日本で感じた「ないなんて、ありえない」が世界へ 「言葉の違いで起きる問題をオイラで解決したい」コチュ・オヤ(オイラ 代表取締役)

 共通の言語を持たない人たちと一緒に働いたり同じ地域コミュニティーで暮らすことは、こと東京においては、スタンダードになりつつある。さまざまな言語が行き交うなかで、今、注目を集めているのが「オイラ」という通訳者のグローバルなプラットフォームだ。アプリから最適な通訳者を選び、必要な時に必要なだけリアルタイムで通訳を頼める、言い換えれば通訳者のマッチングサービス。コチュ・オヤさんが日本に暮らす中で生まれたサービスが、広がりを見せている。

コチュ・オヤ 1986年生まれ。トルコ出身。2013年、東京大学大学院 工学系研究科を卒業。同年にボストンコンサルティンググループに入社。2017年株式会社Oyraa創業。英語、トルコ語、日本語に堪能。

 オイラのコチュさんが起業を考えたのは「ない」というショックを受けたのがきっかけだったという。

 大手コンサルティング会社での仕事に夢中になっていたころのこと。「子どもが熱を出して病院に来ているんだけど、診療や治療で注意してほしいことが上手く伝わらない…」「不動産屋さんにいるんだけれど、こちらの伝えたいことがあまり伝わらないの…」。日本で暮らす外国人の友人から、業務中にも関わらず、SOSの電話が入ってくることが多くなったという。コチュさんが日本語が堪能なのもあるが、日本の病院でのやりとりや不動産の手続きに知見があるからというのも、たくさんの電話がかかる理由だ。

 たいていの場合、両者の間に入って少し通訳することで解決できる問題。時間にしても5分か10分といったところだ。とはいえ、そのたびに自分の仕事をストップするわけにも……。

「友人に紹介できるサービスはないかなって調べたら、法人向けのサービスは見つけられたのですが、個人向けは見つけられなかったんです。もちろん、通訳者を派遣してもらえばいいのですが、そうなると必然的に料金も高くなってしまいます。求めていたような通訳のサービスがないなんてありえない!とショックを受けました。言語のバリアというか、この問題を解決できたらいいのにと思いましたし……それを自分がやってみるのもいいかもって思ったんです」

 楽しすぎて「この会社に骨をうずめよう」とさえ思っていたという会社を辞め、スイスに渡って、2016年にパートナーと2人で会社を立ち上げた。スイスで創業したのは税制や働き方の面で日本よりスタートアップに向いていると思ったからだという。とはいえ、あっという間に資金が尽きて失敗。集めたチームは解散し、志を同じくしたパートナーも就職してしまった。

「それでも、やりたかった」というコチュさんは、1人日本に戻り、ゼロからリスタート。それが2017年だ。「来月の家賃が払えないかもしれない」ほどの状況にもなりながら、スイスに渡る前からの知り合い(オイラの財務担当副社長の尾立源幸氏)のアドバイスやサポートもあって、「オイラ」のサービスはスタートした。

 現在、登録している通訳者は500人ほどだというが、英語はもちろん、ドイツ語やスペイン語、ベトナム語などさまざまな言語をカバーする。建築、法律など通訳者の専門エリアも多彩だ。ユーザーは800人を超え、外国人労働者を積極的に受け入れている建設現場で作業説明や確認に利用されるケースも目立つようになった。

「まだまだ不安定」というが、今では都心のシェアオフィスの一角にオフィスを構え、インターンを含めて、17人が働く。開発はインドで、中国にはパートナーが4人いる。

「スイスでの失敗、日本での起業を経験してみて思うのは、一番大切なのはチームだということです。同じボートに乗ったのだから何があっても最初から最後まで一緒にやる。そういう気持ちが大切だということです。同じ目的を持っているということでもいいし、この人と一緒に働きたいと思える人でもいい。起業するなら、覚悟を持って、同じボートに乗る人に出会ってほしいと思います。スタートアップはいろんなチャレンジがあって、激しいアップダウンもあります。難しい時、ゼロに落ちたときにも最後まで一緒だって言ってくれる人の存在はとても大きい。友人とか家族も心から応援してくれると思いますけど、同じボートに乗っているのといないのとでは全然違いますから」

「恵まれたチーム」を率いるコチュさんの目標は「本格的なグローバルな企業にすること」だという。

「そのためにも、まず、オイラの事業を日本で、ほぼ同じぐらいのペースで中国でも成功させたい。アジアベースで成功させることができれば、世界に広げていくことは簡単だと思っています。そして近い将来、一番強い通訳者プラットフォーム、通訳者といえばオイラっていうようなサービスにしたいと思っています」

起業家データ
【起業時の年齢】30歳
【起業時の資本金】1750万円
【起業後の収入】同じ
【座右の銘】「Losers let it happen, winners make it happen!」

平均的な1日のスケジュール
6時30分〜  起床、メールチェック、アメリカ側のパートナーとのテレコン
8時〜 準備・ジョッギングしながら当日の「必ず達成したいこと」の整理・チームマネジメント
の整理など
9時〜 社外打ち合わせ・社内外で仕事
13時〜 社内外で仕事・打ち合わせ
午後  社内外で仕事
20時〜 会食・仕事
0〜1時 読書(海外テレコンがなければ)

Company Profile
株式会社Oyraa
【所在地】東京都千代田区麹町1-4-4 2F
【URL】www.oyraa.com
【設立】2017年3月
【資本金】1750万円
【事業内容】事業内容:言葉の壁を無くすため、通訳者のグローバルプラットフォームによるオンデマンド通訳を提供(いつでもどこでも専門通訳者を呼び出せるアプリ)
起業をする人・考える人への応援メッセージ

毎日自分の夢を具体的に思い描きながら日々起こる問題や障害を言い訳にせず夢の実現に向けて走り続けること!

Oya Koc
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