江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 牛ほめ(うしほめ)
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
バカな子どもほどかわいいとはいうが、度が過ぎたバカは、親の悩みの種。そんなバカ代表の与太郎のいいところを見せようと、親父は家を建てた兄の佐兵衛のところに、家見舞に行かせようと考える。「いいかい、与太。これから家見舞の口上を教えるから、おとっつぁんと同じように言ってごらん。まずは…先日はおとっつぁんがごちそうになり、大変ありがとうございました」「えっと…、先日はおとっつぁんがごちそうになり、大変ご愁傷様でした」と早速噛み合わない。気にせず続けると「結構な御普請でございますな。家は総体檜造りで…」「家は総体屁の気造りで…」「天井は薩摩の鶉木目」「天井はサツマイモとウズラ豆」「左右の壁は砂ずりで」「佐平のかかあは引きずりで」「畳は備後の五分縁でございますね」「畳は貧乏でぼろぼろでございますね」「お庭は総体御影造りでございます」「お庭は総体見掛け倒しでございます」という有様。不安になった親父は、紙に書いて渡してやる。
さらに「与太、いいことを教えてやる。台所に行ったら、大黒柱の真ん中に節穴があるのが見える。どうやら大工がしくじったらしいのだが、叔父さんはこの節穴をえらく気にしている。そこでお前が“そんなに気になるならいい方法を教えましょう。台所だけに秋葉様の火伏せの御札を張ってご覧なさい。穴が隠れて火の用心になります”と言うのだ。そうすると叔父さんは感心して、お前に小遣いをくれるだろう」。小遣いと聞き喜んだ与太郎は「もっとない?」と褒め言葉の催促。「現金なやつだ。そうだな…叔父さんが最近牛を飼ったのだが、その牛もほめるといい。牛のほめ方は“天角、地眼、一黒、鹿頭、耳小、歯合”と言うのだ」。
とこれも紙に書いて持たせてくれた。早速叔父さんの家に行き、習ったとおり口上を述べた。紙を見ながらようようではある、なんとか台所までだどりつき、めざとく節穴を見つけると言われた通り、秋葉様の御札を張ることを提案すると、感心した叔父さんから予想通り1円の小遣いをゲット。これに気をよくした与太郎は牛を見て「天角、地眼、一黒…」とやるが、途中で牛がぼとぼとと糞をした。「せっかくほめてくれているのにすまんな。牛もいいがあの糞にはほとほと困る」と叔父さん。すると与太郎「心配することはありません。秋葉様の火伏せの御札をお張りなさい。穴が隠れて屁の用心になる」