KIDを追いかけアーセンに追われる男 所英男 インタビュー
一夜明け会見で榊原信行RIZIN実行委員長から乾杯の音頭のご指名を受けたのは所英男。それは31日の山本アーセン戦で大きなインパクトを残す勝利をあげたからにほかならない。会見後にその所に緊急インタビュー。
終わってみれば完勝だった。
「キャリアでいえば僕が勝たなければいけない試合だったんですが、やはり山本アーセンという選手はそれをも越えてしまう、一気に突き抜けてしまう可能性を持った選手。あのKIDさんも認めるだけの選手ですからね」
試合では右のパンチをもらって尻餅をつかされ冷やりとしたが、最後は電光石火の腕十字で一本勝ち。試合後の会見で“パンチを食らったのも分からないぐらい速かった”と話した。
「家に帰って試合の映像を見たんですが、こうやってパンチをもらっていたのかとびっくりしました。遠くから踏み込まれて入られたと思っていたんですが、スイッチしてパコンとやられていた。全然気づきませんでした」
その後の蹴り上げはとても冷静に放っていた。
「それは気持ちの作り方が良かったから。強気でいけたのでやり返すことができました。なにくそ!みたいな感じですね。あれが気持ちをうまく作れずにリングに上がっていたら、すぐ組みつく展開になっていたと思います。それはセコンドとか周りのみんなのお陰ですね」
試合後に山本“KID”徳郁に対戦をアピール。KIDは花道で帽子を脱いで深々とお辞儀を返した。対戦への前向きな意思表示なのでは?
「そのときはそこまで考えていなかったんですが、後で “あれはどういうことなんだろう?”って話になって“あるんじゃない”といった想像はしました。でもKIDさんは契約などで本人の意思だけではどうにもならないところはありますから。日本の格闘技はKIDさんで盛り上がったところもあると思うので、ぜひ戦いたいですね」
アーセンが“すぐにでももう一度やりたい”と言っていた。
「そういう気持ちがすぐに出るということは、強くなる選手だと思うので、ホントに今のうちにやっておいて良かったなって感じです(笑)。1?2年経ったら…1年後かな? 僕のほうが“もうホントに勘弁してください”って言っていると思います」
今回の煽り映像でKIDとの対戦希望の発言から「戦うストーカー」という新しいキャッチフレーズがついた。2017年はこれを目標に戦っていく?
「今のこのチャンス?を逃したら2人とも今年40歳なので時間がどんどんなくなってしまいますから。もし年末に組んでもらえるようなことがあれば、それまでどういう相手とやるかは分からないんですが、大事に大事に戦っていきたいですね(笑)。自分はこれだけ言っておいて、簡単に次で負けちゃうというのがありえちゃう選手なので(笑)」
リング上のマイクでテレビではカットされてしまったのだが、「格闘技を長くやってると、頑張る理由がいっぱい出てきて、なかなかやめられないです」と話した。これは2011年に亡くなった練習仲間の宮下トモヤさん、大会直前に訃報が届けられたかつてZSTでしのぎを削ったレミギウス・モリカビュチスさんを念頭においての発言。
「仲間や、やりたいのに途中でやれなくなってしまった選手の分、支えなきゃいけない家族の存在、応援してくれる人がいるとか、いろいろな理由がありますけど、やっぱり…やめられないですよね、簡単には」
もう自分から辞めると思うことはない?
「オファーがなくなったり、体の限界がきたりして、トレーナーさんや嫁に“もうそろそろ”と言われたら辞めようとは思っていますが、それまでは行けるところまで行くというのは自分の使命なのかな、と最近思っています」
KIDを追いかけつつも、アーセンからは追われる立場となった。2017年は所の動きから目が離せなくなりそうだ。