SPECIAL INTERVIEW 神木隆之介 

映画『桐島、部活やめるってよ』

第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのデビュー作を『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八監督が映像化。主人公不在の物語で“脇役的主人公”を演じた神木隆之介を直撃!

 高校生最後の撮影作品となった本作は特別なものになった、と語る。

「実際に高校生でいる間に高校生役を演じることができたのは大きかったと思います。卒業してしまうと“高校の3年間ってこんな感じ”と分かってしまうけど、当時実際、僕にとって残りの高校生活は未体験、未知数でしたから。その瞬間の新鮮な感じを出すことができたんじゃないかな、と。それに、抵抗なく制服を着ることができましたし(笑)」

 とある高校の人気者・桐島が突然バレーボール部を辞めるという噂に翻弄される生徒たち。その波紋は、校内のヒエラルキーや人間関係を超え、さまざまな生徒の内面を表出させていく…。神木演じる映画部員・前田はいわゆる“下グループ”に位置する人物。“上グループ”たちの桐島騒動を横目に、自作のゾンビ映画撮影に奮闘する。

「前田役で大変だったのは…役作りでゾンビ映画を見たことですね(笑)。監督からジョージ・A・ロメロ監督の“〜オブ・ザ・デッド”系など10本渡されたのですが、実は僕、血が苦手で。けっこう苦労して見ました(笑)。それ以外で、それぞれ自分が演じる役の人物設定を書いて監督に提出する、ということをしたのですが、あれはすごくいい役作りになったと思います。僕の考えた設定では、前田は中学2年くらいまで“上グループ”にいたんです。それがある時『スタンド・バイ・ミー』を見て、映画ってこんなに人の心を動かすものなんだと感激し、そこから映画にハマって、いろいろなジャンルを見るようになり、最終的にロメロにたどり着いた(笑)。その過程で一時期、かすみと仲良くなって一緒に映画を見たりしていたのですが、高校と中学ってやっぱり違うので、前田は高校デビューならぬ出落ちしてしまった(笑)…というのが僕の考えた設定でした」
 実際に、高校内のヒエラルキーをリアルに感じたことはある?

「ありましたね。高2のころは、けっこうはっきりしてたように思います。なんで学校の中でそういうグループ分けができるのかというと、僕が思うに、同年代が集まると、その中で自分の居場所を探してしまうからじゃないかな、と。最初は、この人たちと一緒にいるとにぎやかで楽しいと思っても、だんだん価値観が違うことに気づいて、一番落ち着く人たちのところに収まって、グループが分かれていく。でもはたから見れば前田は“下グループ”ですが、彼は彼で毎日楽しいと思います。確かに桐島や宏樹たち上グループへのあこがれとか、自分たちは下という意識はあるだろうけど、自分なりに楽しい高校生活を送っているんです」
 前田がそれを証明してみせるクライマックスシーンは感動必至。

 上下だけでなく、男子と女子の違いも、物語に不穏な空気を醸し出す。神木目線で気になる女子はいる?

「この映画に出てくる女子ってけっこう怖い子が多いんですよね(笑)。強いていうなら、実果ですかね。一生懸命な姿の裏で寂しそうな目をするのが気になるかも。逆に苦手なタイプは…沙奈。ああいう感じで来られると、どう反応していいか分からないです(笑)」

 というかそもそも女子に話しかけるの苦手なんです、と照れ笑い。本作はそんな神木の俳優としての成長ぶりを見せつけられる一本でもある。地味な人物像をもってして観客の共感を引きだす“主役力”。若手キャスト陣のうち誰よりもキャリア豊富な神木が、完全にオーラを消し去っていることのすごさ。

「僕としては、そう言ってもらえるとすごくうれしいです。前田を見て“神木だ”って思われるのではなく、“神木だったのか!”と思われたら最高ですね。どの作品でもそうですが、俳優として、それが目標です」

 本作公開の後も、NHK大河ドラマ『平清盛』で源義経を務めるなど、ますます存在感を発揮してくれそうだ。
(本紙・秋吉布由子)

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『桐島、部活やめるってよ』
監督:吉田大八 出演:神木隆之介、橋本愛、大後寿々花他/1時間43分/ショウゲート配給/8月11日 より新宿バルト9他にて公開
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