2016シーズン開幕直前 今年はベンチも気になるプロ野球【独占対談】江本孟紀氏 × 松本秀夫アナ

 2016年のプロ野球は3月25日に開幕する。さて今年のプロ野球はどうなるのか? 昨年に引き続き、ニッポン放送「ショウアップナイター」の名コンビ、解説者の江本孟紀氏と実況の松本秀夫アナウンサーに今年のプロ野球について話を聞いた。

撮影・神谷渚

 昨年の対談では松本アナは「広島、DeNA、ヤクルトにそろそろいい思いをさせてあげたい」と話していた。そんななかでのヤクルトの優勝。会心のシーズンだったのでは?

松本「あんなにいい思いをするとは思っていませんでした。ヤクルトの優勝はちょっとびっくりしましたね」
 昨年のヤクルトの躍進の要因は?
江本「それは簡単。実はチーム打率は一昨年のほうが上だった。だから去年にめちゃくちゃ打ったかといえばそうではなくて、やはり投手陣がよく抑えて勝ちゲームをものにした。41セーブしたバーネットがいて、その前に投げるピッチャーも充実していた」
松本「オンドルセク、秋吉、久古といった投手たちですね」
江本「それにロマンもいた。そういうピッチャーがゲームを作った。完投するピッチャーはほとんどいなかったんです。だから後ろを任せた投手陣がうまくいったというのが最大の理由でしょうね。今年はバーネットとロマンがいなくなった。最低でも30セーブするやつがいないといかんですよ」

 ちなみに江本氏は今年は中日を押しているという。

江本「投手防御率もチーム打率も去年は2位と3位でAクラスだったから。そうすると誰か一人柱ができると、まあ間違って優勝することもありえる」

 今年のパ・リーグは?

江本「一応、去年の実績からいったらソフトバンクが図抜けているとは思うんですけど、もし柳田が故障したとか調子が悪くなった時にどうするかという問題が出てくると思うんです。あくまでも実力のある人が好調で実績をあげていくことがひとつの基準になっていますから。投手のスタンリッジ、打者では李大浩が抜けたのは心配です。ピッチャーだって、先発の頭数はいるといったって、完璧にローテーションに入ってバリバリ投げるピッチャーなんて…」
松本「絶対的な柱はいないですよね。武田翔太が去年ブレイクしましたが」
江本「13勝したけど、今年は分からないですよ」
松本「大谷とか藤浪ほどの信頼感はないですよね」
江本「それほどのピッチャーじゃない。あそこはチーム打率でいうと、10位までに5人くらいいる。それがすべてですから。そこが調子を落としたら危ないです」

 今年、セ・リーグは全員が40代の監督ということで話題になっています。なかでも巨人の高橋由伸監督が気になります。

江本「12球団で一番きついでしょうね」

 テレビなどで見ているととても優しそうな人に見えるんですが…。

江本「優しくないですよ(笑)。彼は自分が選手でチームにいたから、なぜ負けていたかを分かっている。去年は兼任だったよね?」
松本「バッティングコーチ兼任でした」
江本「首脳陣的な立場で見たら、主力選手があの体たらくじゃ勝てない。レギュラーじゃなかったので、その原因は何かということを彼は知っている。その最初の表れが、キャンプ初日に俗に“アルプス登り”というんですが、スタンドを走らせたこと。最近のプロ野球であんなの見たことないです。松本さん、見たことある?」
松本「いえ、ないです」
江本「あれを見た瞬間に、これ相当きついことやる気だなって思いました。あれ文句出ますよ。“こんな練習冗談じゃないよ”って。“ウェイトトレーニング大好きなのに、階段なんか走らされてとんでもないよ”って(笑)。それをいきなりやらせているというところに僕はポイントを置いたんです。危機感を持ってやってる。人が良くて、選手に気を使ってるような監督だったらなかなかできないです。それがシーズンに入ってどういうふうに出てくるかは別ですけどね。ただ、前監督の原のえげつない采配を見ていますから、そのやり方がいいのか悪いのかは分かっているはずです。そこを踏まえて彼がどういう采配を振るっていくかというのは見ものなんですけどね」

 野球はグラウンドの中だけでなく、ベンチワークを考えるのも楽しい。

江本「ローテーションをどう組むかとか中継ぎをどういうふうにもってくるか抑えは誰にするか。変えるタイミングはとか、ね」
松本「その点、巨人は二軍コーチだった尾花さんを一軍投手コーチにしました。多分、投手のことは任せるつもりなんでしょうね」
江本「信頼して任せるかどうかというのも監督の采配ですから」

 その点、阪神の金本監督は?

江本「スタッフをどれほど信頼しているか。そのへんはちょっと心配ですね」
松本「どっちかというと周りは若い人が多いですよね」
江本「みんな、“兄貴についていきます!”って感じでしょ。これが一番ダメなんですよ。中には、“俺は兄貴にはついていかない”という人がいないといけない。兄貴というものは時々暴走しますから(笑)」

 最後に順位予想を。まずセ・リーグは?

江本「中日、巨人、阪神、ヤクルト、広島、ベイスターズの順ですね」

 昨年は2位予想だった広島が5位。

江本「もうフィーバーするのはやめなさいということです」
松本「昨年は球界全体が黒田熱に冒されていましたね」
江本「10勝したらいいほうなんだからって去年もずっと言っているんだけど。みんな黒田が50勝くらいして優勝すると思っているから(笑)。まあプロ野球だから、確かに多少売りは必要ですけど、冷静に考えないと」

 松本アナの注目チームは?

松本「やはり巨人。ホントに優勝もあるだろうけど、Bクラスもあるだろうなって思います。最近は真中さん、栗山さん、工藤さんのように新人監督が1年目でぽんぽんと勝ってしまう例はあるんですが、巨人には“青年監督第1次政権挫折の歴史”というのがあるんです。長嶋さんもそうですし、原さんは第1次政権では1年目こそ優勝しましたが、2年目に急降下して辞められたというようにスラッガー出身の青年監督は1次政権ではなにかしら苦い思いをしている。高橋監督はどっちに出るのかというのはすごく興味があります」
江本「今のところ、個別に選手とは喋らないんだって。そうするとね、選手のほうは“厳しいんじゃないか”という不気味な感じがするらしい。それも作戦だったら大したもの。 “お主やるのう”という感じですね」
松本「高橋監督の入団1年目のときに、キャンプに長嶋さんが見に来たんです。緊張する場面だし、そういう時って新人はアピールしたくて力むものなんですが、柵越えを狙うことなく全部センターに打ち返していた。迫力がないって思われちゃうかもしれないのにいいのかなって思ったんですが、よくいえば動じないというんでしょうが、不気味にも感じました。そういう部分を監督になって久々に感じることになるのかな?って思いましたね」

 ではパ・リーグも。

江本「ソフトバンク、日本ハム、ロッテ、西武、オリックス、楽天ですね」

 パの注目チームは?

松本「去年はギリギリでロッテがうっちゃったんですが、西武は戦力が揃ってきているので、今年はやりそうな気がしますね。実はロッテファンなんですけど(笑)」
江本「いずれにせよ今年はどこが優勝するって、簡単には言えないシーズンですよ。それはどこも強いからそうなるというわけではなくて、どこも弱そうなんだけど出てくるんじゃないかという(笑)。そんな感じ(笑)」
松本「どこも弱そうって…。ここはそうですねって言えないところですね(笑)」

 グラウンド内でのプレーはもちろんだが、ベンチの中や裏で起こっていることも加味しながら見ると野球観戦の面白さは倍増する。今年は特に監督に注目して見るとこれまでとは違った面白さを発見できそうなシーズンだ。

松本「江本さんはここぞという時に監督の裏情報を持ってくるので、ぜひ聞き逃さないようにしてください(笑)」
 とのこと。今年も個性的な実況と解説を聴きながら秋までプロ野球を楽しもう。(聞き手/THL・本吉英人 取材日:2月11日)

ショウアップナイターは今年で50周年

 江本孟紀氏と松本秀夫アナが活躍するニッポン放送の「ショウアップナイター」は今年で50周年を迎える。ニッポン放送ではこれを記念して「ショウアップナイターファンクラブ」を結成。会員になると、いろいろなスペシャルコンテンツが見られたり、会員限定のイベントに参加できるといった特典がある。詳細はホームページから( https://showup89.com/ )。

 ニッポン放送では3月25日の開幕戦「巨人×ヤクルト」を「ショウアップナイタースペシャル セ・リーグ開幕戦 巨人対ヤクルト」として試合終了まで実況生中継する。夕方5時30分から解説:江本孟紀さん、実況:松本秀夫アナウンサーでお送りする。

 レギュラーの「ニッポン放送 ショウアップナイター」は28日(火)から始まる「DeNA×巨人」からスタート。平日(火〜金)と日曜は17時30分から、土曜は17時50分からともに試合終了まで中継する。詳細は番組ホームページ( http://www.1242.com/baseball/ )で。