都知事選2月9日投開票 問題山積の都政の舵取りは誰に任せればいいのか
猪瀬直樹前知事の辞職に伴い行われる東京都知事選。1月23日に告示され、新人16人が立候補。以来、都内各地で激しい選挙戦が繰り広げられている。
猪瀬氏が辞職を表明したのが昨年12月19日。猪瀬氏は2012年末に行われた都知事選で史上最高の約434万票を獲得して都知事の座に就いた。昨年9月には2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致に成功した。その人気と実績から、よもやこんなに早く都知事選が行われることになるとは誰も思っていなかっただけに、各陣営とも出馬に向け駆け足の準備となった。2020年東京五輪への対応や少子高齢化対策、脱原発などを争点はさまざま。2月9日に投開票が迫った選挙戦を探る!!
選挙前から有力候補と目されていたのが、元厚生労働大臣の舛添要一氏、元首相の細川護煕氏、元日弁連会長の宇都宮健児氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏の4人だ。
今回の都知事選の主な争点は、細川氏を応援する小泉純一郎元首相の存在から「脱原発」という向きもあるが、東京は2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックや首都直下地震の備え、社会保障など課題が山積しており、ワンイシューというわけにはいかない。もっともそんな状況すら吹っ飛ばしてしまうのが小泉氏の小泉氏たる所以なのだが…。
各社の世論調査では舛添氏がリードという結果も出ているが、全体の4割以上が投票先を決めていないという調査結果もあり、当日まで予断を許さない状況だ。
その舛添氏は自民党都連と公明党都本部が推薦。民主党の支持基盤である連合東京の支援も受けており、安定した選挙戦を展開している。
元厚労相である舛添氏は告示後、JR新宿駅西口での第一声で「都知事の仕事は都民の命と財産を守ること。全力を挙げて災害に打ち勝つ街をつくりあげたい。2020年には世界の人々に最高のおもてなしをして、史上最高の東京五輪・パラリンピックを成功させたい。また、母親の介護をした経験から医療や介護を充実させたり、待機児童を一人でも減らすなど子育ての環境整備にも力を入れ、厚生労働相の経験も生かして東京を世界一の福祉都市にしたい。こうした改革を国に先駆けてやることで、東京から日本を変え、もっと素晴らしい国にしていく」と訴えた。
また立候補前に日本記者クラブで行われた会見や本紙のインタビューでも「原発だけが東京の問題ではない。防災、社会保障、景気問題もやるべき」と語ったうえで、「原発問題は科学技術の発展をみながらやっていくべき」という見解を示している。
舛添氏の強みは厚労相としての実務経験だ。在任時は年金記録問題や産婦人科や救急医不足の問題、新型インフルエンザ、毒入りギョーザ、原爆訴訟……と数え上げたらきりがないほどの問題が次から次へと発生し、その解決に取り組んできた。
喫緊な課題が多いだけに、その実務経験は十分に投票の動機となるだろう。
また、元首相ということもあって警備が厳しい細川氏に対して、舛添氏は銀座、池袋といった繁華街でも多くの有権者とのスキンシップも頻繁に行えており、有権者との距離の近さを感じさせている。
今回の選挙で一番のサプライズは細川氏と小泉純一郎元首相との“合体”だ。
昨年から各地で「脱原発」を訴える小泉氏。安倍晋三首相にも「総理が決断すればできる」とメッセージを送るなど、その主張は本物だ。細川氏も時を同じくして「原発は倫理の問題」と主張。この2人の元首相が都知事選という大きな選挙で結びついた。一時は小泉氏自身の出馬も噂されたが、細川氏が出馬し、小泉氏が全面協力という形で落ち着いた。
細川氏の演説には常に小泉氏が応援に立つ。演説では「脱原発」に多くの時間を割き、小泉氏得意のワンイシューの選挙戦を繰り広げている。
前回の都知事選で宇都宮氏を支援した人の中には「現実的に脱原発を願うなら」と、より当選に近いと思われる細川氏に乗り換える人もいるようだ。
しかし選挙戦が始まってから事務局長が退任するなど、旧日本新党系グループらの主導権争いが表面化するなど懸念材料もあるようだ。
田母神氏は保守票をどこまで掘り起こせるか…
田母神氏は元都知事で日本維新の会共同代表である石原慎太郎氏が“個人的”に支援している。石原氏は23日と30日に応援演説を行った。石原氏は2011年の都知事選では約260万票を獲得。このうちどれだけの票を田母神氏が獲得できるかが問題だ。
田母神氏は元航空幕僚長という経歴から自らを「危機管理のプロ」と強調。「東京を守る! 東京を育てる! 東京を創る!」をスローガンに、五輪に備えた危機管理態勢の確立を訴えている。
また有力候補の中でも明確に原発に賛成の立場を取っているのは田母神氏だけ。加えて、今回、保守色を最も鮮明に出しているのは田母神氏とあって、保守系の有権者の支持は多いようだ。
昨年の参院選からネット選挙が解禁された後、初めての都知事選なのだが、田母神氏はネット利用者の中では大きな支持を得ているようで、そういった層が実際に投票所に足を運べば、大きく票を伸ばすことも可能だろう。
「脱原発」にこだわらず幅広い政策の宇都宮氏
宇都宮氏は前回の都知事選では約97万票を集め次点。「脱原発」を願う有権者が都内には多くいることが露呈した。
猪瀬氏が辞職し、都知事選が行われることになり、真っ先に出馬を表明したのが、この宇都宮氏だった。前回に引き続き、共産党と社民党が推薦している。
脱原発陣営からは細川氏との一本化を求める声もあったが「脱原発は重要だが都政は多くの争点がある。また安倍政権の憲法改悪への態度も重要で、それら抜きに原発だけで一本化はあり得ない」と一本化には応じず立候補した。
どうしても「脱原発」に目がいってしまいがちだが、「世界一働きやすい都市へ」という主張を掲げる宇都宮氏は、細川氏とは一線を画し、現在東京都が抱える、高齢者や待機児童を中心とした福祉問題、ブラック企業対策、貧困問題など多岐な政策を掲げている。
また猪瀬氏の徳洲会問題にも徹底的に追及する姿勢を見せている。
家入氏はネットを駆使し全く新しい選挙戦を展開
今回は新人16人が立候補したが、都知事選といえば欠かせない人たちがいる。
発明家のドクター・中松氏は今回で7回目の都知事選出馬となる。中松氏は「誰がお金にきれいなのか、誰がまじめなのか、誰が五輪に最適なのか考えてほしい」と訴える。また政治団体代表のマック赤坂氏は鬱病対策や減税などを掲げ、3回連続の出馬を果たした。
しかしなんといっても今回大きな注目を集めているのは起業家の家入一真氏だろう。第一声も街頭に立つことはせず、渋谷のカフェでスマートフォンを使い、動画配信サイトで有権者に支援を訴えた。その後も街頭に立つことはなく、ツイキャスを使ってメッセージを発したり、ツイッターで「僕らの政策」を募集し、それを政策に反映させていくというスタイルを取っている。
昨年の参院選からネットを使った選挙運動が可能となったが、家入氏のスタイルは今後のネット選挙を占うものになるかもしれない。