【夏フェス】FRF12 ノエル・ギャラガーが「どこ行くんだよ!」

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一般にダンサブルなアクトがトリを飾る、フジロックの中日。2012年の夏は、渋いアクトがこの日のヘッドライナーに収まっていた。ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ。かつてオアシスでほとんどの曲のソングライティングを担当し、世界で歌われる名曲の数々を作り出したノエル・ギャラガーのソロプロジェクトだ。ノエルの登場を待つ会場からは「ノエルー!」という黄色い声に交じって、「アニキー!」という野太い声も聞こえてくる。

ステージに現れたノエルは、ギターを手に取りながら「いい時間を過ごしてるかい?」と、オーディエンスのご機嫌をうかがい、『It's Good To Be Free』ををプレー。オアシスのナンバーだ。今年に入ってから行われた2度の来日公演でもオアシスの楽曲を披露しているだけに、この日もいつもどおりのペースで楽曲を重ねていく感覚だ。きっと彼は、フェスだろうが、日本武道館だろうが、どんなに小さなライブハウスだろうが、同じ熱と同じ距離感を持って臨むのだろう。

『Everybody's on the Run 』、『If I Had a Gun...』『The Death of You and Me』など、ソロプロジェクトの楽曲に合わせて合唱が起こるなかで、合唱のボリュームがぐっと下がったのが、再びオアシスの名曲『Supersonic』をプレーした時だ。オアシスとは別の、スモーキーな『Supersonic』にオーディエンスの多くが静かに体を揺らしながら聞き入っているように見えた。

ノエルの人となりを感じさせるMCまでも、いつもどおりだ。この日は、「この曲をマンチェスター・シティ(ノエルが応援するサッカーチーム)に捧ぐ」と、『AKA... What a Life! 』をプレー。その他にも、ノエルに声をかけ続ける女性に向かって、「何? 俺と結婚してほしいの?」というユーモアのある会話が飛び交う、来日公演でも聞かれたやりとりも会場をほっこりさせた。 

極めつけは、セットも終盤に差し掛かった時。おそらく終演後の混雑を避けようと早めに退出準備を始めたオーディエンスに、「どこ行くんだよ!これからすごい良くなるところなのに! 信じられない!」と、呼びかけたシーン。皮肉めいたMCだが、ノエルの表情はそんなオーディエンスを温かく送り出しているように見えた。

アンコールでは、ソロ曲のほか、『Whatever』、そしてこれを聞かずにはノエルのライブに行ったとは言えないといっても過言ではない『Don't Look Back In Anger』と、詰めかけたオーディエンスが聞きたかったであろうオアシスナンバーをしっかりとプレーした。

最初から最後まで余裕たっぷりで、聞かせたいものを聞かせ、聞きたいものを聞かせて、来たお客さんをみんな喜ばす。そんなエンターテインメントシップにあふれたステージは、現代が誇るトップソングライターで、"兄貴"であるノエルの大きさを感じさせた。