吉川晃司 SAMURAI ROCK
最終回 スピリッツ・オブ・ロック!
2010年の4月のスタートから3年半。ついに、番組が幕を下ろす時がやってきた。最後の収録には、終了を惜しむ声がたくさん寄せられた。「充実した時を過ごせました」と、冒頭であいさつした吉川も感慨深げだ。
音楽番組であったはずが、震災の後から内容は激変。メインとなる話題は、原発、放射能、政治と、社会派に。「震災以降、自分のなかでもまるで違ったんでしょうね。ロックの番組が、どんどん社会派番組に変わっていって申し訳なかった」と苦笑いしつつも、「スピリッツ・オブ・ロック——。ロックの精神はあった」と、胸を張る。
この日の話題も、“黒い花火”に始まり、先日幕を下ろしたミュージカル『SEMPO〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜』、開催が決まった2020年の東京五輪、五輪と復興の問題、集団的自衛権と振り幅が広い。ほっこりトークで癒されたと思えば、背筋をしゃんとさせられ、日本の未来に想いを馳せたりと、聞くほうの感情も大きく揺さぶられる。収録も終盤に差し掛かると「言い始めると、最終回なのにキリがないね」と、吉川。いつも以上に言い足りないと見えて、「エネルギーを貯めてまたどこかで再開したい。この番組はよく頑張ってくれました。言いにくいこともかなり言わせてもらった。ほんとうに残念」と、しみじみと語った。
終了後、番組は吉川にとってどんな存在だったのかと尋ねた。「緊張感であるとか、責任だとか、いろんなものを一番感じる時間だったね。公共の電波を通じて届けるわけだから、その伝え方を含めて、一言に大きな責任がともなう。だから、いろいろ調べたり、メディアはこう伝えているけどもっと正しい情報があるんじゃないかとか、専門家に電話して聞いたりしてさ。もちろん、自分自身が知りたいという気持ちが基本としてあるんだけど、この番組や番組を聞いてくれる人たちがいるからこそ、そういう行動を後押したし、それによって育てていただいたという気持ちがあるね」
第1回目の放送で吉川は、「言いたいことを言い、かけたい音楽をかける番組にしたい」、「たとえ非難ごうごう雨あられだとしてもですね、この“エッジ・オブ・ハート”、四角ばった、摩擦係数の高い展開をしていきたいですね。自分なりの価値観……素敵だなと思うことをいろいろ話していけたら」と、意気込みを語っていた。振り返ってみれば、社会派に変わったとはいえ、結局最初からまったくブレてなかった。スピリッツ・オブ・ロックを語り、伝えることを貫いてきた、吉川の『ロックの殿堂』だった。
1.吉川晃司 「DA DA DA」
最新アルバム『SAMURAI ROCK』に収録。
2.吉川晃司 「光と影」
『SEMPO』に書き下ろした曲。
3.The Beatles 「I Want To Hold Your Hand」
東京五輪が行われた1964年の大ヒット曲。
4.吉川晃司 「アクセル」1996年発表のシングル。
5.U2 「SUNDAY BLOODY SUNDAY」
「U2は、反戦、平和のメッセージを込めた曲をたくさん書いてる」と、代表曲を。
6.吉川晃司 「あの夏を忘れない」
広島の小学生と作った楽曲を選曲。
このコラムは、ラジオ番組『D.N.A〜ロックの殿堂〜』吉川晃司“SAMURAI ROCK”とコラボレーションしています。この番組では激動の時代を駆け抜けてきたミュージシャンたちが週替わりでDJを務め、吉川晃司は毎月第4週に登場します。JFN系列全国14局で放送中。※東京での放送はありません。ポッドキャスト版でお楽しみください。(http://www.jfn.co.jp/dna) ※番組終了と吉川さんの“メンテナンス”にともない、連載も今回が最終回となります。長きにわたってのご愛読ありがとうございました。