)。凄く演劇のことが好きな人は、ぜひ10日間来るということにチャレンジしていただければ(笑)」
菜「5000円のチケットで本公演を見る気はしないけど、他のも一緒だったら見てみようかなっていう団体を、この機会にチェックするのもいいかもしれません」
丸「やっている側としても30分の中に自分たちのいいところを密に詰め込んでくると思うので、判断するにはいい機会だと思います」
菜「短いと簡単にできそうな気がするかもしれないですけど、やる側にとってはかなりサバイバルなんです。しかも勝ち負けが分かっちゃう。前の団体より盛り上がっていたかどうかは肌で分かるんで、みなさん全力を注いでくると思います。ここでお客さんを増やすぞっていう主旨のイベントでもあるから、よそのお客さんを全力で奪いに来るので、その団体のエッセンスが見られると思います。ホントに嫌だったら2度と行くかっていう気持ちで拍手なんてしなくていい。逆に好きな劇団には大きな拍手をしてあげて、他と差をつけてやるみたいなことも面白い。好きな劇団がある人はそんなふうに楽しむのもいいと思います」
ちなみに鹿殺しはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか?
菜「『銀河鉄道の夜』をやります。この誰でも知っているストーリーを前張りをつけた男優を中心に。といっても攻撃的ではない前張りです。体ひとつでという意味ですね。演劇の一番の魅力である見る側の想像力と一体となると、世界のどこにでも行けるという楽しさに立ち返った作品になります」
丸「猫のアニメの映画があるじゃないですか。あの一番ファンタジーなやつをモチーフにしています」
菜「前張りの男たちがなぜか可愛い猫に見えてくるというミラクルを起こします。もとになったものはかつて劇場でやったことはあるんです。その時は、前張り姿を見たお客さんは最初は“ヒャー”ってなるんですけど、最後はなぜか普通に泣いて、銀河鉄道の夜の“僕らは素粒子だよ”というメッセージを受け止めて帰っていただけたようです。そんな不思議な現象をこの機会に体験してもらいたいと思ってます」
「見たいアーティストがいるのに平日の15時からじゃ…」とあきらめているサラリーマンの方も、ここはひとつ、勇気を出して会社には「外回り」と言い張ってCBGKシブゲキ!!に“潜入”してみてはいかがだろうか。
(本紙・本吉英人)
『PLAY PARK 2012~日本短編舞台フェス~』
【日時】4月20日(金)~29日(日)15時/19時30分 【会場】CBGKシブゲキ!!(渋谷) 【料金】前売り4900円/当日5300円 【問い合わせ】キューブ(TEL:03-5485-8886 出演アーティスト、各日プログラム等の公演詳細は〔HP〕http://playpark.info/)