松田翔太 × 前田敦子 話題の共演で描く”ミステリアスな男女関係”!

SPECIAL INTERVIEW 映画『イニシエーション・ラブ』

甘く切ないラブストーリーが、ラスト5分ですべて覆る!? ラスト2行のどんでん返しで話題を呼んだ乾くるみの大ヒット小説を、堤幸彦監督が映画化。松田翔太、前田敦子が“ごく普通の恋人同士”を演じながらも見る者を愛の謎に引きずり込む!

2人を引き付けた「堤マジック×仕掛け」

smm01.jpg—2人が本作の出演を決めた一番の理由とは?

松田翔太(以下:松田)「僕は、堤さんが監督をされるということと、この映画が持つ仕掛けの面白さ、この2つに同時に引かれましたね。原作の小説も面白かったし、台本もすごく気に入りました。実は15歳のとき監督にお会いしたことがあるんです。当時、堤監督の作品でデビューするかもしれなくて。結局その作品は無くなり僕もその後留学して、デビューは違う作品になりましたけど、お会いしたときから堤監督の作品はずっと拝見しています。監督の作品はすごく好きなタイプなんですよ。エンターテインメントであっても商業路線から少し離れているというか。まっすぐな感じがするんです。映画だけでなく連続ドラマでも正直にアートを表現しようとしている感じが、いつも刺激になっていました。そんな堤監督が、こういう仕掛けのある面白い映画を撮るというので“監督はきっとモチベーションが高いだろうな”と思ったんですよ」
前田敦子(以下:前田)「私がこの映画のことを聞いたのが去年の夏でしたね。そのとき出演していた舞台を見に、監督が来てくださったんです。そのときに“ちょっといい話があるんだけど…”って(笑)。それから、あれよあれよという間に形になって、出させていただくことに。私はもともと堤監督が大好きなので、監督からのお話ということで、ただもうそこに乗っかったという感じです(笑)。去年の『エイトレンジャー2』や、グループ時代のミュージックビデオでも堤監督とご一緒させていただいているので、作品はもちろんですけど、ご本人もすごく素敵な方だと知っていましたから。堤監督がこういう作品を撮るというのが新鮮な感じがして、それがまた楽しいだろうな、と思ったんですよね。監督は“現場を楽しまなきゃ意味がない”という方で、基本的に現場のテンションが高いんです(笑)。それが独特で、楽しいんですよね」
松田「撮影現場が屋外でもスピーカーが置いてあって、いつでも監督が“入って”くる(笑)。いつも一緒にいてくれる感じがしますよね」

松田翔太&前田敦子の恋愛観とは!?

smm02.jpg—2人の演技の息がぴったりと合い“ごく普通の恋人同士”を丁寧に演じながらも、かすかに不穏な予感をはらませる繊細な演技が見事。監督からはどんな演出が?

松田「監督とは、女性や恋愛に対する感覚が近いというか、男としての考え方が自分と合っている感じがしました。だから監督の演出や言葉に感情移入しやすかったです。演出といっても具体的にどうこうということではなくて、撮影期間中、普通に会話したり食事をしたり、一緒に過ごすなかで自然と監督の考えが入ってくるというか。一緒に現場にいることそのものが演出となっていたのかな、と思います」

—東京で働くことになるが、マユのために遠距離恋愛を続けようと懸命になる鈴木。そんな鈴木に愛らしく甘えるマユ。

前田「マユの場合は、基本的に堤監督の理想でできているキャラクターなんです」
松田「“私の”じゃないの?」
前田「私じゃないですよ。マユみたいな気持ちは全然ないです(笑)。理想としては、男の人にずっと甘えてたいという気持ちはありますけど…だめですか?」
松田「いや、そんなことはないです(笑)。原作のイメージとは別に、僕もマユ像を想像したんですけど、それはもう完全に前田さんなんですよね。僕の中でマユと前田さんを分離して考えることはできないですね。マユであり前田さんであり(笑)」
前田「でもこれまで演じた役の中でもマユは異色ですね。ただ私も人間的には全然違うけど、ああいう感じだと思います」
松田「いや前田さんはもっと人間らしいですよ。特に最後のシーンの、マユのあの感じは、もう…(笑)」

—最後のマユがどんな感じなのかは、劇場でのお楽しみ。一方、誠実にマユを愛していた鈴木も、複雑な心理を見せて観客を驚かせる。

松田「僕自身は、ごく普通の青年を演じるのが初めてに近かったので、今回は自分のいいところも悪いところも抑えながら芝居ができたというか、欲を持たずに芝居ができたのは良かったと思います。演技の中でテクニカルなことを意識したり、俳優としてのキャリアの中で、この映画でどういう印象を出したいかを考えるべきときもあるんですけど今回、鈴木という人間を演じるにあたって、そういうのは要らなかった。それがすごく良かったんですよね」

—遠距離恋愛を続けているうちに東京で出会った女性に心ひかれてしまう鈴木。やはりこれも“ごく普通”?

前田「一般的に男の人にはあんなところがあるんじゃないかと思います。その人にとって魅力的に映る女の人がいれば、気持ちが動くことだってあるだろうし」
松田「監督はよく“結局は出会った順でしかない”と仰ってましたね」
前田「よく仰ってました」
松田「どれだけ魅力的な人と出会っても人は結局、出会った順でしか物事を考えられないし進められない。鈴木にとっても、そこは歯がゆい部分だし、切ない部分でもある。でも、どうしようもないんですよね」

—今回、恋人同士を演じてみて改めてお互いの印象は?

松田「前田さんの演技はすごく繊細で、いろんなところをキャッチしてくれる。自分が持っているアイデアを一方的に押し込んでくることがないから、セッションになるんですよね。それがあるのとないのじゃ、ぜんぜん違う。前田さんのような役者さんとだと、現場で“生んでる”感覚を共にできるんです」
前田「松田さんとは、お芝居のことを特に話し合ったりする必要が無かったというか、前々からお互いに分かっていた感じがしました。その場その場でお芝居をしていても会話が成立できているので、キャッチボールがすごくしやすかったですね」
松田「やっぱり堤監督が“ビッグ・ダディ”というか(笑)、現場のボスとして中心にいてくれるので、僕らは安心して自分たちの芝居ができた。生の舞台と違って、その画角のなかでどれだけできるかというのが映画の面白さでもある。だから堤監督の世界に参加していることがまずうれしいし、監督のイメージにどれだけ近づけるか自分なりに考えるのがすごく楽しいんです」
前田「みんなで一緒に作っている、という感覚が、映画が好きな理由の一つなんですけど、今回は特にそれが強く感じられた気がして、本当に楽しかったです」

—映像化不可能と言われた原作。完成した作品を見て感想は?

松田「すごくオシャレだと思いましたね。こんなにオシャレな恋愛映画はないな、と。いわゆる“壁ドン”とかはありませんけど(笑)、そこがむしろいいと思います」
前田「そういうこと言っちゃ…(笑)」
松田「確かにこの映画は、今流行りの恋愛映画とは違うし、物語も何か特別な事件があるわけじゃない。でも、もっと核になる部分で映画が動いているという感じが、メジャーなのに単館系みたいなオシャレさがあると思うんですよね」

松田翔太ヘアメイク・ 伊藤聡/スタイリスト・澤田石和寛(SEPT)衣装協力・ポール・スミス(ポール・スミス リミテッド 03-3486-1500)前田敦子ヘアメイク・ 小倉康子/スタイリスト・安藤真由美 

だます? だまされる? 映画に恋する2人

—物語の舞台となる80年代の様子も見どころ。2人にとってはなじみの薄い時代だが…。

松田「ファッションは案外、普段でもいけるんじゃないかと思いました。ハイファッションでリバイバルされていたりするし、そんなに古いことは気にならなかったですけどね」
前田「柄とかは80年代ならではだけど、変な古臭さはないですもんね」
松田「でも僕、公衆電話のシーンで親指でボタンを押してたんですよ。今、ケータイやスマホで親指を使うじゃないですか。公衆電話なんてここ何十年使ってなかったけど、ああこうやってたんだな、と思い返しました」
前田「マユが輪ゴムを編んでいるんですけど…あれは、実際に流行ったのかな? たぶん私の母世代の話なんですけど、何が懐かしいのかすら分からなくて。あ、ハイレグ水着とか? 確かに今では着ないですね」
松田「僕はワンピースのほうが好きですけどね」
前田「ビキニより?」
松田「そうだね…って、まあ、あまり言わないでおく(笑)。思えば“海辺で水を掛け合う”なんてシーンを撮るのは、今回が最初で最後でしょうね。あんな典型的なカットを撮れるとは思わなかった(笑)」
前田「いい思い出になりました(笑)」

—80年代感を盛り上げるのが劇中で使われる森川由加里の『SHOW ME』やオフコース『Yes-No』、C-C-B『Lucky Chanceをもう一度』などなつかしの名曲たち。

松田「劇中で使われた80年代当時の曲も芝居を助けてくれたし、映画を盛り上げてくれますね。あの時代のヒット曲って、クラシックのように今後ずっと、いい曲として残り続けるんだろうなと思う。この映画では、単に劇中で使われているというだけじゃなくて、この映画自体が思い出であるかのようなニュアンスを醸し出しているんですよ。上手い、というかズルい(笑)」
前田「最近だとハリウッド映画の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が、70年代のヒット曲を使っていて話題になりましたよね。この映画も素敵なサントラができたらいいな」

—甘く切ない思い出を重ねたマユと鈴木の恋の物語。しかしラスト5分、すべてが覆る衝撃が待ち受ける…。いわゆる“衝撃のラスト”系の映画で驚かされるのは好き?嫌い?

松田「大好きです」
前田「大好きです!『鑑定士と顔のない依頼人』とか。私、完璧にだまされました」
松田「ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品でしたよね。確かに面白かった。不条理なラストということだったら僕は『ノー・カントリー』が好きですね」
前田「この映画も、みんなを驚かせられるかな?」
松田「壮大なシチュエーションのどんでん返しではないけど見方によっては、本当にシンプルにあの年齢の男女の恋愛を描いているだけともいえるのに、すごいミステリーになっているという驚きがあると思う」

—もしかしたらどんな恋愛にも“謎”は隠されているのかも…。
前田「私は自分の事は全部知ってもらいたいですね。相手には全部、正直に話しちゃうと思います。嘘をつきたくないし、つかれたくないから」
松田「けど結局のところ男女はそもそもが違うというか…完全に同じ意見にはならない気がする。正直、女性というだけで、僕にとっては謎です(笑)」
前田「ふふふ(笑)」
(本紙・秋吉布由子)

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『イニシエーション・ラブ』

監督:堤幸彦 出演:松田翔太、前田敦子、木村文乃他/東宝配給/5月23日より全国東宝系にて公開 http://www.ilovetakkun.com/http://www.ilovetakkun.com/
© 2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員

Side-A:1980年代後半、バブル最盛期の静岡。就職活動中の大学生・鈴木は、友人に誘われた合コンで、歯科助手のマユと運命的な出会いを果たす。奥手で恋愛経験がなかった鈴木だが、マユと出会い彼女に釣り合う男性になろうと自分を磨く決意をする。

Side-B:就職した鈴木は東京本社に転勤となり静岡にマユを置いて上京。マユに会うため東京と静岡を行き来していたが東京本社の同僚・美弥子の存在に心揺れ始め…。