江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 天災(てんさい)

ネタあらすじ編

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。



 長屋の八五郎は短気で喧嘩っ早く、すぐ手を出すことで有名。夫婦喧嘩をして女房に手を出したかと思うと、それを止めに入った実の母親にまで手を上げる始末。それを聞いたご隠居が、長谷川町新道に住む心学者・紅羅坊名丸の所に精神修行をしに行くように諭す。先方に着き、隠居からの紹介状を読んだ名丸は「お前さん、ずいぶんと乱暴な性格で、女房や母親にまで手をあげるらしいな。でも短気は損気。堪忍のなる堪忍は誰もする。ならぬ堪忍するが堪忍。孝行したい時には親はなし」と諭すが一向に納得がいかない様子。そこでさらに「では、道を歩いている時に小僧の打ち水が着物の裾にかかったらどうする」と聞くと八五郎「決まってら、小僧をぶん殴って、その主人の家に乗り込んでやる!」。「同じく歩いている時に屋根から瓦が落ちてきたら?」「そりゃ、その家に殴り込んでやる」「でも、その家の人は関係ないぞ。瓦が勝手に落ちてきたんだ」「そんなことは関係ない」。と聞く耳持たず。そこで名丸先生「では、だだっ広い原っぱににわかの雨。全身がずぶ濡れになったら?」「傘をさす」「傘は持ってない」「じゃ、軒下で雨宿り」「四方原っぱで、家も木もない」「…。相手が天じゃ、喧嘩はできねえな」とついには降参。「そういうことだ。だから水をかけられても、瓦が落ちてきても、これみな天災と思えば腹も立つまい。すべては天の仕業と諦めるのだ」。なんだかよくわからないが、妙に納得した八五郎。「なるほど。全部お天道様のせいだと思うと腹も立たないか。いいね。これからは天災でいかせてもらいます」と調子よく帰っていった。さて、長屋に帰るとなにやら騒がしい。女房に聞くと隣に住む熊五郎が新しい女を連れ込んでいるところに、前の女房が戻ってきて大喧嘩になっているらしい。ここは一発天災を広めるチャンスとばかりに、仲裁に乗り込みに。「やいやい、広い野原を歩いていると、にわか雨が降って、小僧が水をまいたんだ。そしたら小僧が屋根から降ってきて」としっちゃかめっちゃか。それでもなんとか「だから、それは天災だと思えば腹も立たねえだろ?」。すると熊五郎「天災? いや、俺のところは先妻でもめている」