江戸瓦版的落語案内【くしゃみ講釈(くしゃみこうしゃく)】

Rakugo guidance ofTOKYOHEADLINE ネタあらすじ編

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

ある男が町内でも美人と評判の小間物屋のみー坊を逢引きに誘うことに成功。夜、人気のない暗い路地でいい雰囲気になっていると、人の気配が。慌てて壁にへばりつくと、一龍齋低能という講釈師が歩いてきた。息をひそめてやり過ごそうとしていたが、この講釈師が犬の糞を踏んづけた雪駄を脱ぎ、裏についた糞を男の顔にこすりつけた。それが原因でみー坊とこじれ、振られてしまった。男は復讐に待ち伏せしてぶん殴ると息巻いていたが、相談した兄貴分が高座で恥をかかせて遺恨返しをしたほうがいいと提案。その方法は、講釈場の最前列で、火鉢に胡椒を入れていぶし、その煙を吸わせてくしゃみをさせるというもの。

 早速男に胡椒を買いに行くように指示するが、胡椒という名前を忘れそうだと頼りないことを言う。兄貴は「じゃ、八百屋お七ののぞきからくりを思い出せば、小姓の吉三で、胡椒を思い出すだろう」と教えるとそれはいいと早速買い物に出かけた。案の定店に着くと何を買うかすっかり忘れた男は店先でのぞきからくりの口上を始める。一段をすっかり語り終わった時には野次馬が集まって拍手喝采。男もなんとか胡椒を思い出し、買おうとするが品切れ。店主が唐辛子の粉もくしゃみが出るというので、代わりにそれを買って帰った。

 さて、夜になり講釈場の最前列に陣取った男と兄貴は、火鉢に唐辛子をスタンバイ。あの講釈師が登場し、『三方が原軍記』を語りだすと、下からセンスでパタパタ。「これぞ源三位兵庫頭政入道雷円の御胤、甲陽にて智者の聞こえある……フエッ…」「んんん、…その下に黒糸おどしの大鎧、同じ毛五枚しころ、金の向い兎の前立打ったる兜を猪首にいか物づくりの太刀を横たえ、黒…ハッ、ハッ…羅紗の陣……ハクショ、…黒唐革のサイハイハックシ…、ハックション、ハックション、ハックション」くしゃみが止まらない「これじゃ…ハックション、講釈は…ハックション、読めま…ハックション、せん…ハックション」。すると男と兄貴は「やいやい、話の途中でハックション、ハックションやりやがった。この間抜け野郎」と野次を飛ばす。講釈師は、平謝りすると半札ではなく、丸札を出すので今日のところは勘弁してくれと挨拶。それでもなお野次る2人に「ほかのお客様は心配して帰っていったが、お2人は何か故障でもおありか?(何か文句でも?)」「いや、胡椒がないから唐辛子を入れた」

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