鈴木寛の政策のツボ 第十九回
京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されるという、日本全体にとって大変喜ばしいニュースがありました。山中教授、教授のご努力と長年支えてこられたご家族、研究環境を応援してこられた京都大学はじめ関係者の皆様に心から御礼とお祝いを申し上げたいと思います。私も京都大学iPS細胞研究所設立をはじめ、再生医療の実現化に力を注いできた身として、山中教授の受賞を大変嬉しく思っています。
政権交代以降、我々は一貫してiPS細胞等の研究をはじめとする医療イノベーションの推進に力を入れてきました。2010年6月に閣議決定された新成長戦略では「ライフイノベーションによる健康大国戦略」を7つの戦略分野の一つと位置づけ、2011年1月には内閣官房に「医療イノベーション推進室」を設置しました。この医療イノベーション推進室は、産学から広く人材を集め、オールジャパンで医療イノベーションを推進する体制を整え、国際競争力を持った日本発の医薬品・医療機器・再生医療などを次々と生み出し、世界に誇れる「医療イノベーション」を起こすことを目標にしています。
その中でもiPS細胞等の研究については、早期の再生医療の実現化を図るべく、基礎研究、臨床、事業化の3フェーズに分けて各関係省庁と連携して予算を大幅拡充することに努めてきました。iPS細胞を用いて、機能不全になった細胞、組織や臓器の一部を修復する再生医療に加え、iPS細胞から作った細胞や組織などを創薬の基礎研究の材料に使ったり、治験の際の有効性や安全性の事前チェックに用いたりと、創薬プロセスのイノベーションの可能性も大いに期待できます。
医療イノベーションを起こす上で大切なことは、基礎研究と人材育成をしっかりと行うことです。山中教授のノーベル賞受賞は、まさしくこの2つの大切さを裏付けています。私も医療イノベーション実現のためにこれからも引き続き全力を尽くしていきたいと思います。
(元文部科学副大臣・参議院議員)