「千代田区を住みたい街、住み続けたい街にする」石川雅己さん(東京都千代田区長)
日本を元気にするために、各市町村が行っている取り組みを紹介する不定期連載。JAPAN MOVE UPの総合プロデューサー・一木広治が、さまざまなキーマンに鋭く迫る集中企画。新年1回目は石川雅己千代田区長が登場。2001年の初当選以後、4回連続当選を果たし、今年5期目を目指す石川区長のこれまでの実績と今後の展望について聞く。
千代田区が展開している“ちよだみらいプロジェクト”について教えて下さい。
「平成27年から10年後の36年度を計画期間とする新しい基本計画で、千代田区をもっと住みやすく、また住んでいる方が住み続けたいと思ってもらうために何をやるかという展望をまとめたものです。その基本的な考え方は、もっと子育てしやすい、お年寄りが住み続けたい、環境にやさしいといった事を中心に計画を立てています。私が区長になった時?(2001年)は、区の人口は3万8000人で、そのまま推移したら消滅自治体になってしまうのではという危機感があった。ですから人口回帰というのを大きな目標にとさせていただき、近々は6万人になろうとしています。5年に1度行われる国勢調査でも、直近のものとその5年前と比べると約24%人口が増えている。これは1万人以上で、多分全国の自治体の中でも最も増加率が高いと思います。そこから分かるのは、今後は自治体の政策を見て住まいを決めていくということ。例えば千代田区は子育てに関し、非常に力を入れていて、長い間待機児童ゼロを守っている。その他子どもの医療費無料化などの施策もあり、子育て世代が多く移住してきている。また、高齢者の方にとっても、病院が多く医療環境が良いとか、ケアが充実しているなど住み続けたいと思わせる要因がたくさんある。自治体がどういう政策をやるかという事が住まいを選ぶ大きな要素になってきているんですね。千代田区はそういうさまざまな政策の結果、住みたい街、住み続けたい街に変わってきたことは間違いないと思います」
JAPAN MOVE UPが行っている夢の課外授業は、今年で16年になります。千代田区はスタート時からご協力いただいています
「教育の大きな目的は、子どもたちの夢や希望を叶えるための基本・基礎を提供するものだと思うんです。ですから私は夢の課外授業に大賛成で、子どもたちが学校以外のさまざまな授業を通し、夢や希望を作っていくのはすごくいいことだと思う。小中学生は、夢の課外授業を通して、自分の夢をどう作っていくか、そのためにはどういう学びをすればいいのかということを知るいいチャンスだと思っています」
2020年はいよいよ東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、千代田区としてはどのような取り組みを考えていますか。
「千代田区は武道館、東京国際フォーラム、皇居前という3カ所で種目が行われますが、基盤整備はないので、むしろ次の時代に何を残すかということを考えています。その中で一番やらなければならないのが街のバリアフリー化。パラリンピックもありますから、これはきちっとやる。それがある意味、オリンピックのレガシーになるんじゃないでしょうか。2つ目は障がい者の意志疎通に関する条例を作りました。単に手話だけではなくて、ボードによるコミュニケーションなどです。それがいろいろな違いを乗り越えて、多様性のある地域社会を作ることになり、共に生きる、すなわち共生というオリンピックの精神につながると思います。あとは、千代田区が全国に先駆けて行った路上喫煙やポイ捨てへの対応は引き続き行い、風格のあるきれいな街を目指す。また、環境という側面から、コミュニティサイクルの拡大などを計画しています」
昨年は新都知事も誕生しましたが、小池知事の掲げる東京大改革へはどのように関わっていかれるのですか。
「小池知事の住民、すなわち都民の方へ、できるだけ問題の中身をつまびらかにして、最終的にさまざまな方の意見を聞きながらジャッジメントしていくというやり方には賛成です。私自身、区政の中でずっと情報公開をし、その中でいろいろな意見を聞き、それもつまびらかにした中で判断するという事をやってきましたので、そういう意味ではやり方は非常に近い。ですから、今後、小池知事のおっしゃる東京大改革の中身が具体的に出てきた時に、こちらとしては協力をしていかなければと思っております。住民が住みやすい街を作るという目的は一緒ですから、東京都が直接手を差し伸べる事ができないところを区町村がやる。そしてそれをバックアップしていただくというのが都政の役割だと思います。住みやすい地域を作るため、そしてそこに住み続けられるために、都政も区政も一緒に手を携えていかなければと思います」