江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
堀之内(ほりのうち)
人並み外れて粗忽者の亭主。片方草履で、片方下駄を履き、足が一本短くなったと騒ぎ出すほど。女房が「片方脱げば同じ高さになる」と教えても草履のほうを脱いでしまう。さらに水をザルで汲もうとしたり、洗った顔を手ぬぐいと間違えて猫で拭こうとしたり、尋常じゃない慌て者ぶり。
そこで女房、堀之内の御祖師様に願掛けに行くといいと勧めてみた。それだ!ということで早速家を出るが、神田から新宿方面に行かなければならないところを、反対の両国方面に行ってしまい、結局はさっき出た自分の家に戻ったり、人に道を聞こうと思ったがどこに行くのか忘れて「私はどこに行くのでしょう」と聞いたり、ここでも粗忽ぶりを発揮。どうにかこうにか御祖師様に着いたもののお賽銭を上げるのに、財布ごと投げ入れてしまう始末。仕方がないので、茶屋の店先を借りて弁当を食べようと背負ってきた風呂敷包みを開けると、そこには弁当ではなく枕が。よく見ると風呂敷だと思ったものは、女房の腰巻。怒った亭主、帰るなり女房に「俺のことをそそっかしいと言うけど、お前のほうがよっぽどそそっかしい」と文句を言うも女房はニコニコ笑いながら「お前さんの家は隣だよ」と。うっかり家を間違えた。家に戻ると「お前さんがお弁当と枕を間違えて持って行っちゃったんじゃないか。腰巻がなくて、困ったよ。ところで、枕と腰巻は」と聞くと「あっ、忘れてきた」。やれやれ、願掛けの甲斐無く、ちっとも粗忽は治っていない。
女房に頼まれ、子どもを湯に連れて行くことになったが、そこでもお風呂から上がって着物を着たばかりのよその子どもの着物を脱がせたり、着物を着たまま湯船に入ろうとしたり…。あげくに子どもの背中を洗おうとした時「なんだお前、こんなところに彫り物なんかしやがって!この野郎」。ポカンとやったのがなんと鳶頭。「痛えな、なにしやがんだ!」。「すみません。で、家の子どもはどこに…」。「向こうだよ」。「あいすみません」。今度こそ子どもの背中を洗いながら「お前のせいで怒られちゃったよ。しかしなんだな、お前随分肩幅が広くなったな」。「おとっつぁん、羽目板洗ってらぁ」