ダイノジ 大谷ノブ彦 カタリマス!(裏)第2回 ”楽しいことをやることで抵抗したい”誕生日
42歳になりました。
誕生日は6月8日。今年もイベントをやって過ごしました。イベントは、ここ10年ぐらい毎年やっていて、バンドを集めてロックイベントをしたり、DJしたり、漫才ライブだったりいろいろです。 なぜこんなイベントをやってるかというと、もちろん楽しいっていうのもある、でも本当は腹が立ってるからなんです。
この日は、2つの凶悪な事件*が起きた日。テレビをつければその話題になったりして、むかつくし、腹が立つ。子供が巻き込まれる事件は特にです。ただ、それに対して怒りをぶつけるんじゃなく、楽しいことをやることで抵抗したい。許しがたい、あってはいけない事件や事故、そして悲劇に対して、人が抵抗できるのは逆のイデオロギーで振り切ることだと思うんです。
なぜそう考えるようになったかというと、沖縄へ営業に行ったことがきっかけです。エアギターをみんなでやろうという参加型のネタだったんだけど、あんまり反応が良くなくて。スベったなあなんて思いながら帰ろうとしたら、お客さんが「良かった!」「面白かった!」って寄ってくるの。シャイな人ばかりが集まっちゃったのかなってスタッフに聞いたら、「沖縄の人はもともとすごくシャイなんですよ」って。楽しくお酒を飲んで歌って踊ってっていうのが、僕が持っていた沖縄の人たちのイメージでした。でもそれって「そうじゃないからこそ、意識してやってるんだ」って。それ聞いたら、なんかジーンとしちゃってね……。そうじゃないからこそ自分たちから乗ってく、能動的にやっていく——。シャイだからこそ見つけたやり方というか、生きていくための知恵のひとつだったんだって。
つらくて悲しいとき、言葉を掛け合ったり、励まし合ったりしていくのも人の強さだし権利だと思う。それに加えて、周りを巻き込んで楽しい空気にしていくこともまた、人間に与えられた権利であり、武器なんじゃないかなって思うんです。僕は毎年3月11日に漫才イベントをやっているんだけど、これも笑い飛ばせっていうのじゃなくて、人は意図的にそうなろうとしたらなれるって、信じてるから。楽しいことをやることで抵抗したいんです。理不尽な不幸に対して。
そんな思いでイベントをした42歳の誕生日、息子が部屋に誕生日祝いのデコレーションをしてくれました。こんなふうに祝ってもらったことがなかったから、うれしかったなあ。その前日、一緒に銭湯に行っていろんなことを話したんだけど、「誰かを喜ばせる」ってことって大事だって思ってくれたのかもしれない。自分がどんな父親でありたいかなんてよく分からないし、思ってもそうなれないのも分かってます。ですけど、こういうことが一つひとつ重なっていったらいいんじゃないかなって思ってますね。
今週の「キキマス!」では、ゲストのみなさんにお父さまとのエピソードや心に残った言葉などを伺っています。今日11日はマラソンの高橋尚子さんと瀬古利彦さん、12日には島田洋七師匠も来てくれます。いつか僕もそんなふうに思ってもらえるのかなあ……。「父と子の感動ストーリー」、ぜひお聞きください。
*附属池田小事件、秋葉原通り魔事件