U-20 女子W杯優勝のヤングなでしこが帰国会見
なでしこ、U-20、U-17の全3カテゴリーでのW杯制覇は女子初
サッカーのU-20日本女子代表は8月24日(日本時間25日)、「U-20 女子ワールドカップ(W杯)フランス 2018」の決勝でU-20女子スペイン代表と対戦。3-1で勝利を収め、初優勝を果たした。
日本サッカー協会は8月26日、優勝報告会見を都内で開催。会見には田嶋幸三会長、今井純子女子委員長に、U-20日本女子代表の池田太監督、そして全21選手が登壇した。
冒頭、田嶋氏は「池田監督らスタッフ、そして選手たちに感謝したい。日本サッカー協会は『2005年宣言』、女子は『なでしこvision』に基づきさまざまな活動をしているが、これはすべてサッカーの発展につながるもの。育成日本の復活、そして世界基準を合言葉に活動しているが、U-20日本女子代表がそれを具現化してくれた」「優勝カップ以外にさまざまな賞を獲得した。私にとって一番うれしいのは優勝して、なおかつフェアプレー賞を取ったこと。フェアプレーについてはどのカテゴリーでも常々言い続けている。優勝と同時にフェアプレー賞を獲得するのはとても難しいこと。それをやってのけたこのチームを誇りに思う」などとチームを称えた。
そして「来年は女子W杯、2020年には東京オリンピック。そして2023年にはまだ決定していないが、女子W杯の日本招致へ向け機関決定をしている。中心となるこの年代が世界チャンピオンになったということは日本サッカーを後押ししてくれるもの」と日本サッカーの将来へ向けても今回の優勝が大きな意味を持つことを示唆した。
池田監督「チームは一区切り。彼女たちには次のステップで素晴らしい人生を歩んでいってもらいたい」
今井氏は「(選手たちには)今後、なでしこジャパンに入ることを目標とし、もう一つ高い舞台で戦えるように。それを目指して頑張ってほしい。今回の優勝でなでしこジャパン、U-20、U-17のすべてのカテゴリーで優勝した。これは世界で初めてのこと。トップのA代表が優勝するためには育成年代でいい選手たちが育っていることが大事。それが順調に進んでいることは日本の女子サッカーの誇り」と話しつつも「普及はまだまだ進んでいない。1人でも多くの女の子たちにサッカーの楽しさやサッカーの喜びを伝えて、普及を広めていきたい」と今後に向けての展望を語った。そして「サッカーの中身ももちろんだが、彼女たちのひたむきさ、芯が強い、明るい、礼儀正しいという姿が多くの人を魅了し、愛され応援されるチームとなった。こういったことは本当に大事なこと。選手たちにも(その意識は)持ち続けてほしいし、日本女子サッカーとしても守り続けていきたい」などと今回の偉業はもとより、選手たちのなでしこスタイルも称賛した。
池田監督は「優勝トロフィーを勝ち取った選手、スタッフを誇りに思う。このチームは本当に元気が良く、ご飯もよく食べ、よく寝て、よくおしゃべりもして、そしてよくトレーニングする。そんなチーム。選手たちの持っている力をピッチで出してもらうことが私の役目だと思ってやってきた。立ち上げから選手たちが成長してくれた。自チームでの活動、今まで育ててくれた指導者や関わってくれた人たち、その力の塊が目の前にあるトロフィーだと思う。このチームは今大会で一区切りだが、彼女たちには次のステップ、なでしこであったり、素晴らしい人生を歩んでいってもらいたいと思う。今回のようにすべてが成功で終わることばかりではないと思う。その時にも明るさと努力と笑顔と感謝の気持ちを持って、乗り越えて素晴らしいサッカー人生、またはそれぞれの人生を歩んでいっていただければと思う」と選手たちにメッセージを送った。
キャプテン南「太さんは“熱男”」、宮澤「太さんを世界一の監督にすることができて良かった」
キャプテンの南萌華は「このチームでの1年半の集大成としてW杯で優勝することができてすごくうれしい。このチームは試合を重ねる中で成長していける素晴らしいチームだった。この素晴らしいスタッフと素晴らしいメンバーとW杯で優勝することができて幸せだったし、キャプテンをやることができて、誇りに思えた。この大会を糧にしてまたさらに成長できるように頑張りたい」となどと話した。
また南は池田監督について「太さんはチーム発足当時から“熱男”。自分が印象に残っているのは試合前のミーティング。自分たちもモチベーションが上がっているんですが、太さんが誰よりも熱男で、チームに対する思いを毎回伝えてくれる。これから試合に臨むんだなという気持ちにさせてくれると同時に、この素晴らしい監督を世界一にしたいという気持ちにさせてくれた。本当に素晴らしい監督です」と話すと、決勝で先制ゴールを決めた宮澤ひなたは「太さんは本当に熱血で、いつでも選手のことを大事に考えてくれる。太さんのもとでサッカーができた時間は自分にとって貴重で宝物。アジア大会の時に太さんからもらった手紙は今も宝物になっている。一人ひとりメッセージは違ったと思うんですけど、その一言に太さんの思いがこもっているな、というのがすごくうれしかった。本当に太さんを世界一の監督にすることができて良かった」と続けた。
最後は「太ポーズ」でさよなら
選手の池田監督への大きな信頼感を示すエピソードはまだまだ続く。決勝でダメ押しの3点目を決めた長野風花は「今年から韓国のリーグに移籍して、慣れない環境、プレースタイルに苦労したこともあったが、世界一になる、もっとうまくなるというぶれない目標があったので、つらいことも乗り越えられた。この素晴らしいチームのみんながいたからここまでやって来れたんだと思う」と話した。また南も「このチームでつらいことは少なかったが勝てなかった時は本当に悔しかった。でもこのチーム全員の支えがあってそれを乗り越えられた。スタッフもみんな選手のことを気にかけてくれた。そういうつらい時間が少なかったのもいろいろな方の支えがあったからだと思う。なによりこのチームのチームワークがそういったことを少なくしてくれたし、乗り越えてこれた要因だと思う」などと話した。
こういった選手のコメントに「ありがとう」「このチームがつらかったわけじゃないよね?」などと照れながらリアクションしていた池田監督だったが、最後は「選手たちにはなでしこに入る、入りたい。自分たちがもっとうまくなりたい、強くなりたいといったしっかりとした意思を持ってほしいと思っているし、それは伝えている。世界大会を経験して、世界各国の選手のパワーやスピード、技術などはさらにスケールアップしていかなければいけないし、通用した部分である、判断のスピード、技術力、複数が関わって攻撃できるという日本の良さには磨きをかけていってほしい」と選手たちに監督としての最後の言葉を送った。
会見最後のフォトセッションでカメラマンにポーズを求められた選手たちが選んだのは月並みなガッツポーズなどではなく、池田監督が熱くなった時に見せる手のひらに拳を打ち付ける「太ポーズ」。「せーの」の掛け声で一斉に太ポーズで1枚の写真に収まった。