一度見たら次も見たくなる。ヤミツキ「パラドックス定数 第32項『昭和レストレイション』」

 作・演出の野木萌葱は「三億円事件」「グリコ森永事件」「東京裁判」といった戦後の未解決事件や歴史上の出来事、「江戸川乱歩」「大杉栄」といった歴史上の著名人をモチーフとし、フィクションとは思えないリアルなストーリーを作り出す。その緻密な作品と俳優たちの迫真の演技に病みつきになる。

 もちろんそういったテーマの作品ばかりではない。ただ一貫して描かれているのは、アウトローな生き方をせざるを得ない男たちの刹那的な生きざま、運命に翻弄され追い込まれ堕ちていく時の虚無感やギリギリ感といった感情。そして劇場を支配する、呼吸もためらわれるほどの重苦しさ(これはむろんいい意味で)。

 今回モチーフとなっているのは「二・二六事件」。腐敗した政治状況を憂い、現状を打破すべく青年将校たちが立ち上がったクーデター未遂事件。もうすでに手がけていてもおかしくなかった題材だ。

 今回はベテラン俳優の近藤芳正が客演。近藤がどのような役を演じるかは幕が開いてからのお楽しみ。またふだんはコメディー色の強い作品への出演が多い堀靖明も初出演。手練手管の近藤と、ある意味“取り扱い注意”な堀という異質な存在を加え、どのような作品に仕上がるのか注目だ。

【日時】5月16日(金)〜25日(日)(開演は火水金19時30分、木日15時、土14時/19時。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)【会場】三鷹市芸術文化センター 星のホール(三鷹)【料金】全席自由・日時指定・整理番号付 前売3000円、当日3200円/高校生以下 前売・当日とも1000円【問い合わせ】三鷹市芸術文化センター(TEL:0422-47-5122=10〜19時 [劇団HP]http://www.pdx-c.com/)【作・演出】野木萌葱【出演】植村宏司、西原誠吾、井内勇希、生津徹、堀靖明、小野ゆたか/近藤芳正