美術館が、特別な空間になる。篠山紀信展「快楽の館」

篠山紀信「快楽の館」2016年 ©Kishin Shinoyama 2016

 1960年代から、日本の写真界の第一線で活躍を続けてきた写真家・篠山紀信による、ユニークな企画の写真展。篠山本人のアイデアにより今回の作品はすべて、展覧会場でもある原美術館で撮影されたもの。一般的に写真展というと、展覧会場とは別の場所で撮った写真を展示するのが通例だが、本展では出品作品はみな、同会場で撮影されたもの。そのうちのいくつかは、まさに撮影場所に展示されていたりもする。同じ空間で、写真の中の“過去”と鑑賞者のいる“現在”が交錯し、幻惑的であると同時にどこか倒錯した鑑賞体験を味わうことになる。

 原美術館の建物は1930年代に個人邸宅として建てられており、日本近代建築史の観点からも貴重な建築物となっている。その独特な空間を舞台に“快楽の館”を作り出すため、全作品の主題をヌードで一貫。カラー、モノクロ合わせ約60点を展示する。

 本展は巡回展示が行われず原美術館だけで開催される。ここだけ、今だけという密やかさも、より耽美を醸し出す。“快楽の館”へと変貌した、原美術館へ足を踏み入れてみては。

篠山紀信展「快楽の館」
原美術館 開催中〜2017年1月9日(月・祝)

【時間】11〜17時(11/23を除く水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで)
【休】月曜(9/19、10/10、1/9は開館)、9/20、10/11、年末年始(12/26〜1/4)
【料金】一般1100円、大高生700円
【問い合わせ】03-3445-0651
【交通】JR 品川駅より徒歩15分
【URL】 http://www.haramuseum.or.jp/