m-flo 15年ぶりにオリジナルメンバーで作り上げた最新作

 m-floがオリジナルメンバーで完全復活だ。LISAがグループに復帰し、15年ぶりにオリジナルメンバーで活動を再開。最新作『the tripod e.p.2』をリリースした。短くはないインターバルを経て、カッコよくて心地よいm-floが再び響きわたる。
撮影・上岸卓史

3人で曲を作ろうってなると、クリックする。
なんか、ガチっとかみ合うんです。



 LISA、☆Taku Takahasi(以下、Taku)、そしてVERBAL、m-floがオリジナルメンバー3人でリユニオン。このメンバーでの活動するのは15年ぶりと、短くはない年月が経過した。☆TakuとVERBALは「また3人でやりたいね」と、いろいろなタイミングで話していたというのに。

VERBAL:LISAには、脱退した後もフィーチャリングで参加してもらったり、☆Takuとプロジェクトもあったりで、戻って来てもらいたいという気持ちは、ずっと、直接的にも雰囲気的にもあったんです。

LISA:私自身もグループは離れても私たちはファミリー!みたいな感覚がありました。ただ当時の私には、私なりに自分の人生を考えたりすることとか、いろんなことに挑戦して自分を刺激し、自分で自分のケツを叩く必要がありました。

 復活の大きなきっかけになったのが、J-WAVEのイベント(J-WAVE「MUSIC FACTORY」、2016年12月15日)でのLISAと☆Takuの共演。

LISA:来てくれた方と近い距離で歌わせていただいたので客席に、ずっと応援してくれている顔も見えて、「Oh! You!」って感じで(笑)。この人たちはまだ待っててくれていたんだって感動しちゃいました。それでライブを終えて家に帰ってすぐに☆Takuに電話したんです。「離れたのは私だけど、戻してほしい。m-floはやらなければいけない」って。電話しない理由は、その日の私には、なかったです。

Taku:話さないとなあ、と思っていた時にVERBALが大事故(12月23日)で。一時は集中治療室にいつつも「一命をとりとめた」と聞いてホッとしました。ただ、同時に、m-floで出演を約束していたUSJの『ユニバーサル・カウントダウン・パーティ』をどうにかしないとっていう問題があって。そこで、LISAにピンチヒッターをお願いしました。年明けにお見舞いに行って、そこで、また3人でやらない?って。

 結構な大事故だった。「今だから言えるけど、死んじゃったんじゃないかって思われるような」と、本人も言う。その経験もまたこの復活に関係が……ある?

VERBAL:2016年ってめちゃ厄年だったんですよ。あの事故もそうですけど、その前に母が亡くなったりして……本当にいろんなことがあって。だから、事故から早く復帰できてうれしいという気持ちと一緒に、ガッツリ悔いのないようにいろんなことをやりたいと思ったんです。そのなかに、m-floもあって。ファンの人たちからも、いろんなところで言われてきましたからね、LISAのいるm-floはいつやるの?とか。

LISA:私も同じ。ソロとかやらないで早く3人でって。それにイチイチ傷ついていた時期もありましたけど、自分を後押ししてくれた良い言葉。それがなかったら、あの電話はなかった。

 そこから3人で膝を突き合わせ、2度目のm-floに対する想いをぶつけ合った。作品をリリースするためにもいろいろな準備や整理が必要で、形が作れたころには1年が経過した。そして完成したのが最新作の『the tripod e.p.2』。そのなかから、まず最初に世間に飛び出したのが、エモーショナルな「never」だ。この曲は、映画『去年の冬、きみと別れ』 の主題歌として書き下ろした。

LISA:曲は、映画のリクエストを踏まえつつ書いていきましたけど、私たちのファンの人にも喜んでもらえるような曲にしたかったんです。曲は劇中の2人を歌ったラブソングではあるんですが、私たちの復活を待っていてくれた人たちにも伝わるようにと思って書きました。VERBALがラップでアンサーしてくれています。自分たちが作ったんですけど…とっても泣けます。

Taku:LISAが思ったことを書いてますけど、フィットしてるんですよ。ラップの部分もトラップみたいな展開を入れたりして、遊びがあって、m-floっぽい。

 カップリングの『No Question』と『MAKE IT BREAK IT』は、“らしさ”が、リミッターを振り切ってさく裂する曲。「never」とはまた違ったベクトルでの本気を感じる。

Taku:『No Question』は、リブートっていうのを意識して作ったんですよね。

LISA:今回はTakuちゃん、ちゃんとしたトラックを……ちょっと形になっているトラックを渡してくれたのね。いつもはドツドツだけなのに(笑)。すでに肉付けがあったから、気合を感じました。

Taku:意識したのは、今の状況と当時の作り方を融合させることなんです。フューチャーベースの音楽を作るためには、この音を作ればいい、あの音を使えばいいっていう定石があるんですけど、それに従わない。当時のm-floってそういう感じだったから面白いって言われていたと思うんです。それを強く意識しています。そしたら、LISAとVERBALが僕の想いを代弁するような歌詞を書いてくれました。シンクロニシティがすごい!

LISA:聴いたら自分の中からワーって出てきたんですよ。その時私はグアムにいたんですけど、VERBALに「できたから聞いて!」って連絡して。

VERBAL:トラックもすごくカラフルだし、LISAの歌もいろんなジャンルに分けて歌っていて…いろんな要素、インスパイアされたものを入れちゃってる。すごくm-floらしい。

 オリジナルメンバーになったことで、音楽に対する根本的な考え方も原点も改めて確認した。それを踏まえて、2018年のm-floは「いい音楽」を発信していく。

VERBAL:以前、「いいヒップホップ」と「そうじゃないもの」、どこが違うか話してた時に言われたんです。それは「いい音楽かそうじゃないかに尽きる」って。ジャンルとか日本語だとか英語だとか、そういうのは関係ないって。僕も、ラップを聞くようになったのは、格好いいと思った音楽がラップだったから。いい音楽だったから刺さったんです。だから、僕らもそういうところに一石を投じて、世界を震撼させることができたらいいなって思いますね」
(本紙・酒井紫野)
New EP『the tripod e.p.2』発売中

 映画『去年の冬、きみと別れ』(出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工 他)の主題歌として書き下ろした新曲「never」、m-floらしさがさく裂する『No Question』、『MAKE IT BREAK IT』、それぞれのインストゥルメンタル、アカペラバージョンを収録。さまざまな角度から、3人のm-floが聴けて、感じられる作品だ。rhythm zoneより発売中。CD+DVDは2000円、CDのみは1200円(ともに税別)。