仮想通貨ビジネスで注目の起業家が語る「新ビジネスを成功させる7つの鉄則」

「起業特論Aトップリーダーマネジメント」第5回講師:廣末紀之氏『新規事業の創造とビットコイン』(2018年5月11日実施)

文部科学省が推進する「グローバルアントレプレナー育成促進事業」に選定されている「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」の一環として、早稲田大学では毎回、注目のトップリーダーを講師に招く特別講義「起業特論Aトップリーダーマネジメント」を開講(全8回)。第5回目の講師は、野村証券を経て、インターネット、電気自動車、カーシェアリングと、その時代を読んで新規事業に取り組み、現在では仮想通貨を扱うビットバンク株式会社の代表取締役CEOを務める、廣末紀之氏だ。



なぜ起業をすべきなのか
「私は、早稲田大学の理工学部を卒業後、野村証券に入りました。野村証券に入ったのは、当時最もハードだといわれていた会社の一つだったからです。そこに行けば、大きく成長できると思いました。そこを辞めた後、これからはインターネットだということで、GMOという会社に入りました。その後、これからは自動車の電気化、デバイス化が進むと思い、電気自動車の会社やカーシェアリングの会社を立ち上げました。
 まず、皆さんに伝えておきたいことがあります。どんどん新規事業(起業)を起こしてください。社会は、事業というものの新陳代謝を繰り返すことで成り立っている生き物だからです。そして、社会の進化というのは、そのような新しい試み(新規事業・起業)の連続の中で起こっていきます。皆さんには、この社会を進化させていってもらいたいと思っています。


 もちろん、新しい試みには、失敗がつきものです。しかし、致命的な失敗さえ避けることができれば、また立ち上がって、挑戦をし続けていくことができます。致命的な失敗をしないためには、テーマを間違えないことが重要です。テーマというのは、社会の大きな流れやトレンドのことです。社会の大きなテーマに即したことをしていれば、失敗したとしても致命的なものになることはありません。私は、さまざまな業界を渡り歩いて来ました。その中で、私はカーシェアリング業界で起業をしましたが、失敗してしまいました。しかし、起き上がれないほどの失敗はしませんでした。なぜかというと、時代のトレンドを追うことができていたからです。時代を読んだ事業を行ってさえいれば、もし失敗したとしても致命的な失敗にはなりません。ですので、時代・社会流れを読む力が大事です。


 また、現在は、起業のためのコストが格段に落ちています。特にITビジネスの世界で起業をする限り、経済的なリスクはほとんどありません。仮に失敗したとしても、いつでも取り返すことができるので、とにかく若いうちから何度もチャレンジしていってください」



新規事業を起こすための7つの鉄則
「新規事業を始めるうえで重要な要素は、トレンド、タイミング、好み、チーム、資金、性質、社会とのギャップなどがあります。
 まず1つ目、最も重要な要素は、大きな社会トレンドに合致しているかです。これは先ほども述べました。トレンドを読み違えてしまうと、致命的な失敗につながってしまうかもしれないので、トレンドを読む力を磨いていきましょう。トレンドを読む力を磨くためには、社会の動きはもちろんテクノロジーの動向を知らねばならないので、少し勉強が必要です。興味関心を持って、自ら情報のインプットをしなければなりません。私は今でも毎日新聞を隅々まで読みます。また、気になったこと、知らなかったことを時間をかけてもいいので調べることも重要です。私は、ビットコインを理解するのに半年くらい時間をかけました。
 2つ目はタイミングです。これは早くても遅くてもだめです。やはり、いくら時代の潮流を読んでいても、早すぎるものは市場が受け入れる準備すらしていないことがあるので、失敗する可能性があります。私がカーシェアリング事業をやったときは、ちょうど大手も参入してしまうようなタイミングだったので、タイミングという点で失敗でした。仮想通貨に関して言えば、取引所を作るタイミングは既に過ぎています。適切なタイミングでやることをやらないと、うまくいくものもうまくいかなくなります。
 3つ目は、自分がやろうとしていることが好きなことなのか、です。新規事業を起こすときは、かなりのエネルギーと時間を注がなければなりません。当然、好きでもないことに自分のすべてを注ぐことなんかできませんし、継続できません。
 4つ目は、チームです。人間、1人でできることなんてたかが知れています。それぞれの苦手なところ、弱いところを補完し合えるようなチームを作りましょう。冒険に行くときは、1人よりもチームで行きましょう。
 5つ目は、事業を起こすにあたっての資金です。やはり会社を設立すること自体にはお金はほとんどかかりませんが、自分の生活をすべて注ぎ込むには、お金を稼がなくてもいい状態でいる必要があります。また、いくら事前に計画を立てていたとしても、不測の事態は起こります。私は、目安として、最低でも2年間は無収入でもやっていける資金を確保していました。
 6つ目は、事業の性質です。やろうとしている事業が、お金がかかる事業なのか、お金がかからない事業なのか、ということです。お金がかかる事業をした場合は、事業自体がどんどんお金を食ってしま打ことになります。さらに、失敗したときに取り返しがつかなくなってしまう可能性も高いです。
 7つ目は、やろうとしている事業を社会が誤解しているかどうか、ということです。みんなが「これ、いいね」「うまくいくよ」と言うような事業よりも、本当はとてもいいものなんだけど、みんながなぜか誤解している、うまくいくはずがないと思っていることを事業にした方が成功します。事業と社会の認識との間にギャップがあると、社会の認識が修正されていく中で、とてつもないゲインが得られます。


 以上7つあげましたが、結局のところ、最後は運です。運は、とても不確実な要素です。運を味方につけるためには、高い目標を持ってよい習慣を継続していくことが重要です。運をつかむために努力していた人に、今話題の大谷翔平さんがあげられます。彼は、目標を達成するための要素の一つに運を挙げ、運を味方につけるために何をしたらいいのかを分析して実践していたのです。もし興味があれば検索してみてください。高校1年生の時にここまで練り上げていたとは、ときっと驚くと思います」



新領域に踏み出せ!
「今の時代、これからの時代は大きな変革が訪れます。インターネットが新しい分野だった時代、若手の人間でも、多くの人が何百億円も稼ぐ成功者になりました。変革の時代には、老若男女すべての人々にチャンスがあるのです。新しい領域でチャレンジすることで、お金以外にも様々な経験などを積むことができます。
 なぜインターネットがここまで大きなインパクトが起こったかというと、インターネットが情報の民主化を果たしたからです。それまで情報というのは、メディアが握っていました。情報を誰でも発信できて、誰でも受信できるようにしたインターネット事業をしている会社は、大変なビジネスになったのです。
 では、次の“インターネット”は何でしょうか? それはお金です。現在、仮想通貨によって、お金の民主化が果たされようとしています。お金の民主化とともにインターネット化も進みます。市場の規模で言えば、お金の変革が起こるわけですから、インターネットの比ではないチャンスがあるといえるでしょう。


 私見ですが現在、社会の変革の3要素がそろったと考えています。3要素とは、デバイス(スマホ)、情報(インターネット)、お金(ビットコイン)です。これらが出そろった今、様々な変革がきわめて高速で起るようになるといえるでしょう。そこにIoTやAIが絡んできますので、とてつもない変化が起こるのではないかと考えています。
 挑戦には失敗がつきものです。あのイチロー選手でも打率は3割です。まして一般人のわれわれは1割成功すればいいでしょう。どういうことかというと、失敗はして当然のものだということです。みんな失敗を積み重ねていくのです。ただ、失敗を繰り返していくうちに、成功の確度が変わってきて、だんだんどうすれば成功するのかがわかってくるのです。失敗したらどうしようなんて心配してもしょうがありません。そんなことを考えているうちに挑戦しましょう。挑戦したもの勝ちです。
 ただ、失敗の仕方にだけは注意しましょう。何度も言いますが、致命的な失敗だけは避けるようにしましょう。先ほどカーシェアリング事業で失敗したと述べましたが、最終的に三井物産に事業を買い取ってもらいました。なぜこれができたかというと、時代のトレンドに沿っていたからです。
 挑戦に老若は関係ありません。ただ、若いうちにたくさん経験した方がいいというのは事実です。どんどん挑戦して、失敗して、成功をつかみ、社会を成長させてください。健闘を祈っております。ありがとうございました」

廣末紀之(ひろすえ のりゆき)
ビットバンク株式会社代表取締役CEO
早稲田大学理工学部卒。野村証券を経て、スタートアップの経営に携わる。GMOインターネット株式会社常務取締役、株式会社ガーラ代表取締役、コミューカ株式会社代表取締役などを歴任。その後、2014年にビットバンク株式会社を設立。