江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 二階ぞめき(にかいぞめき)
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
ある大店の若旦那、吉原通いが大好きで、一日と空けず吉原へと繰り出していた。堅物の大旦那はカンカンで、とうとう「勘当だ!」とまで言い出す始末。心配した番頭が若旦那へ、「そんなに好きな女がいるのなら、身請けをして囲えばいかがですか。そこへ3日に1度ぐらい通えばよろしい」と言うと「女なんてどうでもいいんだよ。俺はあくまで吉原遊廓のあの雰囲気が好きなんだ。あそこをひやかし、ぞめきながら一回りするのが楽しんだ。吉原が家に来たら、行かないけど」と言う。それではと番頭は、店の2階を吉原そっくりに改造してしまった。ほぼ完璧に吉原が再現された2階を見た若旦那は大喜び。
早速2階へひやかしに行こうとするが、その前に番頭に古渡唐桟の着物を出せと言う。店の2階に行くのにわざわざ着替えなくてもという番頭に「本当の吉原へ行くつもりでなくちゃ面白くないだろ。夜露は毒だから、ほっかむりも出してくれ」とノリノリ。服装をいつものひやかしルックに着替えると、階段をトントンと2階へ。「しかしよくできているね。茶屋行燈に灯りもついているし、張見世まであるじゃないか。こりゃ、すごいね。でも…誰もいないね」。そこで若旦那、人がいなくなる大引け過ぎという設定で、一人芝居を始めた。『ちょっと、そこのお兄さん。登楼っていっておくれよ』『今夜はダメだよ』『そんなこと言わないで。夕べもお茶挽いちゃってるから、お願いだよ』『やだね』『何で登楼ってくれないんだ。ははーん、お足がないんだろ。この銭なしの貧乏人が!』『何だと!この野郎』とそこへ喧嘩を止める若い衆が通りかかる。『待て待て。女相手に喧嘩はいけねえ。やるなら俺が相手になろう』『何だ、お前は。格好つけやがって。面白れーえ。吉原で殺されるなら本望だ。さあ、かかってこい! 殺すなら殺せ〜!』と大騒ぎ。たまに家にいると思ったら何事かと、大旦那が2階の様子を伺うと誰かと喧嘩をしている気配。慌てて小僧の定吉を呼び、2階に行き喧嘩をやめるように注意をするように命じた。2階に上がった定吉「若旦那、自分で自分の胸ぐらをつかんで何やってるんだ? 一人で喧嘩してるよ。しょうがねぇな。ちょいと若旦那、若旦那ったら」「誰だ?! 後ろから小突きやがって。何だ、定吉か。悪い所で会っちまったな。俺にここで会ったことは、家に帰っても親父に内緒にしとけよ」