名護市の財政がひっ迫。市民生活の地盤沈下が止まらない

2月4日投開票「名護市長選」を探る

 名護市の今後4年間の命運を左右する名護市長選(2月4日投開票)が行われる。

 ここで名護市が現在抱える問題を整理してみる。

 沖縄県は現在人口がどんどん増え続けている。これはおりからの「移住ブーム」と特殊合計出生率が全国1位という数字が表すように「自然増加率」も全国1位という2つの要因から。

 名護市を中心とする北部地域も人口は増加しているのだが、増加率は県平均よりも低く、過疎地域も他地域に比べ多く抱え込む状況となっている。

人口増加率
沖縄県平均→3%増
名護市→1%増

 そればかりか完全失業率も高く、雇用情勢も厳しいことから若年層の流出も進み、将来に向け深刻な状況となっている。

 沖縄県はここ5年ほどで経済が急成長。2017年度の財政力指数が0.356で過去最高水準になるなど税収も大幅に増加した一方、名護市は市の借金残高が平成27年度で264億円にのぼる。これは市民1人当たり42万円もの借金を背負っている計算だ。

借金残高264億円
市民1人当たり42万円の借金

 現市政は辺野古移設反対の立場から米軍再編交付金の受け取りを拒み続けており、結果、名護市は約135億円の財源を失っている。さらに名護市の1人当たりの市町村民所得は他の地域と比べ最も低く、それに伴い税収も横ばい状態。
 財政ひっ迫のしわ寄せは公共サービスの低下という形で市民を直撃。

危機感がない!? 基幹病院整備

 医療に目を向けると慢性的な医師不足が深刻化。県立北部病院では医師の確保が難しく夜間急病センターがたびたび閉鎖。また産科のある病院は名護市に2つあるだけという状況だ。この問題の解決に向け2014年末に県立北部病院と北部地区医師会病院の統合再編の声があがり、前知事が統合を進めたのだがその後は遅々として進まず、昨年末にやっと現知事が統合を進め、基幹病院を整備する方針を表明した。

 日々の生活に目を向けると、下水道普及率は県平均の70.9%に比べ62%と低い数字となっている。意外に見逃しがちなところではゴミの分別問題というものも上げられる。

ゴミ分別問題
那覇市は5分別
名護市は16分別

 現在名護市では実に16分別してゴミを出さねばいけないのだが、本島の他市をみると那覇、糸満、南城、豊見城、宜野湾が5、沖縄が7、うるまが8、浦添にいたっては4分別。

 ゴミの分別については各市町村で独自に定めたルールで行われる。ゆえに焼却設備や埋め立て場といった個別の条件で大きな違いが出てくるのは必然ではあるが、それにしても名護市の16という数字は突出している。

 ゴミ処理については出す側(住民)が細かく分別したほうが経済的と思われがちだが、実は必ずしもそうではない。分別することで専用の収集車が必要となり、コストと効率の悪化につながる場合もあることから、今では最低限に分別したうえで、収集後に専門の業者が分別、また焼却技術の向上などで分別が大まかになるケースもある。いわば行政の手腕に負う部分が大きいというわけだ。

人通りもまばらなアーケード

給食費完全無料といった政策も必要

 写真のように市街地は人通りがまばらで、活気が失われている。ここに挙げたような問題が“住みにくい”というイメージを与えてしまい、外部からの移住をためらわせ、内部からは若い世代の流出を招くという悪循環となっている。こういった状況を脱却するためには子供の医療費の無料化、学校給食費の無料化、保育料の無料化といった大胆な政策を考える時期に来ているのかもしれない。

このままではファイターズが戻ってこない!?

 日本ハムは1978年から名護市で春季キャンプを張り、昨今では中田翔、大谷翔平といったスター選手も擁し、この季節の名護市の観光客増大に大きく貢献してきた。

 しかし2016年から日本ハムは米アリゾナ州スコッツデールで1次キャンプを行い、名護にやってくるのは2次キャンプから。今年は2月17〜23日となる。昨秋のドラフト会議で最大の目玉であった清宮幸太郎が入団し、今年のキャンプ最大の話題であっただけに、名護にとっては残念な限り。

 これはキャンプの主要施設である名護市民球場の改修工事が行われているためなのだが、改修については日本ハムが長年、名護市に要望を出していたものの具体的な進展はなし。日本ハムが練習環境、選手の調整面などを総合的に判断し、決断を下してしまった。

 同球場は2020年に両翼100メートルの本格的な球場として生まれ変わる予定なのだが、地元では「果たして日本ハムは戻ってきてくれるのか…」という懸念の声も上がっている。

低い補助率で地元の負担が増大

 また改修費用は総額47億円という巨額なものなのだが、補助率は50%で地元が半分を負担。

 沖縄の他の球場を見てみると、那覇市営奥武山球場は総額68億円のうち補助率75%、沖縄市野球場は総額32億円のうち補助率は65%となっており、こういった数字の積み重ねが公共サービスの低下につながっているといえそうだ。

昼間の名護市街地。かつてのにぎわいはとり戻せるか?

全国から注目を集める今回の名護市長選挙

 2018年の沖縄県は12月任期満了の県知事選挙に向け、重要な選挙が目白押し。

 県民の生活に密着した市町村長の選挙が今年だけでも17行われるのだが、北部地域の中心都市である名護市長選は重要なものとなる。

 名護市は今回の市長選の後は秋に「名護市議会議員選挙」(9月27日任期満了)が行われるのだが、沖縄県全体でも8月の南大東村議会議員選挙など30の市町村で議会議員選挙が行われる。

 選挙の争点は各地それぞれだが、その積み重ねが県知事選を左右することになるだけに、この名護市長選は全国的にも注目度の高いものとなっている。