今週末は羽生が出場!アメリカ・カナダ大会レビューと第3戦の見どころ【フィギュアGP 2018】
アメリカ大会:宮原が優勝、坂本が2位というワンツーフィニッシュ
今シーズンのグランプリシリーズ初戦であるアメリカ大会には、日本女子から宮原知子、坂本花織、本田真凜が出場。新しい採点基準の下で各ジャッジによる厳しい判定も見られるなか、宮原が優勝、坂本が2位というワンツーフィニッシュで日本女子の強さを発揮した。
宮原は、課題のジャンプで回転不足判定を取られることなく今大会を終えた。踏み切りから着氷まで勢いと流れが持続し、迷いのなさが感じとれた。グランプリ初戦の緊張感もあった一方で、大きなミスなしにショートプログラム、フリースケーティングを揃えられたことは収穫だ。スケーティングにおいては1歩1歩の推進力が上がり、ジャンプやスピンなど要素間のつなぎも工夫が凝らされている。得意のスピンでは今シーズンから新しいポジションを取り入れ、宮原の魅力がより多彩に表れるようになった。次戦の日本大会でも好演技ができれば、グランプリファイナル出場がぐっと近づいてくる。
坂本は、今シーズンここまでの試合で納得のいく演技がなかなかできずにいたが、アメリカ大会へ見事にコンディションを合わせてきた。昨シーズンも五輪まで誰よりも過密に試合数をこなした坂本だが、今シーズンもその戦い方が功を奏しているようだ。雄大なジャンプは健在で、今大会の厳しいジャッジを通してもなお高評価。坂本のジャンプが世界にきちんと認められていることを実感させた。宮原との総合得点の差は約6点。スケーティングや演技全体の仕上がりにまだ伸びしろがある。ファイナル初出場に向け、次戦はさらに成長した演技を期待したい。
好調ぶりを見せた先の2人に対し、伸び悩んだのが本田だ。転倒もなく演技全体をよくまとめたショートでも、複数のジャンプで回転不足と判定され得点を抑えられた。演技直後には満足げな笑顔が見られただけに、本人の感覚とジャッジの見方にややズレが出てしまった。それでも滑らかなスケーティングには光るものがあり、今シーズンからタッグを組むアルトゥニアンコーチとの関係も良好に見えた。まずは大会中に痛めたという右足首を治してから、次を見据える必要がありそうだ。
カナダ大会:宇野昌磨が逆転優勝
日本からは、男子シングルで宇野昌磨、友野一希、女子シングルで樋口新葉、山下真瑚、松田悠良が出場。平昌五輪銀メダルの宇野や世界選手権銀メダルの樋口という、国際大会で実力派として注目を集める選手たちのグランプリ初戦であったが、その結果は明暗がはっきり分かれるものとなった。
宇野は、ショートでまさかのトリプルアクセル転倒。壁に身体を打ちつけるほどの失敗に、自身では「前半ふたつの4回転ジャンプを成功したことで油断してしまった」と分析した。地元カナダのキーガン・メッシングにショート1位を譲るスタートとなったが、続くフリーでは終盤のジャンプで転倒こそあれど最初から最後まで集中し、気迫のみなぎる演技で逆転優勝を果たした。今シーズン、宇野のパフォーマンスや試合後コメントからは演技の完成度に対する情熱が強く感じられるようになってきた。ショート、フリーともに完成度の熟した演技をすることが、世界の頂点へ近づく一歩になるだろう。
友野は今シーズンに初めて、グランプリ2戦の出場権を獲得した。昨シーズン末の世界選手権で5位入賞した実績をさらに伸ばしたいところだが、その一方でコンスタントに高得点を出すことの難しさにも直面している。ショートは大きなミスなく80点台を記録し、シーズン初戦のスコアを上回ったものの、フリーでは全体に一歩及ばず。前進のために、まずは4回転ジャンプの確実な成功が鍵を握る。次戦のロシア大会では羽生結弦とともに出場予定。課題を克服し、世界トップ選手陣に食らいつけるか。
今大会で日本女子の注目株に躍り出たのは山下だろう。ジュニア時代からバランスのとれた演技で着実に成績を上げてきたが、シニアになってもその実力はしっかり発揮され、今大会ではロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワに続く2位に入った。膝を柔らかく使ったジャンプは、指導する山田満知子コーチも太鼓判を押す。安定した演技の後に見られる笑顔には高校生らしいあどけなさがあり、15歳の成長に期待が高まる。次戦でも好成績となれば、シニア初出場からの初ファイナルも視野に。前向きに見守りたい。
対して、樋口はまさかの6位に沈む結果となった。アメリカ大会の本田に同様、複数の回転不足が気がかり。ショートでは2位につけていたものの、フリーで調子を崩し表彰台争いの候補からこぼれ落ちてしまった。ファイナル出場は厳しくなったが、残り1戦の出来がシーズン後半にも繋がってくるはずだ。昨シーズン経験した五輪代表落選の悔しさもあり、樋口にとっては年末の全日本選手権が大本命。そのためにも次戦のロシア大会で手応えをつかみ、はつらつとした樋口らしい演技が見られるといい。
2季ぶりにグランプリ2戦に出場する松田は11位。個性あふれる振付が魅力のプログラムを笑顔で滑っていたのが印象的だ。右足首の怪我から復調中で、本来の実力を100%出せる演技構成にはまだ戻せていない状態という。怪我と向き合い、その時々のベストを試合に合わせることが大切になるだろう。
フィンランド大会は今週末! 満を持して羽生がグランプリシリーズに挑む
今週末、11月3日にはグランプリ第3戦・フィンランド大会が開幕する。日本男子では羽生結弦、田中刑事、日本女子では坂本花織、本郷理華、白岩優奈が出場予定だ。
満を持して、平昌で五輪連覇を達成した羽生がグランプリシリーズに臨む。9月のシーズン初戦ではジャンプの成功率もプログラムの完成度もまだまだの状態。そこから調子をどこまで引き上げてきたか、プログラム全体の仕上がりはどうか、今大会最大の注目が集まる。グランプリ初戦は意外にも羽生にとって険しい試合で、これまで1戦目において優勝経験がない。今回こそ実力に伴う結果となるか。田中も今大会がグランプリ初戦にあたる。シーズンを通して日本男子の中心的存在でいるためには、ここから着実に結果を残すことが重要。同期の羽生とともに、ぜひ今シーズンも世界の舞台で活躍してほしい。
坂本は早くもグランプリ2戦目、ファイナル初出場へ向けた大一番となる。本郷と白岩は、グランプリシリーズにおいてはフィンランド大会のみの参戦。熾烈な戦いを繰り広げる日本女子のひとりひとりとして、その底力を発揮するチャンスだ。
(文・尾崎茉莉子)
第1戦アメリカ大会(10/20〜22):宮原知子、坂本花織、本田真凜
第2戦カナダ大会(10/27〜28):宇野昌磨、友野一希、樋口新葉、山下真瑚、松田悠良
第3戦フィンランド大会(11/3〜4):羽生結弦、田中刑事、坂本花織、本郷理華、白岩優奈
第4戦日本大会《NHK杯》(11/9〜11):宇野昌磨、佐藤洸彬、山本草太、宮原知子、三原舞依、紀平梨花
第5戦ロシア大会(11/16〜18):羽生結弦、友野一希、樋口新葉、松田悠良、山下真瑚
第6戦フランス大会(11/23〜25):田中刑事、三原舞依、本田真凜、紀平梨花
グランプリファイナル(12/7〜10):第1〜6戦を終えた段階で、各カテゴリーのポイント上位6名が出場する